第2話
約束事
一、殺害してもいいものは、殺人犯または何らかの凶悪犯罪を行った人たちのみに限る。
したがって、一般人に手を出してはいけない。(ただし例外はある)
二、殺害方法は刺殺のみに限る。(ただし例外はある)
三、このクラブについて、家族、友人、知人、他人すべてに一切情報を漏えいしてはならない。
四、このクラブについて秘密を知る者はいかなる手段を用いてでも抹殺すべし。
五、このクラブを抜け出すには、死しかありえない。(死に方問わず)
六、以上の事項を順守すべき。一つでも破れば極刑あるのみ。
七、約束事はこれからも増えていく可能性あり。
ただしその場合、メンバー全員の了承を得なければならない。
前置き
成海は中学生である。2年生で13歳。今の季節は春で、成海の誕生日は冬であるから、彼が14歳になるのは当分先の話である。
成海は、この時期の中学生としては大人っぽい様である。声も変わり始め、だんだんと幼さをなくしていた。髪型はパーマをかけたように乱れている。そもそも成海は天然パーマなので、そのような髪形になってしまう。元に戻そうとも、手間がかかるので、そのままでいる。
誰とでも気さくに話せるタイプなので、友達に不自由していない。
背は高く、ルックスもまあまあいい方なので、女子からの人気も若干ある。部活には所属しておらず、とあるサークルで活動している。
これが斎賀成海という少年のひと部分である。
本編
「昨日のニュース見たか?」
成海が朝の教室に入り、荷物を机に置いたとき、クラスメイトの
「ああ、ニュースは見たけど、何のニュース?」
筆箱、教科書、ノートをカバンから取り出し、机の中にしまう。
成海は淡々とした口調だった。朝だからなのか、調子が低い。
信弘は成海が朝に弱いことを知っているので、いちいちそのことに触れたりしない。
「あれだよ、隣町で起きた通り魔事件」
「あーはいはい。背後から鈍器のようなもので殴られたってやつだね。つい先日にも場所は違ったけど、似たような事件あったよね?」
「そうそう。連続殺人だよな。ひどいことするもんだぜ」
信弘はまるで他人事のように笑っていた。
「多分さ、というか噂だけど、「CHA」の仕業らしいぞ」
成海は、信弘が出した「CHA」という単語にほんのわずかだが、反応した。一瞬だけ顔をこわばらせた。しかし、すぐに元の表情へ戻した。たまたな下を向いていたのが幸いしたのか、その表情を信弘に悟られなかった。
「え、でも……」
「ん? どうかしたのか?」
「いや、別に……」
愛想笑いを振りまく。まあ、まず違うだろう、と思い至り、変な考えはやめた。
何故、成海が「CHA」という単語に反応したのか、それは明らかだった。
そもそも、「CHA」というのは、何なのか。
「CHA」というのは、謎の多い組織で、一言でいうなら、殺人集団である。殺害数は軽く10人を超えている。神出鬼没で、その死体の近くに「CHA」という血文字が刻まれていることから、そう呼ばれている。「CHA」の正確な人数すら把握されていない。本当に煙のような組織である。
「何々? 面白そうな話してるじゃん」
すると、
柏美禰とは、成海と信弘のクラスメイトであり、快活な少女である。そのためかクラスの中で人気が高い。髪は短めで、顔立ちが良いことから、男子からの人気も絶大である。昔、水泳をやっていたこともあり、髪は少し茶色を帯びている。
美禰は探求心が人一倍強く興味を持てばそれにすぐ熱中する。今もまさに、それの真っ最中である。
「「CHA」とか言っていたけど、それがどうかしたの?」
興味津々、といった顔だった。子供のように無邪気に瞳をキラキラさせていた。
「あれだよ、昨日のニュースでやってた……」
といって、信弘が先ほどまでの流れの説明をし始めた。美禰はそれにフムフムと真剣な面持ちで聞いていた。
「残念だけど、ただの通り魔よ」
美禰は、自信満々に言い切った。
「え!? 何を根拠に?」
「まず、「CHA」は一般人を襲いません! 狙うのは犯罪者のみよ! それに、血文字もなかったわけでしょ? じゃあ、ありえないわ」
「なるほど。自称探偵はやはり違うな」
と、そこに横でやり取りを黙って聞いていた成海がからかう様に言った。
「自称はよけいだっちゅうの!」べーだ! と舌を出した。
「だけど、よくそんなこと知ってるよなぁ。感心するわ」と、信弘。
「探偵やってんだから、これぐらい知ってて当たり前よ」と、美禰は自慢げに言って、鼻を高くする。
美禰は最近、探偵ごとをやるのに夢中である。もちろん、推理小説にはまっているためである。それだから、最近有名な「CHA」の謎に迫ろうとしているのだった。
「いつか「CHA」を捕まえたいと思ってるだろ?」と信弘が訪ねた。
「もちろんよ! 私が奴らを捕まえてみせる!!」
「お、いい意気込みだね」
信弘は激励の拍手を送った。
「はは……」
成海はそんな美禰を見かねてついつい苦笑が漏れてしまった。
「なに笑ってんのさぁ」
美禰は不満顔で言った。
「別に……」
お前には無理だろ、そう中傷を込めて笑ったとは口が裂けても言えなかった。
おまけ
ついこの間は楽しかったなぁ。
もう、「僕」はこれ以上の快楽を見つけられないだろうな。
人を殴る感触。頭蓋骨が割れる音。血が滴るとき。痛みに悶え苦しむ時。
そして、息絶える瞬間。
最高だ。
最高だなぁ。
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