人と話せるキツネに叱られた。

虹色冒険書

人と話せるキツネに叱られた。

 

 この浄水場に勤め始めた頃からそうしているように、俺は敷地内にある庭園のベンチで昼飯を食っていた。

 多くの木々や色とりどりの花が植えられた庭園には、噴水や東屋が設置されていて、五月下旬から十月中旬までは一般開放もされる。ここを散歩コースにする人もいるし、六月くらいには満開の桜を見に来る人が訪れ、夏の時期には噴水で水遊びをする子供達も見受けられた。ゴミを散らかされたり、火事でも起こされたらまずいから、宴会や花見は禁止だけどな。

 もう少しすれば、今年もそんな光景が見られるに違いない……そう思いつつ、俺は黙々と焼きそばパンをかじっていた。

 その時だ。

 視界の端っこで、何かが動いたのだ。


「ん?」


 何だ、と思いつつ目を凝らしてみる。風で枯草の塊でも動いたのかと思った。でも違った。

 木陰からひょっこりと顔を出したそいつ。最初は犬だと思った、でもその尻尾は大きく太くて……犬ではないとすぐに分かった。

 なんと、キツネだった。

 本物を見たのなんていつ以来だったかもう思い出せなかった、俺は焼きそばパンを食うのも忘れて、思わずそのキツネをじっと見つめた。

 すらりとしてて美しいフォルム、文字通り『キツネ色』の毛並みが陽の光に照らされていて、とても綺麗だった。可愛い……それに、かっこいいと思った。

 撫でてやりたい……動物好きな俺は思わずそう思っちまったけど、それはご法度だ。

 キツネには恐ろしい寄生虫がいるって聞いたことがある。確か『エキノコックス』とか言っただろうか、そいつが人間の体内に入ると、内臓に寄生して病気を引き起こすんだ。俺の記憶している限りでは、死に至った事例もあったはずだ。

 あんな可愛くてかっこいい動物だけど、触っちゃいけない。もし近づいてきたら離れなければ……と思ったが、それは必要なかった。

 キツネは俺に近づこうとはせずに、お座りをして離れた場所から俺をじっと見つめていたんだ。太くてもふもふした尻尾を、小さく振っていた。


「この辺に住んでるのか?」


 正気を疑われかねないので言っとくが、別にそのキツネに話し掛けたわけじゃない。ただの独り言だった。

 しかし、信じられないことが起きた。

 キツネが、その頭を縦に振ったのだ。


「っ……!」


 俺は息を飲んだ。

 あのキツネ、今俺の言葉に応えた……? なんて一瞬思ったけど、すぐに常識的な考えに至った。童話じゃあるまいし、そんなことはありえない。

 笑い交じりに、俺は言った。 


「はっ、気のせいか……」


 次の瞬間だった。

 キツネが、今度は首を横に振ったのだ。まるで、『気のせいじゃないぞ』とでも言いたげに。


「えっ……!?」


 今度は、声を出してしまった。

 キツネはただ、尻尾をパタパタさせながら俺をじっと見つめ続けていた。

 

「お前、まさか……人と話せるのか?」


 キツネが頷いた。

 その仕草は人間のそれと変わらなくて、『ああ、話せるさ』という言葉さえ返ってきそうだった。

 見間違いではなかった。そのキツネと三度のやり取りを交わしたその時点で、俺はやっと自分の目を疑うのをやめた。仕事の疲れで幻でも見ているのかと思ったが、そうでもないようだ。


