あなたのお母さんにして下さい。(バブあり)

Danzig

第1話


とあるオフィス

仕事の最中に推し活をする女性


中島:(傍白)あぁーあ、経理なんて仕事、やるんじゃなかったわ

中島:(傍白)うちの重役はホント頭が固いんだから・・・

中島:(傍白)「紙の書類じゃないとダメ」だとか、「ハンコがなきゃダメ」だとか、「経理はリモートはダメ」だとか・・・

中島:(傍白)もっと他の会社を見習って、ITを活用すればいいじゃないの!


中島:(傍白)それに、社員からは、毎月、毎月、「申請の仕方が分からない」とか、「面倒だから代わりにやってくれ」とか、「申請書はエクセルじゃダメなのか」とか・・・

中島:(傍白)何度同じ説明すればいいのよ! 社会人なんだから、決められた事は、決められた通りに自分でやりなさいよ!

中島:(傍白)営業からは、経理なんて非生産部門だの、俺達がお前たちの給料を稼いで来てやってんだとか言われるし・・・

中島:(傍白)あんた達が売って来たお金は、誰が処理してると思ってるのよ。 ったく。

中島:(傍白)おまけに来客が来たらお茶出してくれとか、そりゃここは給湯室に近いけど、私は経理だっつーの

中島:(傍白)はぁ・・・ホント心身ともにくたくた・・・


中島:(傍白)でもいいの、私には推し様がいるから、大丈夫!

中島:(傍白)オフィスの机に飾ったこの写真

中島:(傍白)私の癒しにして、モチベーションの源(みなもと)


吉永:あ、いたいた

吉永:中島...ちょとこれ頼める?


中島:(傍白)あぁ、ホント癒されるわ、私の推し様

中島:(傍白)彼の声を聴くだけで、どんな辛い仕事だって我慢できる。

中島:(傍白)そう、私の最推し

中島:(傍白)舞台俳優にして、人気声優

中島:(傍白)その名は、慶永圭介(よしながけいすけ)、愛称は「よっしー」


吉永:中島?


中島:(傍白)イケメンにして美声、ダンディでいて愛らしい生き物

中島:(傍白)かわいい、なんてかわいい生き物なの!

中島:(傍白)私は推し様のおかげで生きていられる

中島:(傍白)ううん、私が生きるのは、全て推し様の為

中島:(傍白)あぁ、私のよっしー

中島:(傍白)彼の為なら、私は何だって出来る、何にだってなれるわ


吉永:ちょっと、中島


中島:何よ、吉永、邪魔しないでくれる?


吉永:仕事中に何やってんだよ


中島:何やってるって、見て分かんないの? 推し活よ、お・し・か・つ!


吉永:・・・あっそ、まぁなんでもいいや、ちょっと、これ頼める?


中島:何これ?


吉永:何って、立替払いの清算申請♪


中島:あー、今月の提出期限は過ぎてるから、来月ね


吉永:そこを何とかさ、今月中に頼むよ・・・


中島:ダメよ


吉永:今月中に清算出来ないと辛いんだよ、な、だから今回だけ・・・な、な。


中島:ったく、「何が今回だけ」よ。 先月もだったでしょ


吉永:まぁ、まぁ、俺と中島の仲じゃない


中島:どんな仲よ


吉永:俺達、同期入社♪


中島:それだけでしょ


吉永:そうだけど、それも何かの縁でしょ

吉永:ほら、よく言うだろ、同期入社も他生(たしょう)の縁って


中島:言わないわよ、そんな事


吉永:ホントに頼むよ、な、この通り、一生に一回!


中島:何?一生に一回って、それを言うなら一生に一度でしょ?


吉永:一生に一回!


中島:ふぅ、良く分からないけど、本当に一生に一回なのね。


吉永:一生に一回目のお願い。


中島:ブァカ!

中島:あんたのお願いなんて、これまでに何回も聞いてあげてるでしょ!


吉永:そこをなんとか、俺、中島の事、大好きだから!


