旅は続く
夜桜くらは
旅は続く
国と国を
その国際列車には、一人の女が乗っていた。
ウェーブがかった明るい茶色に近い金髪に、
と、そんな彼女に声を掛ける人影があった。
「
掛けられた訛りの言葉に、どこか懐かしさを憶えて、金髪の女は振り向いた。
そこに居たのは、二十代後半から三十代前半ほどに見える男だった。
茶みがかった金髪は、癖毛なのだろうか。肩に届かない長さで、所々はねている。快活な笑みを浮かべた顔は、どちらかと言えば整っている方だろう。
服装は白のシャツに紺色のズボンという格好で、大きなバックパックを背負っている。履いているブーツを見ても、旅慣れているのは明らかだ。
「
「
金髪の女が
「いやあ、列車はラクでいいな。こうして足を休められる」
「フフ、そうね。貴方、お名前は?」
「おっと失礼。俺は
「よろしく、キャップ。私は
「
「ええ。自由気ままに、あちこち旅してるの。キャップは?」
「俺? 俺は見ての通り、バックパッカーさ」
そう言って、キャプソンは人懐っこく笑う。
「普段は歩いて旅をしてるんだが、たまには気分を変えてな。こうして列車に乗ってみたってわけだ」
「あら、そうなの。ならこれからしばらく、旅仲間ね」
「
「フフ、お上手ね」
軽快に話すキャプソンに、スノウェルはクスクスと笑う。
そんなスノウェルの様子を、キャプソンは微笑ましそうに見つめた。
「そのロングスカートもいいセンスだな」
「
「確かによく似合ってる」
楽しそうに笑い合う二人。それからしばらく、二人は会話を楽しんだ。
キャプソンは旅の土産話や、自身の体験談を語り。スノウェルはそれを聞きながら、穏やかな笑みを浮かべて
「それでさ、そこで食ったパスタがもう絶品で! パスタなんてどこの店でも食えると思ってたんだけど、全然違ったよ。麺の
「
「ああ。是非とも行ってみるべきだ。話してたらまた食べたくなっちまったよ」
そう言って苦笑するキャプソン。そんなキャプソンに、スノウェルはクスクスと笑う。
「そんなに美味しかったのね」
「そうとも。スノウはどうだい? どこか最高の一皿はあるかい?」
「そうね……モルベンで食べたポワレは絶品だったわ」
「モルベンか。あそこは魚料理が美味いと聞くな。どんな味だった?」
「小ぶりのお魚で、上品な味わいだったわ。皮はカリッと焼けていて、身はふっくらと柔らかくて……舌の上で旨みが溶けていったわ」
スノウェルの語る言葉に、キャプソンは喉をごくりと鳴らす。
「そいつはいいな。俺も是非食べてみたい」
「あら、でもモルベンに行くには、一度ソゴルへ戻らないとダメね」
「
「フフ、そうね。旅は終わらないものね」
残念そうに頷くキャプソンに、スノウェルはクスリと微笑む。
「貴方との旅も、楽しい時間が過ごせそうね」
「俺もだ。一人旅は気楽だが、話し相手がいるのもいい」
「ええ。私もよ」
二人は穏やかに笑い合い、穏やかな時間を過ごす。
そんな他愛もない会話を続けていると、不意にアナウンスが流れた。どうやら次の停車駅が近いらしい。
「おっと、もう次の駅か。んじゃスノウ、俺はここで失礼するよ」
「あら、そうなの? 楽しい時間はあっという間ね」
「まったくだ。できればもっと話していたかったが……」
名残惜しげに眉を八の字にすると、キャプソンは立ち上がる。そしてバックパックを背負うと、スノウェルに向けて手を差し出した。
「それじゃまたな、スノウ」
「ええ。またどこかで、キャップ」
スノウェルはその手を取り、握手を交わす。そして列車が停まると同時に、キャプソンは手を離して降車口へと向かった。そうして扉の前で一度足を止めると、キャプソンはスノウェルの方を振り返る。
「
「
別れの言葉と共に、キャプソンは笑顔でサムズアップをし、スノウェルはそれに微笑んで返す。そうしてキャプソンは
「フフ……」
そんな一連の流れに、スノウェルは小さく笑みを
二人が血のつながった実の
旅は続く 夜桜くらは @corone2121
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