「はは、すげえ……キツネと話すのなんて、俺初めてだ」


 興奮というか嬉しさを覚えた。

 だってそうだろ、動物と話したことのある人間なんて多分、俺が世界初だろうから。

 焼きそばパンを食うのも忘れて、俺はキツネに話し掛けた。


「お前は、その……こうやってよく人と話すのか?」


 キツネは、首を横に振った。

 野生のキツネに安易に近づいちゃいけないのは知っていた、けど俺は、もう少し近くで話してみたいと思った。


「なあ、そんな遠くからじゃなくて……もうちょっと近くに来ないか?」


 俺が提案すると、キツネはまた首を横に振った。

 人と話せるといっても、野生のキツネだ。きっと警戒しているんだろう。


「そっか、でも信じらんねえやこんなの……夢でも見てるみたいだ」


 そこでふと、俺は手に持った食いかけの焼きそばパンを思い出した。

 ちょうど良かった、と思った俺はパンの口を付けてない部分をちぎり、


「ほらこれ、やるよ」


 今しがた友達になったキツネに向かって、それを投げた。

 マンションに越してきた人間が、隣室の住民にする贈り物のようなもの。言うなればお近づきの印、表現すればそんな感覚だった。

 もちろん、俺には悪意など微塵もなかった。

 だが、俺が投げたパンの切れ端を見た瞬間、キツネの様子が急変した。

 びくんと体を震わせ、お座りの姿勢を解いたと思ったら、目の前に敵が現れたかのように身構え……庭園の地面に落ちたパンの切れ端を睨みつけたんだ。

 そして俺に向き直り、


「グァウ! ガウガウッ!」


 それまで大人しかったキツネが、いきなり吠え始めたんだ。

 その瞳は間違いなく俺を捉えており、今までの様子とは打って変わって、俺を威嚇しているようだった。

 

「な、何だ? どうして……!」


 パンの切れ端を与えた瞬間、豹変したキツネ。

 少なくとも、俺は自分が与えた餌もとい、贈り物をあいつは喜んで食べてくれるものと思っていた。

 出会ってからこの数分間やりとりを交わし、俺は仲良くなれたと思っていたのだが、あのキツネの様子がそれを否定していると感じた。

 

「グァウ!」


 キツネは離れた場所から、庭園中に響く声で吠える。俺があげたパンの切れ端には目もくれない。

 人間と話せるキツネ、ならば俺の好意も理解してくれる、受け取ってくれると思ったのだが、そうではないということなのか。

 ただならぬ何かを感じ、俺はベンチから腰を上げた。

 キツネが、また吠えた。


「グァウッ!」


 より大きく、より強い声だった。

 人と話せるキツネが発するそれは、俺に向けられた糾弾のようにも感じられた。

 だがもちろん、俺にはそんなことをされる覚えなどない。あのキツネの様子が変わったのは、俺がパンの切れ端を与えたから……それが気に食わなかったということなのだろうか。

 だが、鳴き声を聞いていると不快さ、そして苛立ちが込み上がるのを感じた。それはきっと、あいつが人と話せるキツネだからこそなのだろうと思う。

 俺はパンの切れ端を拾い上げ、露骨に嫌みを込めて言った。


「いらないってことかよ。可愛くない奴……」


 パンの切れ端を拾い上げると、キツネはもう吠えなかった。しかし、身構えるような姿勢は崩さなかった。

 俺とキツネは向かい合い、一時の沈黙が流れる。それを破ったのは俺だった。


「もう時間だから仕事に戻るわ、じゃあな」


 さっきと同様、言葉には露骨に嫌みを込めた。

 踵を返し、庭園と浄水場を繋ぐ階段へと向かう。その最中、俺はふと後ろを振り返った。

 そこにはもう、キツネの姿はなかった。風が吹いて、庭園の草木がザワザワと揺れた。


「ったく、何だったんだあのキツネ……」



  ◎  ◎  ◎



 その日、仕事を終えてマンションの自室に戻った俺は、コンビニで買ってきた夕飯も開けずにベッドに仰向けになった。

 昼休み後の業務で、盛大にミスって上司に怒鳴りつけられちまった。普段ならやらないような単純なミスだったんだが、理由は明白だ。

 昼休みの、あのキツネの件……あれで心がモヤモヤして、仕事への集中力が散漫になったんだ。ただ、野生のキツネに吠えられただけのこと、それで済ませればいいだけの話だったんだが、俺にはそれができなかった。あえて言うなら、親友とケンカしちまった後みたいな気分だった。