中島:キモッ

中島:ったく・・・もう、本当に今回だけよ


吉永:ありがとう中島、恩に着るよ


中島:はいはい

中島:はぁ・・・こういう人の相手は、ホント疲れるわ

中島:今日は早く帰って「よっしー」への愛で私を満たさなきゃ


吉永:よっしーって?


中島:え? 私の推し様ですが、何か?


吉永:俺も「よっしー」なんだよ、吉永だから「よっしー」って昔から言われてた


中島:あんたなんかと一緒にするんじゃないわよ、同じ「よしなが」でも、漢字が違うでしょ。

中島;あんたの「よし」は、不吉とか末吉とかおみくじの「きち」で、

中島:よっしーの「よし」は、慶応大学の「けい」、武蔵坊弁慶の「けい」、慶長大判の「けい」なの、

中島:あんたとは格が違うのよ、格が。


吉永:そう? あんまり変わんないと思うけどな


中島:全然違うのよ


吉永:ふーん・・・・で、この写真が、その「よっしー」って人?


中島:そうよ、イケメン俳優にして美声の声優、慶永圭介様よ

中島:あんまり汚い手で触らないでよ


吉永:なんだ、オヤジじゃん


中島:失礼なこと言わないで頂戴、よっしーはまだ44歳なのよ

中島:それくらいの年齢にならないと、出せない色気やダンディズムがあるのよ


中島:そう・・・・若い子には決して出す事の出来ない、落ち着きと艶っぽさ・・・

中島:あぁ、よっしー・・・


吉永:そんな事言っても、オヤジはオヤジだしなぁ


中島:あんたもしつこいわね、何よ、さっきから、人の推し様をオヤジ、オヤジって


吉永:いや、だから、オヤジなんだって


中島:何よ? どういう事?


吉永:だ・か・ら、この人、俺のオヤジ、おれ、この人の子ども


中島:それ以上ふざけると怒るわよ


吉永:ふざけてないって、名前だって同じ「よしなが」だろ?


中島:漢字が違うじゃない


吉永:たぶんオヤジは芸名だよ、本名でやってるって言ってたけど、漢字を変えてるとは思わなかったわ


中島:そんな・・・だって・・・

中島:ね、年齢だって、合わないじゃないの

中島:よっしーはまだ44歳なのよ、あんたみたいな大きな子どもがいる訳ないじゃない


吉永:俺は、オヤジが二十歳の時の子だからなぁ

吉永:今俺が24だから、オヤジが44


中島:そんなの嘘よ、だって、よっしーは奥さんいないって言ってたもん


吉永:俺の母さんは、俺が小さい時に死んじゃったんだよ

吉永:だから、オヤジに奥さんがいないってのは、間違いじゃない


中島:・・・・・ほ・・・本当なの?


吉永:こんな事で嘘を言ったって、直ぐバレるし、意味ないだろ


中島:じゃぁ、どうして今まで黙ってたのよ!


吉永:ホントに知らなかったんだって

吉永:オヤジはちっともテレビに出ないからさ、てっきり売れない役者だと思ってたんだよ


中島:よっしーは舞台俳優だし、声優だから、テレビに顔は出ないのよ


吉永:そっか、ははは、オヤジも意外とモテるんだな


中島:バッカじゃないの! よっしーのファンが世の中にどれだけいると思ってるのよ


吉永:へー、そんなに人気があったんだ

吉永:オヤジ、家ではあんまり仕事の話、しないからなぁ


中島:・・・それじゃ今、あんたは、よっしーと二人暮らしなの?


吉永:あぁ、そうだよ

吉永:今というか、子どもの頃からずっと二人で暮らしてたよ

吉永:よっしーとよっしーの二人暮らし、ははは


中島:バカな事いうと、刺すわよ


吉永:厳しいな・・・


中島:食事とか洗濯とかはどうしてるの?


