前回と同じく
@Ichiroe
第1話
(前言)
イーステリア大陸の唯一国家であるエグモント帝国——三百年前、ローリン戦争で女帝・エリンーナが統一を果たして以来、かの国の平和と繁栄は今日まで続いた。
だが盛者必衰、それが世の理。
誰しもが掲げられた帝国旗の下で浴びる輝かしい光に目を眩まされた時に、災厄の影はすでにひっそりと彼らに近付き、その姿たちを覆おうとしている。
✲✲✲
ローリン帝国旧址である、其の国名をそのまま引き継いたローリン大森林。
そこには未だに自分たちのことをローリン人と自称する部族が幾つも残っており、今も人知れずにそこで暮らしている。
だが、シュヴァイン皇族は無論そのことを知っている。
知らないわけがない。
知っていながら放置している。
一つの大陸に平和の時代を三百年も保たせてきた家柄生まれの彼らにとって、そのぐらいの情報は毎朝の食前に読む報紙に載っているようなもの。
そう形容するなら、それらの情報を命かけながらも欠かさず送り届ける皇族直属の機密組織——インペリオの情報部門は彼らの読む報紙を提供する新聞社に該当する。
そんな彼らの一員である少女が今、上からの命令を受け、ローリン大森林に住む部族の様子を偵察をしに来ている。
だが——
《小節・異変の予兆①》
がそごそと、彼女は枝や葉っぱの先っぽに体のあちこちを掠られながらも涼しい顔で潅木の間から凄まじい速さで駆け抜けていく。
その遺影に続き、現れた体型の大きい白毛狼達の背中に乗る怒り然としているローリン人たちが鉄製の細長い槍を少女の小さな後ろ姿に向けながら高く掲げている。
「おのれエグモント人めぇ!我らの都に足を踏み入れことを後悔させてやる!」
そのうちに一人の男が大声を出し、そう言い放ったら迷わず少女の方へ槍を投げ出した。
だが当てられずに、槍が着地した時、少女の前のやや左の位置に深く刺し違えた。だが後五センチぐらいで重ね合いそうになる位置に少女の足跡が残された。
それでも事は未決じまい。
足跡はずっと先へと続いていく。
徐々に、少女は大狼でも追いつけない速さで逃げ続けやがて追っ手の視界から消えた。
前回と同じく @Ichiroe
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