第15話 校庭全面2ボールサッカー

 3年生にサッカーをさせるとみんなでボールを追っかけて、わやわやになってしまう。サッカーコートを引いてゲームをさせるとすぐにラインを越えてしまい、ホイッスルばかりが鳴ってしまう。

 それで、豪介はラインをなくして、校庭全面をコートにした。それとボールは2個。色ちがいである。今回は特別支援学級の担任であるO先生がMちゃんのためについてきてくれている。それでボールを男女別にし、女子のボールをO先生に任せた。女子はMちゃんのキックオフ。男子は豪介が校庭の中央にけり出す。特別ルールは

「男子は男子のボールをけります。女子は女子のボールをけります。もし、別のボールをけった場合は審判の先生が判断して、その場からやり直す場合もあります。もちろん、そのままスルーする場合もあります。それとキーパーは男子と女子両方のボールをさわることができます。どっちかのチームがゴールを決めれば、男女ともにゲーム終了です」

 キーパーを決めてゲームスタート。男子も女子もボールのところで固まりができている。まるでラグビーのスクラム状態だ。でも、たまにボールがその固まりから出てくる。すると、また固まりが移動する。子どもたちはただ蹴るだけなので、パスをするという考えはない。だから結果的に相手にパスをしてしまう子が続出。

 男子のボールが校庭の隅にある茂みに入った。豪介がホイッスルを鳴らす。

「手でもって投げていいよ!」

 と言うと、近くにいた紅チームの子が手で取って投げる。受けたのは白組の子である。味方に投げるという考えはないようだ。その白組の子が紅のサッカーゴールにせまるボールをけった。でもゴール前に味方はおらず、キーパーに簡単に捕られた。オフサイドはないので、ゴール前にだれかがいればシュートチャンスだったのだが・・。そういう発想は子どもたちにはない。

 紅チームのキーパーが投げたボールは半分以上転がり、そこを紅チームの子がうまく蹴り、白のサッカーゴールにせまった。紅チームのチャンスだ。だが、シュートを決めるフォワードがいない。あっけなくキーパーに捕られた。ところが、そこに女子のボールがせまる。キーパーはあわてて投げ、女子のボールを捕ろうとしたが、するするっとサッカーゴールのラインを越えてしまった。紅チームの勝利である。紅チームの女子は跳びあがって喜んでいる。男子はどちらも呆気に取られている。まさか女子が決めるとは思っていなかったからである。

 時間があったので、場所を交代して2戦目を開始。女子のキックオフは運動の苦手な澄江ちゃんである。1戦目はただ走っているだけで、ボールに触れることはなかった。せめて1度ぐらいは蹴らせてあげたいと思う情け心である。男子ボールはまたもや遠くへ豪介が蹴る。今度は全員がいくのではなく、何人かが相手チームのゴール前にとどまった。自分がシュートを決める気満々なのである。しかし、2戦目はタイムアップで引き分けに終わった。

 次のサッカーでは役割を決めてさせてみたいと豪介は考えていた。歩くことはあったが、今日も走らずに終わった豪介であった。


おわりに


 今回で、このシリーズは一応完結です。楽しい体育の授業を少しでも感じていただけたでしょうか。カリキュラムどおりでない授業もありますが、授業の導入やアレンジした体育としてできるものだったと思います。ちなみに雪合戦の話は1時間だけで終わらず、学級活動の時間も入れて4時間やった覚えがあります。(後で学年主任から注意されました)

 若い時にレクリェーション指導員の資格をとったことがあり、その経験が体育の授業にプラスになりました。若い先生にもチャレンジしてほしいものです。画一された体育の授業だけでなく、運動の苦手な子どもでも楽しめるものをしてほしいものです。   飛鳥竜二

 

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代替体育教師、おっさん先生走らず 飛鳥 竜二 @taryuji

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