 それにしても、何であのキツネはいきなり吠えだしたんだろう。最初は大人しくて、俺の問いかけに頷いたりしてくれて、友達になれたとすら思ってたのに……。

 

「ちっ、やっぱこのままじゃ気が済まねえや」


 俺を睨みながら吠えるキツネの姿が頭から離れず、意地でも明らかにしたくなった。

 ベッドの上で身を起こし、ポケットからスマホを取り出す。インターネットの検索ページを開く。

 思い返せば、あのキツネの様子が急変したのは俺がパンをやったからだった。つまり、あれが原因だったのだろうか……そう考え、俺は『野生のキツネ パン』とキーワードを打ち込み、検索をかけた。

 そしてある記事を見つけ、目が釘付けになった。


「これは……!」


 それは、ある自然保護団体が書いた記事だった。

 題名には大きく、『野生動物にエサをあげないで!』とあった。どういうことなのかと思って読み進めていくと、その詳細が記されていた。

 内容を要約すれば、野生動物への餌付けは、人間にもその動物にも多くの弊害をもたらす行為だったのだ。餌付けされた動物は自分で食べ物を探す能力を失い、人間から与えられる食糧に依存するようになる。そうなれば、人間が来なくなる時期になれば飢え死にするしかない。他にも車に近寄った動物が轢かれて命を落としたり、人間と動物が不用意に接触することによる感染症の伝播の原因にもなるという。

 過去にはこんな事件もあったそうだ。餌付けされて人を恐れなくなったヒグマが市街地に出没するようになり、幾度も追い払ったがその効果もなく、ついには小学校の近くにまで姿を見せるようになった。そんなクマを放っておけばどうなるかなど、もはや明らかだった。人的被害が出る前に対処しなくてはならず、そのヒグマは射殺されてしまったという。本来ならば、奪われなくてよかったはずの命だ。餌付けによって狂わされたヒグマの運命……そのヒグマを殺したのはハンターじゃない、人間のエゴが殺したのだ。

 そもそも、人間の食べ物が動物の体に合わないことだって多い。

 俺が与えたパン、キツネはあれで空腹は満たせるが、上手く消化できずに体力・免疫力の低下を招く。その結果、ダニによる皮膚病に感染してしまい、毛が抜け落ちたり、目が見えなくなり、衰弱して最後には死んでしまうのだという。

 

「何てことだ……!」


 俺が出会ったあのキツネは、俺がパンを投げた途端に怒り始めた。あの時はただ訳が分からなかったが、今ならその理由がよく分かる。

 パンをやったのは、何の悪意もなく、ただコミュニケーションをとりたい、そんな気持ちからだった。

 愕然とするしかなかった。


 俺がやったことは、あのキツネを殺す行為だったのだ。


 パンを投げた時、あのキツネが俺に向かって吠える姿を思い出した。姿だけではなく、あの時キツネが発した吠える声まで、鮮明に頭に浮かんだ。


 “グァウ! ガウガウッ!”


 あれは……。


 ――おい! 何をやってる!


 きっと、こう言っていたのではないか。

 そしてその後の、吠える声……。


 “グァウ!”


 ――拾え!


 “グァウッ!”


 ――拾うんだ!


 俺の頭の中で、言葉がそう訳される。自分がやったことがとんでもない間違いだったと理解した今では、そうとしか思えなかった。

 あのキツネが何故怒ったのか、分かった。

 人間の食べ物が自分の身体に合わない、無暗に口にすれば命を落とすことになると、あいつは分かっていたんだ。だからパンを投げた俺に怒り、吠えた。

 それから、あのキツネが一定の距離を保ったまま、それ以上は俺に近づこうとしなかったのを思い出した。あれは警戒していたからじゃなく、俺に感染症を伝播させないようにするためだった……そう思った。

