エピローグ

 11月。街並みがクリスマスモードへ移り変わっていく中、お付き合いが始まって初めてのデートの日がやってきた。


『今日はばっちり楽しんでこいよ! 万真も御園さんも、本当によかったなぁ。こないだの話聞いて、泣いたわ。まじで。あんなにすれ違ってたのに、どこかで想い合ってたって……あ、いかんいかんまた泣くわっ。ってことで、御園さんにもよろしく言っといて!』


出発前に有弥からのLINEが届く。


「俺だけの力だけじゃ、どうもならんかった。先輩もだし、有弥の同級生もだし――もちろん、有弥の力もあったから。こないだも言ったけど、感謝してる。んじゃ、行ってくるよ!」


そう返事をし、家を出る。


 デートの場所は、かつて衝突の場となってしまった水族館、アクアスターズだった。美玖の希望で、今度こそは2人で楽しみたいと。万真も同意し、決まったのである。


「おはよーっ、万真! 待った?」


先に着いた万真のもとへ、美玖が小走りでやってきた。


「ううん、今来たとこだよー。行こっか」


恋人同士となって初めて、手を繋ぐ。その手を離すことなく、ゆっくりと館内を回る。夏向といた頃は奪われていたであろう美玖の笑顔が、万真の隣で咲き誇っていた。この子を自分のものにしてよかったと、万真は心の底からそう思っていた。


 途中で昼食を食べ、全てを回り終わる2人。最後に売店に寄る。


「……お揃いのもの、買いたいな。……いいかな、万真?」


美玖が覗き込むように見てびくっとした万真だったが、


「いいよー。俺も、そうしたいなって思ってたから。美玖、好きなように選んで?」


「うんっ!」


こうして初めてお揃いのものを買った2人は、アクアスターズを後にした。


 美玖が住むマンションまで、歩みを進める2人。終始変わらず、固く手を繋いでいる。


「……なあ、美玖」


「なあに、万真?」


「……これからは何があっても、2人で生きていこう」


美玖は微笑みながら、


「……うんっ。これからも、万真に守られながら、生きていくっ」


シスコン男のままだったら、芽生えることも気づくこともなかった恋。自分を追い続けてくれた彼女と2人で、ありったけの恋ができますように。






―完―





――――――


【作者より】

これにて完結です!

最終章は目を潤ませながら執筆してましたが……。

約3か月半もの間、お読みいただきありがとうございました!

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シスコン男に恋はできる? はづき @hazuki_com

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