怪奇日食の本領にして本懐とは
身の丈の数倍どころの話ではない巨大な超高層ビルに押しつぶされた三人。
一般的な感性を持つ人間や、彼ら彼女らの本性を知らない人物であるならば、心配するのが道理であろう。
だが如何せん、この学園において常識なんてものはないし、常識ほど役に立たないものはない。
そんなもんは獣風情にでも食わせとけ。
「⋯⋯⋯⋯あっぶね、死ぬかと思ったわ」
「ひゅう!まるでアクションゲームだぜ」
いくらビルと言えどその側面全てが真っ平らというわけではない。
部屋の空間や外装といった凹凸が存在する。
その隙間に滑り込めば大きな怪我はないという理論だ。
しかし、その判断が即座にできたのは普段から荒事を専門としている彼だけであり、残りの二人は呆然と立ち尽くしていた。
理論は所詮、理論でしかなく、発想は思いつけなければ意味がないし、作戦は実行しなければ更に無駄である。
当然、その反応は何らおかしくはないし、この状況で即座に助かる方法が思いついた彼のほうが異常だろう。
だが彼は、呆けている二人の首根っこを掴んで移動した。
その後は武器として扱っている巨大な十字化でガラス片などの被害を防ぎつつ、尚且つ
少し前まで敵対していた相手を守るべき仲間と判断したのは、彼の職業柄か、それもと往来の気質なのかは判断できないが。
「ぎゃはは、まさか俺ちゃんが風紀委員長に助けられるだなんてなぁ?」
「あはっ、私も思わなかったなー味方になった風紀委員長がこんなに優しいだなんてねっ!」
「当たり前だろ、てめえらみたいなやつから守るのが仕事だからな⋯⋯で、どうするんだ?多分あれは死んだとは思ってないぞ」
なにせ下手に攻撃しようとしても相手の間合いに入ってしまう、かといって距離を離して攻撃しても決定打が存在しないし、間合いを詰められてしまう。
八方塞がりで二進も三進もいかない、負けイベントのボスを倒すような状況である。
「いや、いい。これで良い」
だが、彼女はそう言って笑った。
沈痛な面持ちの中で、絶望的な状況の中で、それでも彼女だけが笑っていた。
「むしろこの状況のほうが私にとって有利に働くねっ!なにしろ少しだけ時間が必要だからさぁ?」
「へぇ、そこまで勿体ぶるんだったら見せてもらおうか?」
風紀委員長は煽るようにそう言い、空鳴はその発言に対して、笑う様に、そして嗤うように返す。
「さぁさ皆々様!
するりと風紀委員長の懐から猫のように抜け出し、芝居のような言い回しの説明口調で、口角を上げ高らかに叫んだ。
「
彼女は何処からともなく、2つの物を取り出した。
片方は本来ならば工事に使われるであろう釘打ち機、片方はアサルトライフルに使われる七発の弾丸、空鳴はその二つを自身の頭上で叩き合わせ、横倒しのマンションの一室に金属音が鳴り響く。
グズグズと、深淵が泡立つように金属と黒い液体が混ざり合う。
「更に更に弾薬無制限化の能力である
混ざり合っている『それ』に、マガジンを握った手を投げつけるように突っ込んで、彼女は名付けを行う。
「名付けるならば
劇場でみんなと悪手、なーんて!
――――――――――――――――――――
あとがき
是成は
虚言廻しは名乗らない 人類愛好委員会 @kataritezaregoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。虚言廻しは名乗らないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます