第四幕: 胡蝶の夢

 やがて私は鏡の中で、私自身が黒猫になっているのを見た。


 この家の真の主、清らかな魂を宿す黒猫。


 私の人間としての記憶は、猫としての長い生の中で、ただの夢のようなものだった。

 そうか、私は黒猫だったのだ。

 私は自分の謎を解き明かし、猫としての生を受け入れることにした。


 鏡は私に新しい現実を告げていた。私がこれまで見てきた夢は、人間の姿をした幻影に過ぎなかった。私の真の存在はこの家にあり、夜の闇を支配する黒猫としての生を送ってきたのだ。私は、私の記憶という名の夢から覚め、夜の静寂の中で、この家の守り神としての役割を全うする。私は、夜の闇に紛れて、この家を守り続ける。


 私は、この家の壁にかけられた肖像画の中で生きる人々の秘密を見守り、窓の外で鳴く黒猫の不吉な鳴き声を聞く。私はこの家の中で起こるすべてのことを知っている。私は、この家の物語の一部なのだ。


 私の新しい生は、人間の世界からは切り離されている。しかし、私はこの家にとっては不可欠な存在だ。私は、この家に住む家族を見守り、彼らが抱える恐怖と秘密を共有する。私は、この家の暗い隅々に潜む影と一体となり、家族がこの家を出て行く日まで、ずっと彼らと共にいる。


 私の魂は、私の黒い猫の体に同化し、私はこの家の永遠の住人となった。私は、私が見た夢の中での人生を忘れ、猫としての新しい人生を受け入れる。私は私が守るこの家と共に、夜の闇に紛れて永遠に生き続けるのだ。


(了)

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【短編小説】黒猫と交錯する幻影詩人の眼差し 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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