エピローグ 友達以上になりたい


 屋上には誰も居らず、空気が澄んでいた。

 適当に二人はそこら辺に座る。


「――それで、この手っていつ離してくれるの?」

「離したくありません」

「そっか」


 叶乃は自然に有紗の肩に自身の頭を乗せる。疲れているのか、助けてくれたのが嬉しかったのか、分からないけど今だけは甘えたい気分なのだ。


「か、叶乃っ!?」

「これくらい許して下さい。あと先ほどはありがとうございました」

「ううん、お礼なんて要らないよ。私がしたくてやった事だから。叶乃の泣き顔なんて見たくないし」

「……!」


 叶乃は大きく目を見開く。

 それから、有紗はコホン、と咳払いをした後こう続ける。


「それで、大事な話ってなに? 気になるんだけど。まさか、今のお礼のことじゃないよね?」

「そうですが。何か?」


 まさかの大事な話とは助けてもらったお礼のことだったらしい。叶乃はどこまでも天然であり、有紗を振り回してしまう。


「はああああー!」

「何でそんなリアクション取るんですか。わたし、本当に助けてもらってすごく嬉しかったんですよ? ひょっとして大事な話って告白とかだと思ってました?」

「そうだよ!」


(女の子が女の子に告白って……)


 叶乃は一瞬、そう思うが確かに彼女は有紗のことが好きだった。でもその『好き』をあまり自覚していなかった。


 ――少しの静寂の後、叶乃はこう告げる。


「……有紗」

「なに?」

「私とずっと友達でいて下さい」

「当たり前じゃん! ずっと……と、友達…………」


 有紗は『ずっと友達』と言おうとするが、歯切れが悪くなり、躊躇ってしまう。


「どうしたのですか?」

「――友達でいいの? 本当にでいいの?」

「えっ」

「叶乃は私のことが好きなんじゃないの?」

「好きですが。有紗とのスキンシップは楽しくて、有紗といてとても幸せですが」

「――だったら、友達以上にならない?」


 有紗は叶乃の肩をぐいっと自分側に引き寄せ、キスをした。


 とても優しく、甘く。


 夕陽が二人を包み込み、二人だけの時が流れる。


 数秒、有紗からのキスが続いた後、叶乃も彼女にキスを返した。それは二人が両思いの証だった。


「有紗。私、有紗のことが好きみたいです。沢山ずっとキスしていたいです。ハグも頭なでなでも全部、有紗にされていたいです」

「うん」

「だから、さっきの発言撤回させて下さい」

「――ずっと……私の彼女でいて下さい」

「よく言えたね!」


 有紗はそう言い、彼女の身体を引き寄せる。そして、頭を撫で、またキスをする。


 叶乃の表情は過去一、幸せそうだった。


 思う存分、キスをした後、二人は家に帰った。



 叶乃は自身の唇を触る。


「うふふ……有紗……」


 語彙力の低下した叶乃はそう微笑む。


 明日、有紗に会うのが待ち遠しい。


 そう思わせてくれた有紗には感謝しかない。


 またキスがしたい。


 そんな気持ちで眠りに就く。


 叶乃は成長した。

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ツンデレ女子と陽キャ女子がただひたすらイチャイチャする話 依奈 @sss_469m

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