第25話
私は海に来ていた。バーベキューイベントの主催者である男が先ほど大きな声で「この子クリーニング屋で働いてるんだってぇ〜」と茶化した途端に、周りの反応がサッと変わった。そして半径1メートルくらいの距離をとられた。「いや、普段は事務職だけど」と私が言うと、数人は口に出してなんだ〜とあからさまに安心した。クリーニング屋というのはそんなに蔑まれる職業なのだろうか?私はこのイベントに参加している十数人の男女の反応に心から軽蔑した。
以前バイト先で一目惚れした男性と私は連絡をとるようになっていた。彼は私にその気がなく、友達に頼んで合コンのようなこのイベントを企画したのだ。私も友達を連れてきたが、みんなが当たり前のように学歴や仕事で品定めをしているのを見て、やはりそういう品定め社会に適応した人間を私も何処かでわかっていて、無意識にそれが出来そうな友達を連れてきていたことに気付く。しかし、ここにいる全員が品定めされた経験のある人達であることも事実だった。だからこそ、それが当たり前の文化として根付いてしまっている。私を急に貶めようとした主催者の男の意図がよくわからなかったが、イベントを企画することでお金を少なからず得ているようだった。そういえばねずみ講話をしていたな…ふと思い出して嫌な予感がした。肉を焼きながら男女混じって座り談笑しているがどうも受け身な人が多く、どのグループも実るものはなさそうだった。私は彼がここにいない事で近付いてはいけない人だと悟ったが、この大学生らしい風景を少し楽しんでいた。
足元のパラレルワールド @hii-co
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