ギャルゲ主人公、ショッピングモールに行く。

 デート2日目。俺と莉愛はバスでショッピングモールに来ていた。昨晩散々頭を悩ませた割には普通だが、莉愛は楽しみだと言ってくれたのでまぁ良いだろう。ショッピングモールには莉愛が気に入りそうな店もあるだろうし、結局楽しめればデート先なんてどこでも良いのだ。

「まずはどこ行く?」

「え~とねぇ…服屋!夏服見たい!」

 

 近くの服屋に入ると、既に夏服コーナーがあった。ちょっと早い気もするが、確かに最近暑くなってきてたし、需要はあるんだろう。

「ねぇ〜琉依!どっちがいいかな!」

出た!聞くだけ聞いておいて自分の中で答えは決まってるやつ!

 莉愛の手には、ベルトが付いたワンピースの水色と白の2つが握られている。

「いや〜、どっちも似合ってるけどな~」

「どっちがいい!?」

答えるまで許されないようだ。それなら…

「じゃあ…水色で」

莉愛の目の色と同じだから、結構映えるんじゃないか?

「水色?そっか〜…」

やべ、ミスったか?

「じゃあこっちにする〜」

良かった。正解したみたいだ。



 次は雑貨店に入った。こういう所は特に用は無くても見てるだけで楽しい。変なキャラクターのグッズや俺には縁のない化粧品のポップを眺めていると、莉愛から呼ばれた。

「琉依〜ちょっとこっち来て〜」

「うーい」

呼ばれた方に行くと、莉愛はTシャツコーナーにいた。

「これ琉依に似合うんじゃない?」

差し出されたTシャツにプリントされていたのは

『自称イケメン』

「おぉい!!」

「あはははっ!これ買えば〜?」

「誰が買うか!」

買った。



 ファミレスで昼を済ませ、次に莉愛と向かったのは…

「着いた!琉依も入る?」

「いや!いい!遠慮しとく!」

下着屋だった。

「そう?じゃあ待ってて」

「うん…」

気まずい。

 店に背を向けてベンチに座る。スマホをいじるが意識は常に背中に向いている。早く戻ってきてくれ。

 

 暫く座っていると、二人組の女子が近付いて来た。

「お兄さん1人ですか〜?」

「私達とお茶でもどうです〜?」

 断ろうと口を開く前に、後ろから急に抱き着かれる。

「琉依!お待たせ〜!」

「莉愛、遅い」

「ごめんごめん」

 彼女連れと分かり、女子達は残念そうに去って行った。

「ちょっと目離したらナンパされるとか〜。油断も隙もないんだから」

「しょうがないって。俺ってイケメンだし。」

 莉愛が猫パンチを炸裂させる。

「調子乗りやがって〜」

「すんません」




 適当に歩いていると、足に何かがぶつかった。視線を落とすと、そこには尻餅をついた幼女が。

「あっ!ごめんな!大丈夫か?」

助け起こそうとすると、突然幼女が泣き出した。

「うぐっ…うああああん!!」

「ちょっと琉依、何してんの!?」

「えっ俺!?俺のせい!?」

そんなに痛かったのか!?

「ままぁぁぁ!!!」


 幼女をベンチに座らせて宥めながら話を聞くに、どうやら迷子らしい。莉愛がしゃがんで幼女と目を合わせる。

「そっか〜。美咲ちゃんはお母さんとはぐれちゃったんだね。どの辺りまで一緒にいたか覚えてる?」

「えっと…スーパー」

スーパーは確か…1階にあったはず。ここは2階だから、結構遠くまで来てしまったようだ。

「スーパーね。じゃあお姉ちゃん達と迷子センターまで行こっか」

「うん…」

 莉愛が美咲ちゃんの手を握って歩き出す。俺はその反対側の手を握った。…莉愛の手を。

「何してんの?」

「や、俺も手繋ぎたいなって」

「…ばか」



 「本当にありがとうございました!」

 迷子センターで放送をかけてもらうと、すぐにお母さんが来た。丁度こっちに向かって来ていたらしい。

「ほら、美咲もちゃんとお礼言いなさい」

「お姉ちゃん、あとお兄ちゃんも、ありがとう!」

俺はおまけかい。


「可愛かったね〜。私も娘欲し〜な〜」

「俺は息子が良い」

尻に敷かれる未来しか見えない。

「あ~、仙李ルートのイベント阻止出来て良かった~」

ん?仙李ルート?

「どういうこと?」

「仙李ルートでこういうイベントあったんだよ。モールで偶然会って一緒に回ってたら、迷子の女の子助けるって」

「ほーん。じゃあ仙李のイベントを俺が奪っちゃったのか」

「そ~いうこと。結構好感度上がるイベントだから、これ以上上がるとマズいし。琉依とやっちゃえば安心かなって」

莉愛が悪戯っぽく笑う。

「どぉ?私への好感度上がった?」

「な~に言ってんだお前」

そんなの元からカンストしてるし。

「…で、これ以上上がるとマズいってのは?」

「…あ。」




 「…もう既に声かけられててね?出会いイベントは…なんか…クリアしちゃった感じで…」

 俺達は近くのカフェに入り、莉愛の裁判を始めていた。

「彼氏いるって言えばもう声かけられないんじゃない?」

「言ったよ!そしたら壁ドンされて…『絶対オトしてみせるから』だよ!素っ気なくしても教室まで会いに来るし!どうしろって言うの!?」

「うわぁ…」

かわいそう。

「…で、他には?ゲームに関することとかして無いよな?」

「…シテナイヨ?」

「本当は?」

「紫陽と紅牙と仲良くなっちゃった…」

は?

「おまっ、ほぼコンプしてんじゃねぇか!」

「ひぇ~ごめんなさいぃ〜!!」

「俺にはハーレム狙うなとか言って、自分は逆ハーまっしぐらか!?良いご身分だなぁ!」

「違うんですぅ…」

「誰と何があってどこまで仲良くなったのか、洗いざらい吐け!」

「え~っと…」

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ギャルゲ主人公、乙女ゲーヒロインに恋をする。 犬養弱し @1nukai-yowasi

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