吉永:俺が大学生になるまでは、ほとんどオヤジがやってたよ

吉永:うちはビンボーだったからさ、毎日オヤジが飯作ってたよ、外食なんて殆どした事なかったな


中島:(傍白)確かに、よっしーはプライベートを殆ど公開していないミステリアスな御方(おかた)

中島:(傍白)そして、そこも魅力なのよねぇ・・・


中島:(傍白)あぁ・・・それにしても流石はよっしー。

中島:(傍白)私生活も真面目だって聞いてたけど、誠実で責任感があって、しかも健気(けなげ)

中島:(傍白)あなたの可愛らしさは、そういうところから来ていたのね

中島:(傍白)あぁ、よっしー、私はあなたを推していて、本当に良かった、やっぱり貴方は私の誇り


吉永:そういえば最近、俺に手が掛からなくなったから、婚活でもしようかなぁって言ってたなぁ


中島:こ、婚活!!


吉永:あぁ、よく知らないけど、若い後輩にマッチングアプリを薦められたって言ってたわ

吉永:これでお前より先に嫁さん見つけようかなぁ・・・だってさ


中島:(傍白)よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活・・・


吉永:まぁ、オヤジは意外とそういうのを面倒臭がるから、どうせアプリなんかやらないだろうけどな


中島:(傍白)よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活・・・・


吉永:おい、聞いてるか?


中島:(傍白)よっしーが婚活なんてショックだわ・・・でも、彼の年齢的にはそうよねぇ・・・

中島:(傍白)今までずっと一人で子どもを育てて来たんだもん、そろそろいい人を見つけたくもなるわよね・・・


吉永:中島?


中島:(傍白)でも、よりにもよってマッチングアプリって・・・

中島:(傍白)いくら、人から進められたからって、マッチングアプリって・・・

中島:(傍白)私達ファンは、ずっとよっしーを見て来たのよ、よっしーの魅力を誰よりも知っているのよ

中島:(傍白)それをどこの馬の骨とも分からないような、よっしーの魅力のかけらも知らないような、一般人とだなんて・・・


吉永:おい、聞いてんのか、中島


中島:(傍白)でも、だからといって、女優や声優となら許せるの? 他のファンとだったら許せるの?

中島:(傍白)それはそれで嫌よね、そんなんだったら、いっその事、カタギの一般人の方が・・・・


吉永:おーい・・・・中島ぁ・・・聞いてねぇな。

吉永:まぁいいや、じゃぁその清算頼んだよ


中島:(傍白)いや、待って待って・・・私がマッチングアプリで偶然を装って、よっしーと知り合うってのはありよね?

中島:(傍白)そうよね? ありよね?


中島:(傍白)よっしーがマッチングアプリをするなら、絶対、彼だと気づかれないハンドル名にするはず

中島:(傍白)そのハンドルネームを息子のあいつから聞き出せば、私が他の人よりも一歩も二歩もリード出来る!

中島:(傍白)いやいや、それ以上に、よっしーがマッチングアプリをする事なんて、ファンは誰も知らない筈。

中島:(傍白)だからそれを知っている私は、みんなよりも百歩も二百歩もリード出来るじゃない! クククク



中島:吉永、それで、そのマッチングアプリってどんな名前・・・・って、あれ? 吉永? どこ行ったの?

中島:ったく急にいなくなるなんて、失礼な奴ね


中島:(傍白)でも、よっしーがマッチングアプリやるなら、私は何(なん)アカ作るべきか・・・

中島:(傍白)スマホも買わなきゃね・・・とりあえず10台くらい買っておけばいいかな・・・いや、15台は要るか・・・

中島:(傍白)いやいや、でもスタートダッシュが肝心だから、少ないアカウントで確実にいくか・・うーん、迷うところよね。



中島:あれ? いや、待って待って、マッチングアプリで近づかなくたって、私は、よっしーの息子が同期にいるのよ。

中島:そうよ、これ以上のアドバンテージは無いじゃない!

中島:昔から「何とかが欲しけりゃ、まず馬を射よ」って言うわよね・・・まずは外堀から埋めて行いけば、いずれはよっしーに

中島:ククク、我ながら完璧だわ


中島:よし、まずは吉永を・・・

中島:あ、でも、私が「よっしー狙い」って事はバレないようにしなきゃね・・・


(吉永のデスクに来た中島)


中島:吉永君♪


吉永:ん? どうした中島


中島:さっきのあなたの仮払い申請、やっておいたわよ


吉永:おお!ありがとう、助かるよ。 今月ホントに厳しかったんだ


中島:提出期限が過ぎてたから、ねじ込むのは大変だったのよ


吉永:そっか、無理言ってゴメンな


中島:何言ってるのよ、水臭いわね。 私と吉永君の仲じゃない


吉永:そうか・・ありがとう


中島:私達、同期入社だもんね


吉永:そ・・・そうだな


中島:吉永君、他に何か困っている事とかない?


