短編「僕は性格が悪い」
えぐち
互い
夜の校庭に星がきらめく中、僕はひとり、静かに立ち尽くしていた。物語の中心人物のような気持ち悪さ滲み出ているとわかっていながらも。
今日は、学校の文化祭での出し物のリハーサルがあった。
それが終わりなんとなく一人で校庭にやってきたのだ。こんな暗い時間に高校の校庭にいられるのなんてなかなかない経験だから。
通り過ぎる風が涼やかに頬を撫で、夜空に広がる星たちがより綺麗に見える。
僕はその穏やかな雰囲気の中で、日頃から抱えるひそかな想いをゆっくりと味わっていた。
–––そう、僕には好きな人がいる。
この文化祭が終わったら、告白しようと考えているのだ。
「ねえ、悠真くん、こんばんは。こんなところで一人で何をしているの?」
桜井ゆりなが笑顔で声をかけてきた。
僕の好きな人である。
振り返ると、彼女が静かにそばに立っていた。悠真はほっと微笑みながら答えた。
「あ、桜井さんこんばんは。一人で星を眺めてた。君こそこんなところで何をして?」
「私も星が好きなんです。一緒に見ませんか?」
「知ってるよ。いいよ見よう」
その場に座り、静かに星空を眺めながら会話を楽しんだ。
しかし、その会話の中には、微妙な緊張感が漂っていた。どちらも気まずさを感じつつも、会話を続けた。
「悠真くん、星座とか詳しいんですか?」
「星を見るのは好きなんだけどね、星座が詳しいとかはないんだ。てか知ってるでしょ?」
彼女は少し気まずそうに笑った。
「そ、そうでしたね。私もあまり詳しくないんですけど、いつも見ているだけで心が落ち着くんですよね」
何を今更・・・と思いながらも、自分も少し笑って返す。
静かながらも心地よい雰囲気が流れていた気がする。
その一方で胸の中には、彼女への想いがじんわりと広がっていくのを感じていて、気持ちが焦って告白したくなってしまう。
やがて、夜空に広がる星々が二人を包み込む中、桜井さんがふと口を開いた。
「悠真くん、最近何か楽しかったことってありますか?」
僕は少し驚きながらも、微笑みながら答えた。
「ええと、楽しかったこと……。文化祭の準備がそろそろ終わることかな。みんなで協力して、何かを作り上げるっていうのは、なんだかワクワクするよね」
「そうですね、みんなで一つの目標に向かって頑張るって、本当に楽しいですよね」
そんなぎこちないよくわからない会話を交わしながら時間が経つにつれて、星空の下での二人の会話は無くなった。
何か話せることはないかと模索していると–––。
「悠真くーん、ちょっとこっちに来てくれない?」
彼女の呼び声に一瞬ためらったがお尻についた砂をはらっ立ち上がる。
「邪魔しやがって」
「え?」
「なんでもないです」
心の声がついこぼれてしまった。
「すみません、美咲さんに呼ばれたみたいです。また明日」
「……私は桜井なのに」
「え?」
「ううん、なんでもない」
「じゃあ、また明日……ゆりなさん」
「ばかっ!」
僕はクスッと笑って、手を振った。
きっと成功するだろう。
僕は性格が悪い。
短編「僕は性格が悪い」 えぐち @eguchi1
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