エピローグ

「あの、それじゃ私が助かったのは……」


 お昼を食べ終わり休憩をしている時に、僕はレンタルのギフトについてニアとエイルの二人に説明した。

 察しのいいニアは、僕がニアにも上級回復薬を使ったのに気付いたようだ。

 脇腹に手を持っていったのは無意識だと思う。

 それを見たエイルは申し訳なさそうにしていた。

 敵を欺くためとはいえ、ニアを傷付けたからかもしれない。


「取得ポイントがないと結局使えないんだけどね」


 だから僕は努めて明るく言った。

 場の空気がちょっと重くなったからね。

 現在は0ポイントだから、使えるのは鉄の剣だけになる。

 この時ついでにレベルが下がったことを告げたら、二人は大層驚いていた。

 僕だって一度上がったレベルが下がるなんてこと聞いたことがない。

 その事に気づいたのは、ハイルと別れてすぐだった。

 体が少し重いな、と思って何気なくレベルを確認したら19から16まで下がっていた。思わず二度見したけど、結果は変わることはなかった。

 取得ポイントが足りない状態でアイテムをレンタルした代償だと思うけど、説明文には変化がない。

 もしかしたら代償の効果は一つだけじゃないのかもしれない。

 ……レベルが下がるだけでも僕にとっては大事おおごとだけど。

 それともう一つ、人を殺すとレベルが上がることもエイルには話した。これはニアが。


「俺も初めて聞くが……フローのギフトも含めて他の人には話さない方がいい」


 僕の場合は鉄の剣を呼び出すものと説明すれば誤魔化しはきくけど、ニアの人間を殺してもレベルが上がるという特性はパーティーを組むと知られてしまう可能性がある。

 盗賊などの討伐依頼を受けなければいいのだけど、魔物の討伐にいった先で盗賊に襲われるなんて状況はあるかもしれない。犯罪に巻き込まれるのはいつだって突然だから。

 広く知れ渡ると悪用する者だって出るかもしれない。

 それこそ奴隷を買い占めて殺すなどという暴挙に出る者だって現れるかもしれない。戦争が起これば利用される場合だってある。

 授かったギフトも重要だけど、自身の強度を上げるなら一番はレベルを上げることだからね。

 それこそ人はレベルを上げるために魔石を買い漁ったりするわけだから。主にお金持ちが。


「そうなると信頼のおける仲間を探す必要があるが……」


 それを聞いたエイルは黙り込んでしまった。

 ギフトだけでなく、ニアの正体を隠す必要もあるから余計に慎重になっているみたいだ。

 それに信頼出来る人なんて早々見つかるものではない。

 僕? 僕だって瀕死のニアを助け、その後ギーグ盗賊団と戦ったりアジトを探したり、ライルラス近くのダンジョンに一緒に行ったりしたからね。その積み重ねの賜物だよ。

 あとはセシリアがエイルたちに、僕のことを話していたのも大きかったと思う。

 あ、ただ二人には一つだけ内緒にしていることがあった。

 それはレンタルした武器の持ち主の記憶を見ることが出来ること。

 これはたぶん、名前付きの武器限定だ。


「それって……英雄の記憶を見ることも出来る?」


 五英雄たちも愛用の武器を使っていた。

 その武器はレンタル可能リスト一覧に載っている。

 レンタルするには莫大なポイントが必要になる。それこそ宝剣リュゲルの必要ポイントが霞むほど桁が違う。

 しかし興味はある。

 本で読んだ騎士王も事実とは違った。

 なら語り継がれている英雄たちにも違った顔があるかもしれない。

 今までは漠然と生きるために冒険者をしていたけど、目標が一つ出来たかもしれない。

 英雄たちの足跡を追う。英雄たちの武器をこの目で見るためにも。

 それを考えるとワクワクしている自分がいた。

 もっともそれはまだまだ先になるだろうけど。

 まずはニアたちを無事に送り届ける。

 それが終わったら、その時にまた改めて考えるとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界は嘘で出来ている あるくひと @jwalk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