※読み合い企画からのレビューです
ベッキーとマルティナは双子の冒険者
師匠に課された卒業試験で、とある遺跡の宝物を取ってこいと命じられるのだが──という導入から始まる本作品は、異世界版のインディ・ジョーンズと言っていいほど遺跡やダンジョンの描写に優れている
特に罠の描写が凝っており、この点だけでも他のダンジョン攻略ものと一線を画しているほどだ
小さなベッキーに、いろいろでかいマルティナ
この凸凹姉妹の振る舞いもエキセントリックで個性に溢れており、二人のやり取りを見ているだけでも飽きることはないだろう
さらには、師匠の秘密であったり、こちらの世界で会話する女神と小説家であったりと、予想外の展開が非常に多く、本作の奥深さを物語っている
ただの冒険活劇に留まらない本作品、まずは第1話「レイダース・トラップ」だけでも読んでみてほしい
『トラップ&トラベラーズ』は、冒険の緊張感と軽妙なユーモアが絶妙に交わる遺跡探検ファンタジー。その魅力は、何と言ってもキャラクターたちの生き生きとした描写と、人間味溢れる会話にあります。発明好きのベッキーと戦闘力抜群のマルティナという対照的な二人が織り成すやり取りは、まるで息の合ったコメディコンビのよう。真剣な場面でも笑いを忘れず、それでいて命懸けの冒険の緊張感もしっかり伝わるのが心地よいです。
巧妙に仕掛けられた罠の数々や、崩れゆく遺跡での脱出劇といったスリル満点の展開は、映画さながらの臨場感を味わわせてくれます。一方で、キャラクターの成長や絆が物語の芯となっている点が、単なる冒険譚ではない奥深さを与えています。
黄金の偶像が次なる物語の扉を開くという終盤の伏線も秀逸で、続きを期待せずにはいられません。ベッキーとマルティナの今後の冒険を、ぜひとも追いかけたいと思わせる一作です。私たち読み手をワクワクさせる趣向が光る、冒険好きにはたまらない物語です!
古い話で恐縮ですが、ドラゴンノベルとかファンタジーファイルシリーズが好きだった人間なら間違いなく刺さる。
TRPG全盛の、リプレイ小説やそれらを題材にしたオムニバス形式の小説を思い出させる、往年のファンにはたまらない作風。
しかし単に昔を懐かしい気持ちにさせるだけではなく十分以上に新しい作風を見せています。
ちょっと複雑な内心を持つ姉妹、それを鍛えるこれまた複雑な師匠。そして味のあるサブキャラが目白押し。
しかも各話の題にある事象をじっくりと読ませる文章。
こんな面白い物を今書く人が居るとは不覚にも知りませんでした。
ぜひ一度は読んでもらいたい名作です。