エピローグ
地球に帰ってきたらやることは一つ。ラボへの報告書作成だ。ノアと一緒に報告書の作成に取り掛かる。書くことは私の変化について。髪の色が変わっただけならただのイメチェンだが、異能力が関わっている以上、報告せざるをえない。さらに神力と呼ばれるものについて、地球と異世界では違いがありすぎるのだ。どうやって説明をまとめるべきか頭を悩ませる。
「なんだかいろいろあったっすね」
「たった1日でな」
ノアが報告書を書きながら話しかけてくる。今回はこいつも疲れたのか少し静かだ。
「嬉しかったっすよ。イブキが助けにきてくれたの」
「でもノアだけでもなんとかできそうな感じだったじゃん」
「そんなことないっすよ!イブキがいなかったら私は無事ではいなかったと思うっす」
「随分弱気だな?お腹空いてるからか?」
ちょっとした冗談を言ってやる。ノアはそれを聞いて笑った後、少しだけ姿勢を正した。
「イブキとはまだ短い付き合いっすけど、出会ってからずっと楽しくいられたっす。異世界では助け合えてこれたっす。だから」
ノアはじっとしていられないのかずっともじもじとしながら明後日の方向を向いていた。妙に歯切れが悪い。
「これで私たちは友達……っすよね?」
「何言ってんだ。最初からそうだろ」
報告書を書く手を止めずに私はそう言った。ノアが驚いた表情を浮かべてその赤い瞳で私を見つめる。
こいつとはなんだかんだ言いながらも楽しくいられた。ウザいとは思いつつも嫌うことはなかった。本気で覚悟を決めるくらいには大事な存在だ。それを友達と言わずして何と言うのか。改めて考えてみると私は最初からノアのことを友達と認めていたんだな。
「そっか……そうっすね、イブキと私は友達っす!」
「だからそうだって言ってうわ急に飛びつくな危ないだろ!」
突然何を思ったか飛びついてきたノアは満面の笑みで私に抱きついてきたのだった。暑苦しくて敵わないとは思うが、こういうのも悪くは無いななんて思う私だった。友達の為なら何だってやってみせる。今回の事件で決まった覚悟は私を強くさせてくれた。これからも私はこんな日常を守る為に異能力を活かしていくつもりだ。って。
「……何だってやるとは決めたけど、セクハラを許すとは言ってない!」
「何のことを言ってるかわからなぶぇっ!」
いつの間にか私の胸を触りながら局部にまで手を伸ばそうとしていた変態女を思い切り殴り飛ばしておいた。前言撤回だ。こんな日常はごめんだ。私をただの読書好き女子高生に戻して欲しい。そう思いながらまた抱きつこうとする友達から身を守るのだった。
幸運少女と異能理論 伊澄すい @ismsi1123
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