吉永:困ってる事・・・・

吉永:課長の愚痴が面倒くさいとか


中島:そういう事じゃなくて


吉永:どういう事?


中島:私に出来る事よ


吉永:中島に?


中島:そう、何かあるでしょ?


吉永:飲み会の領収書を落として欲しい


中島:そういうのは落ちません。


吉永:残念・・・・


中島:ねぇ、何かあるでしょ

中島:毎日の食事とか洗濯とか大変じゃない?


吉永:まぁ、男所帯だから、そういうのがあると言えばあるな

吉永:でも、母親が居ないからって、そういうのを他の人に頼むって訳にはいかないだろ


中島:(傍白)そうか・・・よっしーと一緒になるって事は、吉永の母親になるって事か・・・


中島:・・・・吉永君


吉永:ん?


中島:なんならさぁ・・・・

中島:私があなたのお母さんになってあげてもいいのよ


吉永:は?


中島:私さぁ、案外いい母親になれると思うんだよね


吉永:何の話してるの?


中島:だから、あなたのお母さんになってあげるって言ってんのよ


吉永:まぁお前の事だから、それは何かのネタなんだろうけど、ごめんちょっと分からない。


中島:ネタとか、そうじゃないのよ


吉永:そうなの?


中島:そうよ・・・もう、さっさとあんたのお母さんにさせなさいよ


吉永:それは今流行りのママ活ってやつか?


中島:違うに決まってるでしょ!


吉永:どうしたんだよ、さっきから


中島:・・・・・それは・・


吉永:何かあったのか?


中島:・・・吉永君、私をあなたのお母さんにさせてください!


吉永:はははは、何だよそれ、何かの罰ゲームでもさせられてるのか?


中島:何よ、笑いたければ、笑えばいいじゃない

中島:私は真剣なのよ


吉永:中島・・・


中島:私はね、あんたが思っているより、ずっと真剣なんだら

中島:ずっと、ずっと真剣なんだから

中島:あんたなんかには、私の気持ちなんて分かんないわよ


吉永:ご、ごめん・・・

吉永:よく分からないけど、なんか傷つけちゃったなら謝るよ


中島:・・・


吉永:そんなに俺の「家族」になりたいのか?


中島:そうよ、悪い?


吉永:いや、お前がそんなに真剣だったとは思わなかったんだ・・・悪かったよ


中島:じゃぁ、私がお母さんになるの、考えてくれる?


吉永:でも、どうして「母親」なんだ?


中島:あんたの母親じゃなきゃ、私には意味がないのよ


吉永:どうしても?


中島:どうしても!


吉永:そうか・・・わかった、じゃぁ考えてみるよ


中島:ホント!


吉永:あぁ、


中島:(傍白)あぁ、よっしー、待っていて! もうすぐよ。


吉永:でも、こういうのって、突然ってのはやっぱり抵抗があるからさ

吉永:順序といか、段階を踏んでから、考えて決めたいんだ


中島:ま、まぁそうよね


中島:(傍白)確かに、いきなり結婚って訳にも行かないし、

中島:(傍白)やっぱり段階を踏んでいかないと、よっしーもビックリしちゃうわよね


吉永:俺もこういう事って初めてだからさ

吉永:これからそういう関係になるなら、なおさら・・・


中島:確かに、普通に暮らしていれば、あんまりある事じゃないわよね


吉永:でも、あくまでも、今は、考えるって段階だからな

吉永:俺達の将来の話だから、焦ってもあれだろ


中島:まぁ、それは仕方がないわね


中島:(傍白)よっしーと結婚したら、吉永とも長い付き合いになるしね


吉永:うーん、でも何から始めればいいんだろう・・・・

吉永:やっぱり、まずは食事からかな


中島:食事?


