第8話 暗躍する謎の男③
まえがき
なんか予約投稿したら更新日飛んでました。すみません。
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「もう!! 帰ってくるの遅いってば!! 心配したじゃん!!」
「痛い痛い」
マンションに帰ってきた途端、何故か瑠美川に身体をぽかぽか叩かれる。
たしかに予定よりも長い外出になったが、そう怒らなくたって良いだろうに。
というか……。
「俺の心配をしたの?」
「っ、あ、当たり前じゃん!! や、約束!! そう、約束は守ってもらわないと!!」
約束。俺が瑠美川を王にする約束だ。
「そうだね。約束は守らなきゃだよね。安心してよ。俺は約束は守るから。それはそうと――瑠美川さん!!」
「きゃ!? え、な、何!? ちょ、ていうかいきなりするつもり!?」
「……何を慌ててるんだ?」
俺は瑠美川の肩をガシッと掴んだだけだ。
すると、何故か瑠美川は顔を真っ赤にして挙動不審になった。
「計画を考えた。学校に行くよ」
「うぇ? が、学校?」
「ああ。さっき支配者モードで辺りを徘徊してたら早乙女さんと遭遇したんだ。学校に避難者を集めているらしい」
「早乙女って、生徒会長の? そ、そうなんだ。……はあ、びっくりした。てっきりキスされるのかと思ったじゃん……」
「?」
ボソッと呟いた瑠美川の声を、レベルが上がった俺は鮮明に聞き取った。
俺は首を傾げる。
「なんでキス? 別にしないよ、そんなこと」
「……なんかムカつく!!」
「痛い痛い」
急に怒り出してぺしぺし俺を叩いてくる瑠美川。
まだ一度も戦闘を経験していない瑠美川はレベルが1で、ステータスも低い。
だから叩かれてもあまり痛くないのだが……。
なんというか、いきなりの暴力は少し理不尽な気がする。
「して欲しいの?」
「……ふぁ!? ち、違うし!!」
「だよな。えーと、どこまで話したっけ? ――痛い痛い。どうして叩くの!?」
「い、今の嘘だから」
「……ん?」
俺は少し理解するまで時間がかかった。
「……何かの演技、ではないよね?」
「あ、当たり前じゃん!! 私のこと何だと思ってんの!?」
「自分のためならどんな嘘も吐く悪女」
「うぐっ、そ、それは否定しないけど!! 日頃の行いのせいかも知れないけどさ!!」
瑠美川が苦虫を噛み潰したような顔を見せ、その直後にハッとする。
「そ、そうだ!! もしあんたが約束破ったら、犯されたって言い触らすためにヤるの!!」
「……別にヤる必要は無いんじゃ? 瑠美川さんのスキルなら無条件で周りに信じ込ませられるんだから」
わざわざ本当に犯される意味は無い。
ちょっと瑠美川が何を考えているのか分からなくて対応に困る。
俺だって普通の男だ。
性格はともかく、顔と身体が極上な瑠美川を好き放題したいという欲望は少なからずある。
しかし、俺にとって彼女は女である前に一緒にこの世界を楽しむ
あまりエロいことをする気にはならない。
「瑠美川さん、何が目的なの? 教えてよ」
「うっ、べ、別に目的とか、ないし?」
「俺と君はもう仲間じゃないか。何かしたいことがあるなら手伝うから」
俺が瑠美川の顔を覗き込む。
すると、瑠美川は観念したらしく、耳まで顔を真っ赤にしながら白状した。
「……き」
「?」
「いや、その、だから、えっと、多分、好き……」
「……?」
また理解するまで時間を要した。
俺がイマイチ言葉を飲み込めていないと察した瑠美川はキッと睨む。
可愛いけど、少し怖い。
「だ、だから!! 神影のこと好きになったって言ってんの!!」
「……は?」
何を言ってるんだ?
