第52話 共鳴




 俺たち生徒会のみんなはすぐ近くのアニマルカフェまで向かった。

 美咲がやや不機嫌だったが、これはしょうがない不可抗力だ。

 俺は悪くない。

 強いて言うなら、俺を負かしまくった斉坂先輩のせいだ。うん。そうに違いない。


 それはともかく、初めての動物カフェって緊張するな…

 ていうか俺今日が初めてのこと多すぎない?気のせい?気のせいだよな。


「ここに猫さんや犬さん、ハリネズミさんに…」


 会長のキャラが壊れている。

 桐山が会長のことを何かいじるかと思ったがどうやら副会長らしきものの制御に手間取っているようだ。

 

『ここに猫さんや犬さん、ハリネズミさんに…』


 あれ?デジャブ?さっきも似たようなことを聞いたような…

 会長の発言と同じだな。しかも一語一句完全に一致している。

 この二人の相性は相当良さそうだ。


(てか完全に一語一句一緒とかありえなくない?何なの?奇跡なの?)


「どうしたんだ優。そんなポカンとした顔をして。」


 こんなどうでもいいことを言うのは何か桐山っぽくて嫌だな。とりあえず動物カフェに緊張したことにでもしておくか。


「何か緊張しちゃって。」


「そっか。緊張するのもいいけどさ。今日は楽しむために来たわけだしさ。全力で楽しまなきゃ、だろ?」


 こいつ本当にイケメンなことを言うじゃないか。あ、響也ってそもそもイケメンだったわ。


「…グダグダしてないで早く入りますよ(早くモフモフしたい♪)」


『そうですね。この前で止まってる時間が無駄ですね。(モフモフ、楽しみ♪)』


 こいつらもう双子の姉妹かなんかだろ。ここまでシンクロされるとされるとさすがにそうとしか思えない。


『猫ちゃん楽しみだね~ゆう君?』


「ほかの動物も楽しみにしたらどうだ?せっかくのアニマルカフェなんだぞ?もうちょっといろいろ楽しんだほうがよくないか?」


 響也の言葉を借りさせてもらった。

 どうだ?俺はイケメンぽかったんじゃないか?


「えっと、そ、それさっき藤室君い。言ってた…」


『え?知ってるよ?ゆう君真似しただけだよね?』


「そうだ!イケメンリスペクトだ!」


 イケメンは尊重すべきだ。そうすなわちイケメンリスペクトである。


「十分分かったよ。だからそれやめてくれ。俺の声をまねされていると思うと恥ずかしいから。」


「『何をグズグズしてるんですか?早く行きますよ』」


 本当に息がぴったりだな。本当にすごい。


「それじゃあ行くか二人とも待っているみたいだしな。」


『それ藤室君の真似かな?あまりいじりすぎちゃうと藤室君怖いよ?今のうちにやめといた方がいいよ。これ忠告。嘘じゃないから信用して!』


 え?藤室って怖いの?もしそうだったらここにいる奴俺と桐山、佐伯さん以外は見た目もしくは内面か外面が恐ろしい奴しかいなくなる。

 それっておかしくね?そんなに怒ったら怖い奴が集まった生徒会ってなんだよ。恐ろしすぎないか?


「え~っと俺コーラ~藤室は?」


「俺は紅茶にしようかな。」


「では私もそれで。」


「僕はこ、コーヒーで…」


「この僕はロイヤルミルクティーをお願いできるかな。」


『私は~カフェオレで~』


「それなら私もそれでお願いします。」


 なんでみんな一斉に俺に向かってドリンクの名前を言ってくるのだろうか…

 はっ。もしかして俺にやれと?

 冗談じゃない。一人でそんな面倒なことしたくないんだけど。

 だって俺別にここの店員じゃあるまいし。

 俺別に便利屋なわけでもないし。


(…なんでみんな俺をそんなジト目で見るんだよ!分かったよ。行けばいいんだろ?行けば。あ~面倒くさい。本当に面倒くさいでも背に腹は変えられないからな…やるしかないか。ホントこの世界って美男美女ばかり優遇して俺みたいな一般人には理不尽だよな!(泣))


 結局、俺の悲痛な声はみんなには届くことなく、虚しく俺はドリンクを取りに行くのだった。

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雨に浮かぶ花を眺める君へ、輝かしい想い出の日々を。 電源コード @leyn

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