なんか思ってたのと違うんだけど?(新那視点)

 加賀人かがとがクラスメイトと遊びに行くということで、私は無理矢理こころよく同行を認めてもらった。


 集合場所に着くと他のメンバーはすでに集まっていたようで、私と加賀人かがとに皆の視線が集まる。


 男子3人に女子3人ね……ふぅん……。



 女子3人の内1人は、男子の1人と仲が良い様子。敵になる可能性は……0ではないけど低いかな。


 私と手を繋ぐ加賀人かがとを見て、男子達の目付きが変わった。加賀人かがとに嫉妬してるのかしら。


 それはそうでしょ、加賀人かがとをあんた達と一緒に……というか、他の全人類とも同等に考えてほしくない。


 強くて優しくて……私の全てを捧げても良い、捧げたいと思えるのは、加賀人かがとだけなんだから……♡



 となると……警戒するべきは残りの女子2人かな。私達姉妹ほどじゃないけど、結構可愛いし。


 加賀人かがとの反応は……体温上昇なし、心拍数変化なし、声色変化なし。よしっ、加賀人かがとが意識している可能性はなさそうね。


 当たり前だよね、私達がいるもんね?



「私は新那にいな加賀人かがとの……うん、彼女です♪︎」


「「「「「「はぁっ!?」」」」」」



 とりあえずジャブで牽制。

 女子2人には、チャンスなど微塵もないと知らしめておく必要があるからね。


 男子2人? 元々眼中にないから。



「彼女じゃないって! 言っただろ、再婚した相手の───」


「そんなに強く否定しないでよ加賀人かがと……昨晩一緒に寝た仲じゃない」



 嘘はついてない。添い寝だけど、一緒に寝たもんね。彼らがどんな風に曲解しようが、私と加賀人かがとが非常に親密な関係であることが伝わればそれでいいから。


 男子2人は嫉妬に狂ってる様子。

 フフ……いい気味だ。

 私の加賀人かがとは、あんた達とは住む世界が違うの。私もお姉ちゃんも紗那さなも、加賀人かがとは自由にできるんだから。



「ねぇねぇ、聞いてもいい!? あっ、私はゆいだよ!」


ゆいさん、ね……何?」


ゆいだけでいいのに……でさ! 加賀人かがと君の彼女ってホント!? いつから!? どっちから告白したの!?」


「もちろん本当───」


「いや、違うからな? 親父が再婚して姉妹ができたんだって」



 加賀人かがと、どうしてそういうこと言うの……?



加賀人かがと君さぁ……女の子がここまで言ってるんだから、男気見せたら? へたれ?」


「……ゆい、いいこと言うじゃない」


「えっ、俺が悪いのか?」



 加賀人かがとを焚き付けてくれてる……ゆいとは仲良くなれそうね。



「あの……お二人はいつからそんな関係で……? あっ、私はあおいですっ」



 おずおずとした様子で聞いてきたのは、女子2人のうちの片方、あおいさんだった。


 彼女が加賀人かがとに送る視線、私達の関係を深掘りしようとする質問……要警戒かな。



「ゴールデンウィークの少し前かな? きっかけは……」



 チラッと加賀人かがとを見ると、フルフルと小さく首を横に振っていた。


 前世がとか、転生が、なんて言わないって。言ってもどうせ信じないんだし。私達だけの秘密だもんね。



「私の一目惚れ……かな」


「「「おぉぉぉぉっ!」」」

「「くそがぁぁぁぁっ!!」」



 女子の歓声と、男子の悲鳴が響き渡る。

 ……ん? 何で歓声?



「こんな、神に愛されてるぐらいの美少女が一目惚れとか……その事実だけで尊い……」


「しかもその相手の加賀人かがと君がくっそイケメン過ぎて……あれ? 少女マンガの主人公達でしたっけ?」


「その上超美人の姉と天使な妹もいるとか……同人誌も真っ青な神展開ですわ」


「3人でイケメンの取り合い……いや、3人が協力する展開も……。どっちにしても薄い本が厚くなるのは必至……!」


「月島家の壁になりてぇなぁ……」



 この人達は何を言っているんだろう?



新那にいなちゃんと加賀人かがと君ってどこまで進んだの!? キスはした? 同棲ってことは、色々・・あったりしないの!?」


「そっ、そんなことな───」


「この前私がお風呂入る時、加賀人かがとも脱衣場に来たことあったわね。『一緒に入りたい』って……」


「「ぅおぉぉぉぉっ!?」」


「おまっ、それ捏造だろうがっ!」


「でも脱衣場で会ったのは本当じゃない。私の裸見たでしょ?」


「それはっ」


加賀人かがとてめぇ! なんかっ、もうっ、てめぇ!」

「楽しんでんじゃん! 同棲楽しんでんじゃん!」



 荒ぶる男子2人。

 あぁ……彼女とかいないんだな、この人達は……。



「そ、それってすっごくエッチなのでは?」


新那にいなさんの正妻の風格よ……」


加賀人かがと君になら裸見られても許しちゃうの、『愛』なんだなって」


「あ、あの、新那にいなさん……加賀人かがと君との、その……ふへっ、キスとか見たいなって」


「参考までに! 参考までにお願いします!」


「お前ら何言ってんの?」



 加賀人かがとの正論なツッコミが入る。この2人は加賀人かがとに気があるわけではなさそうだけど、加賀人かがとの……というか、私達との関係を知りたがってる?


 今まで出会ってきた男子は言い寄ってくるばかり、女子は嫉妬して来るばかりだったから、こういうタイプの人には出会ったことがなかった。


 ……どう対応すればいいのか分からない……。



「……新那にいな?」


「ぁっ……ごめん」



 繋いでいる手に力が入っていたのか、加賀人かがとか私の顔を覗いてくる。待って、ビジュアル強すぎる……



「さっきまでの調子はどうした? 知らない人ばかりで緊張するのは分かるけど、それで尻込みするタイプでもないだろ?」


「……加賀人かがと、私のこと貶してる?」


「全然そんなこと無いけど……今の表情の方がいつもの新那にいならしくて可愛いぞ」


「っ!!」



 加賀人かがとが私に、可愛いって……? 普段だったら絶対にそんなこと言わないのに……私のことを気遣ってくれたのね。


 あー、もう、あー!

 加賀人かがと大好き!



「んっ♡」


「っ!?」



 若干照れくさそうに目を逸らしている加賀人かがとの横顔を見つめ、少し背伸びして頬にキスする。


 赤くなって驚く加賀人かがとの表情が最高だ。ふふ、このまま2人でどこかに行ってしまいたいなぁ……♡



 2人の世界に入っている加賀人かがと新那にいな

 鼻息を荒くして二人を舐め回すように見つめるあおい志穂しほ

 膝から崩れ落ちる晴翔はると琉生るい



「何このカオス」

「いっそのこと、放っておいて私達だけでカラオケ行っちゃう?」



 この場の雰囲気についていけない剣哉けんやゆいの呟きは、誰の耳にも届かなかった。

 

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前世で倒したはずの魔王とその娘達が、今世である日突然家族になった。好感度振り切ってるの、おかしくない? 風遊ひばり @Fuyuhibari

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