吉永:そう、お互い酒でものんで、いろいろ話してさ、分かり合わなきゃ。


中島:確かにそうね・・・じゃぁそうしましょうか


(二人で仕事帰りに居酒屋へ)

(店の前)


吉永:とりあえず、居酒屋でいいか


中島:まぁいいんじゃない


吉永:なるべく端の席にしようか


中島:どうしてよ


吉永:こういう事って、あんまり他人に聞かれたくないだろ?


中島:まぁ・・・確かに・・・


中島:(傍白)どこでよっしーのファンに聞かれるか分からないからね

中島:(傍白)それなら居酒屋でなくてもいいじゃない・・・


(席について、注文後にビールが来る)


吉永:ふぅ・・・じゃぁ、まぁビールも来たし、とりあえず飲もうか

吉永:話はそれからでもいいだろ


中島:まぁ、そうね・・


吉永:じゃぁ、おつかれ


中島:ええ、お疲れ様


(乾杯をして飲み始める二人)

(酒を飲んで、お互い酔っぱらう)


中島:吉永ぁ、あんた、もっと飲みなさいよ


吉永:お前、大分酔ってるな


中島:酔ってない!


吉永:いや、もう十分酔ってるって・・・もうそろそろ


中島:酔ってないって言ってるでしょ


吉永:でも、もう遅いし 


中島:何言ってんのよ、まだまだこれからじゃない

中島:それに、私は酔ってなんかいないんだからね


吉永:あぁ・・そう・・


中島:あぁ・・・よっしー


吉永:ん?なに?


中島:よっしー


吉永:だから、なんだよ


中島:・・・どうして・・・


吉永:え?


中島:どうして、私じゃダメなのよ


吉永:何が?


中島:何がじゃないわよ

中島:どうして、私があなたの母親じゃダメなのかって事よ


吉永:ってか、そんな直ぐに答えなんて出せないって

吉永:それに、なんで俺の母親なんだよ


中島:別に母親じゃなきゃいけないって訳じゃないのよ


吉永:じゃぁ、なんなんだよ


中島:あんたの家族になりたいのよ


吉永:じゃぁ、何で母親なんだよ


中島:そこしかポジションが空いてないじゃない


吉永:いや、他にもあるだろ、俺の姉さんとか妹とか


中島:嫌よ、そんなの


吉永:じゃぁ、俺の嫁さんとか

吉永:それなら、まぁ、俺としてもだな・・・


中島:ありえない


吉永:即答かよ! しかも、全力否定かよ!

吉永:別にもう嫁さんでいいじゃねぇか!


中島:それじゃダメなのよ


吉永:だから、何が!


中島:だからとか、そうじゃないのよ

中島:もう、どうして分からないかな


吉永:分かんねぇよ、そんなの


中島:もう

中島:兎に角! 私をあんたのお母さんにさせなさいよ


吉永:うーん・・・そんな事言われてもなぁ


中島:ほら、お母さんって呼んでご覧


吉永:そんな急に呼べるかよ


中島:ママって言ってもいいわよ


吉永:え? マ・・ママ?


中島:そう、ママよ

中島:男の子ってそういうの好きなんでしょ?

中島:同級生が義理の母親になって同居するってラノベ、見た事あるわよ


吉永:いや、そういうのって、好き好きだし。人によるかな


中島:人はどうでもいいのよ

中島:あんたはどうなのよ、あんたは


吉永:俺は別に嫌いではないけど・・・


中島:だったら、私をママって呼びなさい


吉永:そんな・・・


中島:ほら、何恥ずかしがってるのよ


吉永:だって、ほら、ここ居酒屋だし


中島:そんな事気にしてどうするのよ

中島:居酒屋って言ったのはあんたでしょ


吉永:いや・・・まぁ・・・そうだけど・・


中島:だったら、もう、ごちゃごちゃ言わない!

中島:男らしくないぞ


吉永:そんな・・・


中島:ほら、おいで!


吉永:え?


中島:来なさい!


