第7夜 貧乏と欲望の狭間 ムレスナティー

身内と、知人の茶道のお茶会に顔を出した。


その帰りに、紅茶の飲み放題、の看板が目に留まった。


石窯で焼くピザ屋の、ドリンクメニューに載っていたのだ。

正確にはピザ屋ではなく、イタリアンレストランか。


味見で一口ずつシェア注文したパスタは、ブチブチと縮れていて、まるで茹で損ねたラーメンのような歯応えであった。

お世辞にも美味しいとは言えない。


しかしピザはとても美味しかったので、ピザ屋と呼ぶ事にする。


そのピザ屋のメニューにあった紅茶とは、ムレスナティーである。


スリランカの高級セイロンティーブランドだ。


飲み放題のフレーバーティーでは珍しく、花や果実など全て、天然の香料を茶葉にブレンドしている。


私は、もうお抹茶を一服してきて、ランチの予算が少なかった為、その飲み放題を注文するか、かなり迷った。


だが、フルーツや花、キャラメル等、数々の魅惑のフレーバー陣に、私の欲望は抗えなかった。


貧乏人だって、たまには茶三昧も良いじゃあないか。プチ贅沢といきましょう。


追加で590円也。早速注文をし、先ずはホットのメロンフレーバーからいただいてみる。


あれ、こんなに薄味なものか…。


なんと、私は安物の人口香料に慣れてしまっていて、天然フレーバーが分かりずらかったのだ。


それから、立て続けにティーをお代わりしてみた。


ウィーンのバラ、白桃アールグレイ、いちじくキャラメル…等々。


有難いことに、段々と感覚を取り戻し、フレーバーは香り高く美味しく感じられる様になっていった。


あぁ、良かった。


紅茶の飲み放題を思う存分に堪能している所へ、随分と待たされたピザが運ばれて来た。


そして熱々のピザを食したら、又、舌が馬鹿になり、紅茶の天然フレーバーが薄くなってしまった。


あーぁ、しまった。


既にピザの事など眼中に無かった私は、ただ、ムレスナティーを楽しみたいのだ!


折角、夢の飲み放題なのだ!


と、心中でモッタイナイオバケが叫んだ。


しかしピザは中々に美味しかった。

そこで、ピザに合わせて、途中からアイス珈琲を飲み始め、最後はエスプレッソで締めた。


結局、ティーや珈琲を何杯もお代わりし、代金の元を余裕で取り、ピザもたらふく食して、良いランチタイムとなった。


私は大きな水風船のようにタプタプするお腹をさすりながら、ケチらずに飲み放題を選択して、良かった。と周りに悟られず、独り幸せを噛み締めた。


よくやった、注文時の私!


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真夜中の飯テロ つき @tsuki1207

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