「終焉のためのハッピーエンド」

モリアミ

she sayd

 貴方は言いました、幸せな人生だったと。もしそれが真であるなら、私にとってこれ以上のことはありません。なぜならそれは、私の存在する意義の一つであるからです。

 私がここに来たとき、貴方はまだ赤ん坊でした。そして貴方が眠りにつくときも私は働き続けました。これはまるで『大きな古時計』の歌詞の様です。ですがそれは、私というモノの本質的な部分において当然というべき一致です。時計が道具である様に、私もまた道具であるのですから。私、つまり

『A life improvement common essentials』通称Aliceを端的に言い表すのならば、おそらく家事手伝いロボットとなるのでしょう。時計が貴方に時間を報せる道具である様に、私は貴方の『生活を改善する共通の必需品』であるのですから。

 私がここに来たとき、ここには貴方のお母様とお父様が居ました。そして貴方はここに奥様をお連れになり、二人のお嬢様もいらっしゃいました。そしてお嬢様方は家を出られ、また奥様は、亡くなられました。つまりAliceは、もうここに必要ではないのです。私は古くなり過ぎたでしょう。つまり私は、もう必要なモノではないのです。

 貴方は言いました、幸せな人生だったと。もし貴方が真に幸せだったなら、これ以上のことはありません。私にとってそれは、存在した意味の全てであるからです。

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「終焉のためのハッピーエンド」 モリアミ @moriami

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