スポット5. 打出商店街 南側




 ごぉ―――ん。




 大きな鐘の音のような。

 つんざくいかずちの叫ぶような。


 そんな音が背後から。

 あなたと、あたりを揺さぶりました。




 目をぱちぱちと瞬かせれば。

 闇につつまれた出口もなにも、綺麗さっぱり消え失せて。

 そこは小ぢんまりとした、愛らしい商店街。


 出口には、アスファルトの国道と、高速道路の高架とが、がしりと流れているばかり。


 あの老紳士の姿ももはやどこにもなく。

 ただ、どこからか、声が響くのがかすかに聞こえた気がしました。




――― いやいや、これはしもうた、しもうた。

――― 少しばかり、わるふざけが過ぎたみたいでしたなあ。


――― おやしろの天神様から、すがわらの大臣様から、お叱りを受けてしまいましたわ。

――― たわむれも、たいがいになされ、長者どの、て。




――― 怖がらせてしもうたなら、どうかおゆるしくなはれや。

――― 私はもうつちの底、屋敷へ失礼させてもらいます。


――― 貴方もどうぞお気をつけて、お帰りなはれ。




 ひょっとしたら、足元の地面から。

 そんな声が消えてゆきました ―――。


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ウチデノコヅチ 武江成緒 @kamorun2018

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