「いや、本当に自分でも意味不明だけど!! なんかあんた見てたら身体が疼くようになっちゃったの!! あんたがいるせいで一人でもデキないし!! 外出してもいつ帰ってくるか分からないからデキないし!!」
「う、うん? そ、そうなんだ」
「こっちがずっとムラムラでイライラしてるってのに自分はやりたいことやって!! 何度か誘惑してんのに全然気付かないし!!」
誘惑? そんなことされたっけ? 全然意識してなかったから分かんないや。
「だ、だからさ、その、シようよ」
「でも瑠美川さん、彼氏いるでしょ?」
「……別に良いじゃん。こんな世界だし、どうせ死んでるって」
「生きて再会した時に修羅場は勘弁なんだけど」
「その時は私が何とかするから。……抱いてよ。それに男って寝取りが好きなんでしょ?」
いや、寝取りが好きかどうかは本人の好みに依るところが大きいと思うが。
それにしても、瑠美川が俺を好き、か。
瑠美川がそう言うなら俺としては遠慮無くエロいことをするが……。
問題は瑠美川の好意をどこまで信じるべきか、だよな。
俺を騙そうとしているのか、あるいは本当に好意を抱いているのか。
それが分からないから、つい警戒してしまう。
彼女が嘘を吐いた時に生じる違和感のようなものは感じなかったが……。
ユニークスキルのLvアップに伴い、それすら感じさせなくなっている可能性がなきにしもあらずだからな。
でもまあ、そうだな。
「その方が面白いかも」
俺は瑠美川に聞こえないよう、小さく呟いた。
瑠美川が俺を騙そうとしているなら、それはそれで面白そうだし、楽しそうだ。
仮に本気で瑠美川が俺を好きだとしても、恋愛感情以上に便利なものはない。
ますます俺の傀儡にピッタリな女になるってだけの話だ。
「? なんか言った?」
「いや、何でもないよ。じゃあ、シよっか」
「っ!! ふ、ふふんっ、私のテクニックで泣かせてやるんだから!!」
「うおっ」
瑠美川がそう言って、俺にずいっと顔を近づけてきた。
唇が重なる。いきなり大人のキスをしてきた。
「ぷはっ、どうよ? 私のテクニック」
「まあ、上手いんじゃない? ――痛いって」
「偉そうなこと言ってられんのも最初だけだし!! 私はこれでどんな男も簡単に堕としてきたんだから!!」
瑠美川が息巻いて、身体を近づけてくる。
今後の計画を話すのは、もうしばらく時間を置いてからになりそうだ。
「まじ意味分かんない。どんな体力してんの?」
「レベルアップの恩恵かもね。あれだけイキってたのに、最後はヘトヘトで甘えてくるから可愛かったよ」
「うぅ、明日からレベリングしようかな……」
結果的に言うと、その戦いは終始俺が有利なままだった。
俺の狭いベッドで乱れた姿を見せた瑠美川は、枕に顔を埋めながら、もごもごと負け惜しみを口にする。
「……今度は負けないし」
「またヤる気なんだ?」
「当たり前じゃん!! 私が勝つまでやるんだから!!」
「じゃあ勝ったら終わる?」
「……意地悪。私が勝ってもヤる」
少しからかったら、頬を膨らませてそっぽ向く瑠美川。
仮に演技だとしても可愛いな。
「でも、レベリングの予定はもう少し先にしてもらおうかな」
「なんで?」
「明日から瑠美川さんにやってもらいたいことがあるんだ」
「……あくあ」
「ん?」
「……あくあって呼んでくれなきゃ、やだ。私も神影のこと、
「俺、自分の下の名前が嫌いないんだけど……。まあ、いいや。明日からあくあにやってもらいたいことがあるんだ」
「うん、やる」
瑠美川がまだ内容も言っていないのに頷く。
ただ一回、少し肌を重ねただけで随分と態度が変わったような気がする。
「私は何すればいいの?」
「簡単な話さ。これから学校に行って、そこに集まっている避難者と接触する。あくあにはそういう連中からユニークスキルを聞き出して、リストアップして欲しいんだ」
「……なんで?」
「有能と無能を分けるため。可能なら、あくあの手駒にしたり、俺の配下にしたりする」
王には仕える者が必要だ。支配者には従う者が必要だ。
そのための事前調査である。
「運命ってさ、なんか凄いよね。こんな状況でも、本気っていうか」
「楽しいからね。言ったでしょ、俺は人生エンジョイ勢だって」
「……うん。そういうところ、好き」
そう言うと、瑠美川は上目遣いで俺にしなだれかかってきた。
「続き、シよ?」
「またか? もう疲れてるんだけど」
「シてくれなきゃ、やだ」
「……分かった」
ふと思う。
ある意味では、瑠美川も俺の配下ということになるのだろうか。
その日は夜が明けるまで、俺は瑠美川の身体を隅々まで堪能するのであった。
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あとがき
ワンポイント作者の一言
作者「打ち切りです」
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チート転移魔法使いは魔物で溢れ返った地球を陰から支配したい!~0から始めるやり過ぎ暗躍ライフ~ ナガワ ヒイロ @igana0510
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