エピローグ

 僕は今まで、ペットロスなんてあり得ないと思ってきた。しかし、今ではその苦しみが分かる。君も苦しみながら逝ったから、僕も苦しまないと、狡いよね。そんな事より、僕は君ともう一度話がしたい。出来れば、の話しだけど。


 君は、本当に僕のために連れて来られたの?

 じゃあ、君の一生は僕の為に費やされたの?

 きっと、違うよね? 


 確かに君は僕の心を癒したけれど、それは僕が君の人生を搾取したんじゃないよね。だって、ビビりのくせにお転婆な君は、誰よりも僕を振り回したから、きっと、おあいこだ。そうだって思わないと、僕はやっていられない。君は誰かの為の命だったのではない。君の命も、一生も、君だけのものだった。そう思っても、いいよね。


 それから、僕の手帳の事だ。今まで真っ黒に予定を書き込まないと不安になっていたし、その過密なスケジュール通りに事が進まないと苛々していた僕だけど、君が来て以来、空白が出来た。つまり自分に自由な時間や休息時間を与えるようになったんだ。それに伴って、スケジュールへの執着や、予定をこなして快感を得ることも激減した。


 だって、スケジュールを空けたままにしていないと、君との時間が過ごせないから。


 ほら、今も君は僕のスケジュールを滅茶苦茶にしている。


 もう君の為に泣かないと決めていたのに、頬を熱い雫が伝って、上手く書けないんだ。それなのに、君が僕にこれを書かせているんだ。




ああ、本当はこの時間には、別の小説を書いている予定だったのに。





                                  <了>


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君が僕の予定を狂わせる。 夷也荊 @imatakei

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