終わりに
編者による事
死んだ資産家の祖父は
生前大きな病気もせず、老年になってもしょっちゅう何処かしらに出かけていた。祖父は幼い私に
曰く、風説は
現代人が古代の武器で戦いを挑んでくる相手を見たなら笑うだろう。そんな石や棒切れよりも銃や大砲を使えと馬鹿にする。同じである。現代、我々は科学という強力な武器を手に入れた。それによって多くの怪異は姿を暴かれ、妖怪たちはひっそりと姿を消した。電気という文明の光があれほど恐ろしかった闇を照らし、夜の到来さえ自転で説明がついてしまう。年寄りの語る風説などもはや陳腐以外の何物でもない。怪異に対して風説の持つ力は科学に不可逆に奪われた。
風説はぼろぼろに傷ついた武具である。博物館に展示された傷だらけの木製の盾である。
しかれども似人の役割はその武具をつくることにある。未知なる事象に理由と名前をつけて恐怖を弱め、対処を記し警告を発する。つまりは風説を語るのだ。奇妙な現象の仕業は
以上である。申し遅れたが私は似人である。編したものはどれも真偽不明であるが、その元を辿れば合理的な説明を付けることができるものもあるかもしれない。正解はない。
最後になるがこれを記せて良かった。似人としての役割を果たしたことになろう。本が出たなら一冊は図書館に寄贈しようと思う。それでは、さよなら。また次に会う時、新しい風説を携えて。
怪異風説集 海中図書館 @established1753
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