 人間と野生動物は、常に一定の線引きを保っておかなければならない。

 あのキツネは、そのことを理解していたんだ。俺がその線を踏み越えることをしでかしたから、俺を叱ったんだ。


「悪いことしたな……」


 俺はあのキツネに、嫌みったらしく『可愛くない』とか言っちまった。

 完全に俺が悪かったと確信した。もしあいつが俺のやったパンを食っていたら、俺はあのキツネを殺していたに違いない。

 もう一度会いたい……会って、あのキツネに謝らなければ。その晩、俺はただそう願いつつベッドに横になった。



  ◎  ◎  ◎



 翌日の昼休みも、俺は昨日と同様にベンチに腰掛けて焼きそばパンを食っていた。

 もう一度、あのキツネが現れないだろうかと思って、幾度か辺りを見渡した。でも、俺の目に映るのは人気のない庭園の風景だけだ。

 

「ふう……」


 人と話せるキツネとの出会い、つい昨日体験したばかりの摩訶不思議な出来事について、俺はある結論を見出していた。

 あのキツネは……もう二度と俺の前に現れることはない。そもそも、あいつは実際には存在しないのではないか。あの出来事自体が、俺の頭の中でのみ起きた虚構のようなもの……そう考えていたのだ。

 だってそうだろ、人と話せるキツネなんかいるわけがない。

 あいつは、俺の間違いを正すために現れた幻。野生動物に餌付けしてはいけないということを教えるためにやってきた、幻影のような存在……そう思っていた。

 役目を終えた以上、もうあいつは来ない。

 そう思いながら俺は、黙々と焼きそばパンを食い続けていた。

 と、その時だ。視界の端で何かが動いた。


「っ!」


 俺は息を飲み、振り向いた。

 ――枯草の塊が、風に吹かれて転がっていた。

 盛大にため息をつく。

  

「くそ……」


 ほんの少しでも期待しちまって、バカを見た気分だった。

 やけ食いのように、一気に焼きそばパンを平らげる。空を見上げて、またため息をついた。

 

 なあ、もう一度顔見せてくれないか。お前に言いたいことがあるんだ。


 ああそうさ、実在しない存在だったのではと思いつつも、俺はもう一度あのキツネと会いたがっていたんだ。けど、きっとそれは叶わぬ願い……改めて自分にそう言い聞かせつつ、俺はベンチから腰を上げようとした。

 その時だ。

 視界の端でまた何かが動いた、でも俺は振り返らない。さっきと同じように、どうせ枯草だろうと思ったからだ。

 だが、


「くあっ」


 短く甲高いその鳴き声に、俺は弾かれるように振り返った。

 犬が発する声じゃないのは分かった。ということは……芽生えた期待は、裏切られはしなかった。


「お前……!」


 すらりとして美しいフォルム、陽の光に輝くキツネ色の毛並み、思わず愛でたくなるようなもふもふの尻尾。それに何より、俺から一定の距離を隔てた場所でお座りをし、こちらをじっと見つめるその仕草を見て、俺は確信した。

 いつの間にか現れたのは、昨日のキツネだった。何度も何度も目を凝らして、俺はあいつが幻じゃないことを確信した。

 また会えた……というより、会いに来てくれたことへの嬉しさに胸が満たされる。

 笑みが浮かぶ、けど俺はすぐに思い出した。何よりも先に、あいつに言わなければならないことがあるんだ。


「あのさ、俺……昨日あの後、何でお前が怒ったのか考えたんだ」


 キツネは尻尾を揺らして、俺をじっと見つめていた。


「そんでネットで調べてみて……俺達人間の安易な餌付けで、お前達が命を落としているってことを知った。昨日俺がやったことは、絶対にやっちゃいけないことだったって分かった……あんなことはもう絶対やらない、約束するよ」


「くあっ」と、キツネはまた短くて甲高い声を発した。


 ――分かってくれたのか?


