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一冊め 叡智の図書館と十の謎

一冊めに紹介したいのは、多崎 礼さんの「叡智の図書館と十の謎」である。


 なぜこの本を選んだのかは簡単だ。今日読み終わったからである。この本に対するパッションが新鮮なうちに、文字に起こしてしまいたかったのだ。


 角川グループのサイトで一発めに違う会社の本を紹介するのは気が引けるが、この情熱は止められない。目をつぶってもらおう。


 最初に基本情報を提示しておこう。タイトルなどを列挙すると以下の通りである。

 

 タイトル 叡智の図書館と十の謎

 著者 多崎 礼

 発売年度 2019年


 簡単にあらすじを書いておく。

 この世の全ての知識や思想が収録された図書館、叡智の図書館。この図書館は何処にあるかもわからないが、その知識を求めて旅をする者はあとをたたない。ある日、ある人物がこの図書館の入り口に辿り着いた。しかし、門には十本の鎖。門番の問題に答えるたびに鎖は開く……。この人物は無事に叡智の図書館へと至れるのだろうか?

 詳しくは公式のあらすじを読んでほしい。


 この本を手に取ったのは、著者の別の本がいたく気に入ったからだ。多崎さんといえば、「煌夜祭」が有名だ。私もこの「煌夜祭」が大変気に入っている。もう後半は涙をポロポロ流しながら読んだものだ。「煌夜祭」もいつか感想文を書きたいと思っているが、いまは置いておこう。

 というわけで、同じ著者で手頃な文庫本である「叡智の図書館と十の謎」を手に取った。「レーエンデ国物語」にも心惹かれたが、あちらはハードカバーなのでハードルが高い。そのうち読もうと思う。


 この本は長編でありながら、短編を上手く取り込んでいる。その点は「煌夜祭」に近いと感じた。感動するようないい話から、救いようのない話まで、内容もバラエティに富んでいる。しかも、全ての話が幻想的で読んでいて美しさを感じた。最後の展開も涙は出なかったが、希望を感じさせるもので、物語の余韻も感じられ非常に好みだった。


 私も小説を書くが、このようないい感じの余韻も幻想的な美しさもまだ出せていない。一体何を食べればこのような物語が書けるようになるのだろうか?疑問である。いつかこの本のような短編を組み込んだ長編も書いてみたいものである。


 登場人物も皆魅力的だ。主要登場人物は3人?で、名前があるのはそのうちの1人だけなので、登場人物の名前が覚えられない私でも簡単に記憶できた。中でも、黒い石版が1番のお気に入りになった。もはや人ですらない。


 この石版は魔法の石版で、表面に金色の文字を表示させて会話する。無機物でAI的だが、時に冗談をいうなどお茶目な一面もある。無機物なのに、下手な人物より人間らしいところがツボに入った。アイアンマンのAIとか好きな人にはたまらないだろう。石版のくせにちゃんと痛覚があるところもポイントが高い。


 非常に良い読書体験だった。私には語彙がないので、面白かったとしか表現できないのがもどかしい。読み終えるのがもったいなく感じる本とはなかなか出会えないものだ。いい本に巡り会えた。興味を持ってもらえたら、ぜひ読んでほしい。


 評価 星五つ

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