第2話

「来月には次の曲を出したいから宜しくね」


うぅ、編集の声が聞こえる。幻聴か?


「幻聴じゃないよ」


なんとびっくり、彼は心が読めたのか?


「心は読めないけど遥希の考えることくらい簡単に分かるから」


「俺ってそんな単純?」


「単純ではないけど分かりやすいね」


なんと...そうだったのか。●| ̄|_


「それは一旦おいといて、来月には次の曲出したいから宜しくね」


「はーい、あと三週間くらいで仕上げれば良い?」


あー憂鬱だ次から次へと仕事が来る。俺の癒しはドラゴ○クエストだけだ。


そんなやり取りをしながら家に帰ると、スマホに通知が来ていた。クラス委員の結城 紗良からだ。

彼女は黒髪ロングでthe清楚といった人間で、ラノベなんかに出てくるような委員長みたいな感じだ。...そして、俺の想い人でもある。


[この間のアンケート、今日が提出締め切りで出していないの君だけだからね。絶対に明日中に出してください!]


いけない、すっかり忘れていた。まぁ、明日学校で少しやれば終わるから今日はこのまま作曲でもするか。



~そんな感じで次の日の朝~


「遥希、起きなさい。」


いけね、母がお怒りだ。すぐに着替えて顔を洗ってその他諸々をやって朝食を食べて外に出る。

えぇ、この時点ですっかりアンケートのことなど頭から抜け落ちていましたね。(後日談)


校門をくぐったところで結城が見えた。

・・・やべぇ、アンケートやってない!


「えー、本日は大変お日柄もよく、結城様は本日もお目麗しゅうござ...」



「そういうのいいから、アンケートやってきたよね?」


おぉ、これが最近習った付加疑問文か。うん、とても怖い。


「いや、その何と言いますか、その、かくかくしかじかで...」


「やってないんだね?」


うっ、笑顔の裏に怒りが見えて、後ろには今にも般若が出てきそうだ。平たく言うと恐ろしい。


解決策、①素直に謝る

    ②正直に謝罪する

    ③全力で土下座


とりあえず①でいこう。


「ごめんなさい、やってません。」


「いい?今日、学校でやって絶対に放課後までに出してください。私の仕事をこれ以上増やさないで。」


なんと、①で解決できたようだ。じゃあ放課後に間に合うようにどっかでやっておこう。


「ってことがあってさー」


「いや、それは締め切りを守れないお前が悪い。」


なんということだろうか、理人も俺の味方をしてくれない。まぁ、正論だから何も言い返せないのだが。


「今5限が終わったところだけどさすがに手をつけてるよね?」


俺は目をそらした。


「お前、それはヤバイって。今やれよ」


「フッ、それはもう無理だ」


その瞬間チャイムが鳴った。あぁ、結城のお説教コースが決まったな。


「やっていないとはどういうことでしょう、伊東くん?」


あっという間にもう放課後で、俺は見事に彼女を怒らせた。


「とりあえず、今すぐやりなさい。やりながら締め切りを守ることの重要さについてたっぷり語ってあげるから。」


おかしいな、目が笑っていないぞ。まぁ、これ以上何かある前にとっとと終わらすのが良いだろう。結城が締め切りとは云々かんぬん言ってるが、全て無視だ。


「あ、ハルの新しい曲投稿されてる。」


あの~、それ学校のパソコンですよね、

と俺は手を動かしながら尋ねる。


「普段優等生らしくしていると少しくらい大丈夫だから。」


そういいつつ結城はその曲を流し始めた。


それよりもこの曲投稿するのはもう少し先だって理人が言っていたような...

まさか、俺を助けてくれたのか。あぁ神様仏様理人様


「流すなら別のかたの音楽にしません?」


「なんで?」


うっ、恥ずかしいからとはとても言えない。

手は動かしつつも黙っていると、結城から


「自分の想いを歌という形で表に出せるってすごいと思う」


と言われたので、照れてると、


「何で伊東くんが照れてるの?」


「いや、何でもないです。」


「ふーん、まぁアンケートは終わったようだし帰っていいよ」


特に怪しまずにすんだようだ。

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巷で流行りの音楽家。実はそれ、俺なんですけど @36-50873

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