あなたの色?

UD

うそ色

 あなたは約束を守らない。


 一緒になりたいと言ったあの言葉は嘘だった。

 私はあなたの言葉を信じてなにもかも失った。


 あなたに出会う前、私は幸せな家庭を持っていた。

 優しく私を見守ってくれる夫、成績も良く人の気持も察することのできる娘。

 私は家族と共につつがなく、なに不自由なく暮らしていた。


 なのに、それなのにあの時、あなたに出会ってしまった。


 私の人生で出会ったことのないタイプ。なんでも優しく、嫌な顔一つ見せず教えてくれる人。


 私自身が特別な存在だと思わせてくれる。

 あなたに会うたびに惹かれているのが自分でもわかって、どうしょうもなくなった。


 だからあなたと一緒になろうと決めた。


 なにもかも捨てて。


 私はあなたに全てを捧げた、仕事も生活もすべて。



 だけどあなたは違った。

 あなたは、何も変えようとはしなかった。

 私のすべてが変わっても、あなたは変わらなった。


 一緒になりたいと切望したのに、私のもとには来てくれなかった。


 私はあなたの色に染まった。


 △▽△▽△▽△▽


 君はずっと苦しんできた。


 初めて見かけた横顔は笑っていなかった。


 いつもうつむいて考えていた。


 そんな君の顔を見るたび、私は私にできることをしなければならないと思った。


 君と話し、君の思いや考え、趣味、思考、信仰、主義、主張を理解し君を守ると決めたんだ。


 そのために、君はまず自由になるべきだと思ったんだよ。


 だから君の近くにいて、君の生活を見守った。

 仕事も手伝い、君が私のほうに向くように動いた。

 あんなことになるとは思っていなかったけれど、近づきすぎたのかもしれない。


 しかし、後悔はしていない。


 私も君のことを愛しているのだから。


 君は望みを果たさなかったと思うだろう。

 

 「仕方なかった」という言葉ではきっと許してもらえないだろう。


 私が君を束縛するわけにはいかない。このままでは私が君を縛ってしまう。


 約束を果たせそうだ。私はもうすぐいなくなる。


 君は好きな色になれたのだから。


(完)

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