第2話
翌日、私は午前六時頃に目が覚めた。
まず、洗面所に行き、歯磨きをする。歯ブラシに磨き粉をつけて、シャコシャコと動かす。一通りしたら、コップに入れた水で何回かすすいだ。ついでに、歯ブラシなども水洗いする。ぬるま湯で洗顔もした。最後に、髪の毛をブラシで梳かす。軽くしたら、自室に戻る。
タンスから黒の厚手のトレーナーに黒のジャージのズボン、緑色の靴下を出した。手早く着替えて台所に向かったのだった。
台所にて、電気ケトルに水を入れたり、食器棚からカップやお皿を出す。次に冷蔵庫から、食パンやバター、ジャムなども取り出した。フライパンに油を引いて、火に掛ける。卵を四つ割り入れた。ベーコンも四枚、敷いた。水を加えて、弱火にして。蓋もした。
待っている間に、食パンをオーブントースターに入れた。レバーを捻って時間を設定する。二枚を入れたが。再び、野菜室からレタスやきゅうり、サラダチキンを出した。手で雑にレタスをちぎり、きゅうりも包丁で斜め切りにする。サラダチキンは手で解した。小皿にレタスを敷き詰めて、きゅうりを並べる。最後にサラダチキンを載せた。胡麻ドレッシングを掛けて。簡単サラダができた。
次に、食パンも焼ける。バターを塗り、父の分はマーマレード、自身の分はいちごジャムにした。最後にベーコンエッグも完成したので。フライパンから水を捨てて、フライ返しでお皿に盛り付ける。良い具合に黄身や白身が固まっていた。
父に呼びかけたら、寝室から出てくる。
「朝ご飯、できたよ!」
「……ん、そうか。良い匂いがしてるな」
「うん、顔だけでも洗う?」
「そうする」
父は頷くと、洗面所に向かった。私は父の分と自身の分を昨日と同じく、テーブルに並べる。父が台所に戻ってきた。一緒に朝食にするのだった。
夕方になり、昨夜に父がリクエストしていた肉じゃがやお味噌汁を作ろうと動き始めた。まず、冷蔵庫を開けて。材料のチェックだ。肉じゃがに使うお醤油、食用酒、お砂糖、みりんはまだある。ほんだしやお味噌もだ。
次にお肉――牛肉を冷凍室にないかも見た。一応、買ってこなくてもあるかな。野菜室もチェックする。
人参、玉ねぎ、じゃがいも。ちゃんとあるな、最後に。しらたきもとい、糸こんにゃくや乾燥ワカメ、お豆腐もだ。これらもある。よし、夕食を作りますか。私は腕まくりをしたのだった。
まず、糸こんにゃくを小鍋に入れた。水も加えて、湯がく。こうすると臭みなどが取れるらしい。そうしている間に、牛細切れ肉をレンチンする。まあ、解凍だが。それをしながら、野菜類を切り刻んだ。
人参やじゃがいもは皮を剥いて乱切りにする。じゃがいもをボウルに入れ、水に晒す。アク抜きだ。玉ねぎも皮を剥き、上や下の部分を切り落とす。半分に切ったら、薄切りにした。
よし、野菜類はひとまずできた。糸こんにゃくの小鍋も沸騰しだす。火を切って、ザルに上げる。流し台に持って行って軽く水で洗った。
牛肉の解凍が完了した。出したら、まな板に置いた。包丁で一口大に切り分ける。ボウルに入れたら、お鍋をキッチン棚から出した。コンロに持って行き、火に掛ける。油を引いて肉を投入。まずは菜箸で炒めた。ひとまず、熱が通ったら。玉ねぎを投入して炒める。
次にじゃがいも、人参を加えた。さらに炒めて、糸こんにゃくも入れた。ジューと音がして湯気が立つ。油が馴染んできたら、水を投入した。強火の状態で煮込んだ。
具材に熱が通ったら、食用酒、お砂糖を加えた。煮立ってくると中火にして、アクを取る。次にお醤油を投入して。落し蓋をして、煮汁が半分くらいになるまでは煮込む。
その間にもう一つ、お鍋を出した。水を入れ、ほんだしを加える。火にかけたら、乾燥ワカメをボウルに入れた。水を入れて戻す。お豆腐も蓋を開け、包丁で四角に切った。さすがに手のひらに載せて、切る真似はできない。ケースの中でするのが精一杯だ。
だし汁が煮立ってきたら、手早くお豆腐を入れる。乾燥ワカメも水を捨てた。加えて、火を弱火にする。お味噌を持ってきて、お玉で掬う。お鍋の中に入れて菜箸で溶かす。できたら、軽く混ぜた。沸騰する前に火を止める。肉じゃがの鍋もチェックした。
煮汁が半分より、ちょっと少ないくらいまで減っている。こちらの火も切った。あ、ご飯は昼間に炊いたから。あるかなと考える。炊飯器の蓋を開けたら、何とか足りる量だった。
お椀や小鉢、お茶碗を出す。まず、肉じゃがを盛り付けて。次にお味噌汁、最後にご飯だ。うーむ、味付けは薄めにしたが。父が食べてくれるかな。心配しながらも呼んだのだった。
父が通常通り、居間からやってきた。心なしか、機嫌がいい。
「……良い匂いがするなあ」
「うん、今日はね。肉じゃがとお味噌汁だよ」
「ほう、ワシの頼んだ通りにしてくれたか」
「一応、作ってはみたよ。ただ、父さんの口に合うかは分からないけど」
「いやあ、外国のもんよりは。和食の方がええわい」
父は笑いながら、言った。それもそうかと思う。
私はお盆にご飯などを載せて、テーブルに並べていく。父の分、自身の分もそうした。
「んじゃ、食べるか」
「うん」
互いに頷いて、椅子に座った。お箸を取り、食前の挨拶をして。静かに食事を始めた。
父は黙々と肉じゃがを特に食べる。私も口に運んだ。
うん、味は薄いが。まずまずかな。お味噌汁も合格点にはなるか。ご飯を一緒に食べながら、ふむと頷いた。
父はいつの間にやら完食していたのだった。
春の雨 入江 涼子 @irie05
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