第2話 妻の話し

夫とは、社内恋愛で結婚した。

仕事の出来る先輩で、私はいつも憧れていた。


一緒にプロジェクトを進めていくうちに親しくなり、同僚達には内緒で付き合うようになった。


私は彼が好きだった。


彼はとても忙しかったので、私は無理して、結婚まで漕ぎ着けた。

これで、大切な彼といつでも一緒にいられると思うと、安心した。


私は会社を辞めて、近所の小さなIT企業でパートタイムで働くようになった。


彼は、やはり仕事三昧で、段々、二人はすれ違うようになってしまった。


彼もそれを感じていて、たまの休日にも自宅にこもって、一人で新聞を読み耽っていた。


私は、新聞が憎くて憎くて、彼から新聞を取り上げたかったが、彼は頑なに拒否した。


私の心は傷付いていた。


わざと、私と関わらないように、あんなに新聞にこだわるふりをして。


そんな彼が、次第にちっぽけな男に思えて来て、そんな思いを抱く自分に、がっかりしていた。


そんな時、彼の栄転話を聞く。


私は、これで心機一転、また仲良くやっていける、と喜んだ。


ところが、彼はあの大量の新聞を、新しい住まいに持って行くというのだ!

私は耳を疑った。そこまでして、私に嫌がらせをするなんて…。


もう、別れよう。

新聞と結婚すればいい。


私は、捨てられるものを見極め、その決意を固めたのだ。


fin




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大切なもの つき @tsuki1207

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