第3話 父との確執
―― 今から30年前くらいになる。その頃私は、高校受験を控えていた。父はとても荒れていて、私達の目の前で母に手を上げるのは日常茶飯事だった。
私にも色んな暴言を浴びせてきて、勉強に集中出来ないことも多かった。その頃母は弟を出産後育児に追われていたのに、自分の事ばかりを優先して、何事も自分中心であり、さんざん母を苦しめていた。
『だから女はダメなんだ、馬鹿だから。』
『お前は底辺の高校にしか行けない、何を今まで勉強してきたんだ?』
『こんなこともできないのか?本当に女は馬鹿だな』
などとにかく酷い台詞を毎日浴びせ、男尊女卑で男は女の上、女は男よりも下という考えを曲げす、
昭和時代の男性特有の考え方をもつ、今で言う毒親であった。
私も勉強に集中できず、だんだんと心に余裕もなくなり
父親なんて早く逝ってしまえと何度思ったことか……。
4歳下の妹にも自ずとその影響はあり、不安定な部分もあり、私も妹に対して、子供ながらに酷いこともすることが増えた。だが、妹も今では教員免許を取得したり、自分の経験を活かした仕事についたりと努力している。
高校は私立の女子校に単願入学をする形になる。そこで出会った友人には恵まれたが、家庭環境が悪く家出をしたり、シェルターに母と身を隠したり、母の家出に付き合うこともあった。遠方の旅館に住み込みで私は母についていき、働いたこともある。
その事が影響して私は高校2年の時に、留年することとなり、4年間高校に通い、入学当初一緒だった同級生の卒業を見送り、私自身は1学年下の同級生と卒業した。
色々あったが、大人になった今思うと、父自身、仕事が上手くいかずに自己顕示欲を満たす為に家族に酷い仕打ちをしていたのかと思う節もある。
私自身家庭を持って、育児をして、守るものがてきたことにより親の目線で考える機会が増え、父の気持ちも大人になった今では理解できる部分もある。父は75歳で昨年秋に永眠した。いまでは、父のことは別の目線で客観的に振り返ることができるし、不器用ながらも愛情表現として、父なりに家族旅行に連れていってくれたことも思うと、繊細な部分もあったのだなと理解できる。
若気の至りで、自分中心になんで自分はこんなに不幸なんだろう………と悩んでいた過去の私の気持ちもまた冷静に振り返ることができるようになった。
私ソーシャルワーカーを志すきっかけとなったのも、過去の経験があって今に至る。今思うのは、過去の経験は未来に繋げて行くきっかけにもなり、生きていく上での糧になるのかなとそう思えるようになった。
「Sincerly of Life」 風月 結花里(ふづき ゆかり) @mochako37
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