第2話 父の事 母の事
私はいま、家庭を持ち子供を育てている。結婚して出産し育児をしてきて、息子は育児の手を離れ、内定をもらい、来年の春には大学を卒業し社会人として自立する予定だ。育児をする中で、私が過去に経験した事もあり、息子には絶対同じ思いはさせたくないとずっと考えて育ててきた。本人の意思を尊重したが、厳しくすべきことやこと礼儀に関しては、しつけをしてきたつもりだ。
母は7年前にがんの再発がわかり、転移もしていて64歳の若さで旅立った。母が亡くなった時は、ターミナルケアで病院に入院する母を私と妹で付き添い、泊まり込んで看病をした。私は母を看取ることは出来なかった。母の時はコロナ禍前だったのもあり、ずっと付きっきりで病院に泊まり込んでいたので、主人と息子母の危篤の報せを受けて駆けつけてくれ、気分転換も兼ねて食事に出ている際に息を引き取った。
一方、父は去年の秋に亡くなった。看取った時はコロナ明けで5類になったが、まだ制限があり、1人だけ病室に泊まり簡易ベットで仮眠をとり、交代で付き添っていた。しかし交代で父を見守る3日目に父は75歳で永眠した。3姉弟(きょうだい)で父を看取ることもできた。
今思うと、父は仕事でも上手くいかず、気持ちに余裕もなく、アルコールに手を出し、家族に対して辛く当たることで、自分の自己顕示欲を保とうとしていたのかもしれないと思えるようになった。自分も大人になり、親となり、人生経験を重ねてわかるようになったというのもある。父なりに繊細な面もあったのだろうと考えられるようになった。
父は私達が幼い頃、必ず長期休暇や大型連休などには家族旅行に連れていってくれたことを思い出す。父なりに不器用ながらも愛情はしめしてくれていたのかなといまになって思うのだ。
母も色々と苦労してきたが、父との関係、父方の義両親との不仲、居場所のなさからネグレクトに近い状況になったこともあった。
自分が抱える問題について、救いを求めていたのかマルチ商法や宗教など、すがるものが欲しかったのかもしれない。母も母なりに、自分の居場所を探していたのかなと母の事も考える。
あまり褒められた両親ではなかったけど、でも不器用なりに愛情を注いでくれていたのかなと大人になったいま、考える。
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