【ショートストーリー】猫と鳩の見つめる世界

藍埜佑(あいのたすく)

【ショートストーリー】猫と鳩の見つめる世界

 かつて遠い遠い昔、人間たちが都市を築き、動物たちはその影でこっそりと暮らしていました。その中に、猫のトムと鳩のジェリーという二匹の仲良しがいました。


 トムは、人間の愚かさを見つめることで、人間たちとは違う自分自身を見つけていました。一方、ジェリーは、人間の美しさを見つめることで、自分自身とは違う世界に触れていました。二つの視点は、都市の中で交差し、融合し、新たな風景を描き出していました。


 ある日、トムがふと口にした。


「人間たちは、自分たちが地球の全てを支配していると思ってるんだよね」


 その言葉に、ジェリーは空高く飛び上がり、空から都市を見下ろしました。


「でもね、トム、彼らは空を飛ぶことはできないよ。それは我々の領域だからさ」


 人間たちは日々、自分たちの生活のために、動物たちの生息地を奪っていました。でも、動物たちはそれでも、自分たちの生活を守るために、人間たちの生活圏に飛び込んでいました。


「彼らは、自分たちが全てを創造したと思っているんだよね」


 トムは深い溜息をつきました。それに対して、ジェリーは空から降りてきて、トムの頭にとまりました。


「でもね、トム、彼らが創造したものは、もともとは全て自然から与えられたものだよ」


 人間たちは、自然を破壊し、動物たちを追い出していました。

 だけど、その一方で、彼らは美しい芸術を生み出し、科学を発展させ、文化を育てていました。


「彼らは、自分たちが最も強いと思っているんだよね」


 トムは皮肉っぽく笑いました。

 それに対し、ジェリーは空に向かって羽ばたきました。


「でもね、トム、彼らは自分たちの弱さを知らないよ」


 人間と動物、二つの世界は、同じ地球上で交錯し続けていました。でも、その中で、トムとジェリーは、それぞれの視点から、人間と動物の関係を見つめ続けていました。


「彼らは、自分たちが全てを知っていると思っているんだよね。」


 トムは眼を閉じました。

 それに対し、ジェリーは空から見下ろし、微笑んだ。


「でもね、トム、彼らはまだ全てを知らないよ。僕らと違ってね」


 人間と動物、それぞれの視点から見た世界は、一見、対立しているように見えます。でも、その中には、互いを理解し、共存する可能性が秘められているようです。


(了)

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【ショートストーリー】猫と鳩の見つめる世界 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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