 もちろん確証なんてないんだが、キツネがそう言った気がした。

 俺は頷いて、


「可愛くないだなんて言って悪かった、取り消すよ」


 キツネが頷いた。

 お座りの体制から立ち上がり、俺に背を向けてどこかへ行こうとする。一体どこへ? そう思った時、


「くあっ」


 俺を振り返り、また鳴いた。


 ――来てくれ。


 そしてキツネはまた、歩みを進めていく。


「ついて来いってか?」


 怪訝に感じつつ、俺はキツネの後を追い始めた。

 そこは庭園の奥に位置する場所で、人がさほど立ち入らない場所だった。この庭園の創立当時に植えられた大きなイチイの木があり、その近くには年季が入った石碑が立っていた。

 イチイ以外にも多くの木が植えられ、森の中にいるような気分になりそうな場所――キツネが一瞬振り返った。きっと、俺がちゃんとついて来ているか確かめたんだろう。

 そして、キツネが足を止めた。


「これは……」


 そこには、盛り上がった土の山が二つあった。さほど古くはなさそうで、真ん中には名前も分からない花が添えられていた。

 俺が視線を向けると、キツネは数メートル離れた場所でお座りをし、土の山を見つめていた。

 これが何なのか。その答えは、今にも涙をこぼしそうなキツネの瞳が語っていた。

 俺は恐る恐る、問うた。


「お前の……家族か?」


 キツネは何も言わず、俺の方を見ることもなく、ただ小さく頷いた。

 ふと、その時……俺の頭にある推測が浮かび上がった。

 ここに安置されているのは、このキツネの家族……俺が記事で読んだあのヒグマみたいに、きっと人間の無責任な行動が原因で命を……。

 推測の域を出ないことではあった。でも、そう考えると合点がいく。

 このキツネが俺の餌付けにあんなに怒ったのも、そもそも、こいつが人間と話す能力を得たのも……家族の死を無駄にしないためなのではないだろうか。

 こいつにとって本来、人間は家族を奪った憎むべき相手だ。だが、人間を恨んでも家族は戻ってこない。ならば、家族と同じような目に遭う仲間を減らせれば。そして、それを俺達人間に訴えかけることができれば……このキツネは、そう思ったのではないだろうか。

 言葉が出なくなった。

 俺は近くに咲いていた花を摘んで、その墓に、このキツネの家族達に捧げた。

 両手を合わせて、目を閉じる。


「ごめんな」


 人と話せるキツネと、ここに眠るその家族達。両方に向けた言葉だった。


「くあっ」


 キツネの鳴き声に目を開ける。


 ――ありがとう。


 心なしか、キツネの顔に笑みが浮かんでいるように見えた。



  ◎  ◎  ◎



「それじゃ俺、そろそろ仕事に戻るよ」


 キツネと一緒にベンチが設置された場所まで戻ってきた俺は、腕時計を瞥見しつつ告げた。

 昼の休憩時間ももう終わる。

 

「くあっ」


 ――そうか。


 何だろう、キツネはただ鳴いているだけなのに、もうこいつの言っていることが手に取るように分かる気がする。正気を疑われそうだから、人になんて言えないけどな。

 

「それじゃ、またな」


 キツネが頷く。

 それを見て、俺は浄水場へと駆け出した。その時だ。


「くあっ」


 俺の背中に向かって発せられた鳴き声。足を止めて振り返ると、キツネはお座りをして尻尾をパタパタさせつつ、じっと俺を見つめていた。

 今なんて言ったのか、それも俺の頭の中で翻訳される。


「……ああ、ありがとな」


 俺はそう返事をしてキツネに手を振り、浄水場へと駆け出した。

 さて、昼休みももう終わりだ。昨日やらかしたミスを取り返すためにも、しっかり働かないとな。ちょっと変わった友達もできたことだし、頑張れそうだ。


 ちなみに俺はその後、『庭園でキツネを見たことはあるか』という質問を同僚や上司の数人にしてみたのだが、誰からも『見たことがない』という返答しか戻ってこなかった。





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