第六話「何でこんな目に遭ってしまうんでしょう」
私、グルタミは東都バーグのキャアリースで生まれた。お父様とお母様はすごい料理人で、尊敬していたから私も料理人になりたかった。私はお父様とお母様に厳しくも優しく育てられた。私は出来が悪かったから、いつも折檻されていた。お母様のお腹にいる妹は私よりもっと出来が良いって、よく言っていた。
「何度言ったら分かるんだ! お前はいつもいつも……!」
お父様から教わる料理を失敗すれば、失敗しなくても泣くまで殴られ蹴られ、暴言を浴びせられた。お母様はよくテレビを見ていた。ソファに座ったらダメだから、ソファの後ろの方に立って見ていた。テレビの中では、料理の大会がよく開催されていた。テレビの中は華やかで、色とりどりの料理が並べられ、綺麗な人たちが沢山の批判をしていた。“コレステロー前衛的料理大会”この世界で一番大きな大会らしくて、私はいつかその大会に出てみたいと思っていた。
「料理大会に出すからついて来い」
ある日、お父様とお母様に車に乗せられ、どこかに連れて行かれた。私は憧れの大会に出られることが嬉しかった。それに、久しぶりに外出られたから、以前見た景色とは違うところを探してみたりした。景色は移り変わって、見たことのない場所に来ていた。建物の背丈はどんどんと高くなって、見上げてもてっぺんが見えないくらいになっていた。そのうちの一つ、周りの建物の中でも一番大きな建物に入った。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ、お子様はあちらへ」
スタッフさんに連れられて、部屋に案内された。その部屋は小さくて、真っ白で、机と椅子だけがあった。机には小さなお菓子が置いてあった。
「じゃ、ここで待ってて」
スタッフさんが部屋に鍵をかけて出たあと、私は言われた通り待っていた。ずっと待っていたけど、いつまで待っても何もない。何時間経ったのか分からなかった。楽しい気持ちや浮かれ気分は消えて、お父様もお母様もいなくて、知らない場所に一人ぼっちでいることが怖くなって、目から涙が溢れた。
「お父様……お母様……」
泣き出したら止められなくて、声を出して泣いた。それでも誰も来なかった。ようやく波が引いて、泣き止んだあと、お腹が鳴った。それでようやく、私はお腹が空いていたことに気づいた。机に置いてあるお菓子を見る。たまらなくなって、お菓子に手を伸ばした。全部食べたけど、とっても小さかったからお腹は鳴らなくなったけど、まだお腹が空いている気がした。そのあとすぐ、鍵を開ける音がして扉が開いた。
「じゃ、ついてきて」
スタッフさんに連れられて、エレベーターに乗った。エレベーターには数えきれないくらいのボタンがあった。10分くらいして、エレベーターはようやく開いた。そうしてスタッフさんにとある部屋に案内された。その部屋にはコレステロー前衛的料理大会のレギュラーらしいラーゲンさん、黒い服を着て黒いサングラスをかけた沢山の人、そしてテーブルクロスがかけられた大きな机があった。机の上には沢山のクローシュがあった。机を挟んで私とラーゲンは目を合わせた。
「あ、ラーゲンさんだ!」
憧れのラーゲンさんに会えてとっても嬉しかった。でも、なんて言えばいいのか分からなかった。
「今日はよく来てくれたね、料理を作ったから食べると良い」
ラーゲンさんがそういうと、後ろの黒い人が端っこにあったクローシュを開けた。中にあったのは蒸し焼きになった足だった。
「……え」
どんどんとクローシュが開かれていった。ふくらはぎ、太もも、腰、大きなお腹、胸、肩、二の腕、前腕、手、首。
「え? え?」
反対側の、ラーゲンさん側のクローシュも同じように開かれる。足、ふくらはぎ、太もも、腰、お腹、胸、肩、二の腕、前腕、手、首。
「じゃあ、食べてごらん」
ラーゲンさんがそう言ったけど、私はとてもじゃないけど食べられなかった。というより、目の前に出来事が理解出来なかった。けれども、だんだんと理解した。
「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
それを見たラーゲンさんは視線を動かした。そしたら後ろにいた黒い人が私の体を掴んで頭を突っ込ませて食べさせようとした。目の前の大きなお腹は中身が開かれていて、中にはなにか血液に塗れたものがあった。私は子供で、黒い人は大人で、どれだけ抵抗しても意味が無くて、結局食べてしまった。
「そうかそうか、美味しいかー、じゃあワシも一口」
ラーゲンさんはナイフで肉を切り取って、口に運んだ。
「まっず!!」
そう言ってラーゲンさんは肉を吐き出した。
「ぺっぺっ、こんなもん食えるか!! 捨てろ捨てろ!!」
その後のことはよく分からない。
「って感じで」
「え? あの自称父親とキレた不審者は?」
絶望のゴミ捨て場 皆乍私語 @minanagarasasamegoto
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