吉永:・・・・マ・・・ママ・・


中島:ママの前で、何を恥ずかしがってるのよ


吉永:いや、他のお客さんもいるし・・


中島:他の人がどうしたっていうの、あんたは気にし過ぎなのよ


吉永:お前は平気なのかよ


中島:人の目を気にしてたら、オタクなんて出来ないわよ

中島:オタク舐めんな


吉永:まぁ、そうか・・・

吉永:もう、こうなったら、もうやるしかないな・・・・

吉永:ママ!


中島:ほら、甘えなさい

中島:寂しかったんでしょ


吉永:え?


中島:ほら!


吉永:そういうプレイなの?・・・まぁいいか・・・

吉永:ママ、僕寂しかった(普通トーン)


中島:ダメ!


吉永:どうこが?


中島:あんた、改めて聞くと、案外いい声してるわね。


吉永:そう?


中島:ええ、イケボよ


吉永:ホント? ありがとう・・・

吉永:じゃぁ何がダメなんだよ。


中島:「バブみ」が足らない!


吉永:バ、バブみ?


中島:そう、ママに甘えるんだから、もっとバブバブしなさい


吉永:えー、バブバブって・・そんな


中島:分かってないわね。

中島:バブ味ってのは萌え要素なのよ


吉永:も、萌え要素?、


中島:そう!

中島:あんたは、イケボなんだから、イケボがバブってご覧、それがギャップ萌えなのよ。

中島:萌え要素で救える命があるの。

中島:あんたに、これが分かる?


吉永:いや、分かるような、分からないような・・・


中島:よっしーなら普通に出来るわよ


吉永:出来るかな?


中島:出来るに決まってるじゃない、舐めてんの?


吉永:いや、そういう訳じゃんないんだけど・・・ホントに俺に出来るかなぁ・・・


中島:もう、つべこべ言わずに続けるわよ、やってりゃそのうち分かるわよ。

中島:さぁ、おいで!


吉永:は、はい・・・


中島:ほら、甘えて!


吉永:ママぁ・・・僕、寂しかったでちゅ


中島:少しは良くなって来たけど、恥ずかしがって、どうするのよ?


吉永:いや、だってさ・・・いざとなると


中島:こういう事は、恥ずかしがると、恥ずかしくなるわよ

中島:それに、なり切る事がキャラへの礼儀なのよ


吉永:キャラって・・・何のキャラだよ


中島:何でもあるでしょ、タラちゃんでも、イクラちゃんでも


吉永:サザエさん限定かよ


中島:もう、とにかくもっとバブバブしなさい!


吉永:・・・・仕方ないか・・・

吉永:バブゥバブゥ・・ママぁ! 僕、僕、寂しかったでちゅ


(演者さんの都合でアドリブを続ける)


中島:もう、仕方ない子ね♪

中島:ママが一杯甘えさせてあげるわよ。


(次の日)


中島:ん・・ううう・・(目が覚める)

中島:あぁ・・頭痛い・・・昨日は飲み過ぎたかな

中島:昨日って・・・あれ? 私何してたっけ


吉永:おはよ


中島:あぁ・・おはよ・・・・

中島:って、何であんたがいるのよ


吉永:何でって・・いや、だって昨日・・・


中島:それに、何?、私、裸じゃない

中島:このベッドも、ここはどこなの?


吉永:どこってホテルだよ


中島:ホテル・・って

中島:どうして、私とあんたがホテルに居るのよ


吉永:どうしてって、昨日の事、ホントに覚えてないのか?


中島:覚えてるような、覚えてないような・・・

中島:確か居酒屋に行ったところまでは記憶にあるんだけど・・・・あっ!

中島:・・・・・あぁ・・あちゃぁ・・・


吉永:思い出したか


中島:あんた、私に変な事しなかったでしょうね


吉永:したに決まってるだろ


中島:なんでそんな事したのよ


吉永:何でって、お前が誘ったんじゃねぇか!


中島:そ・・・そりゃ、私が誘ったかもしれないけど

中島:だからって、手を出す事は無いじゃない、ちゃんと断ってよ


吉永:断れるか!

吉永:あの雰囲気で断れる男はおらんわ!

吉永:それに、こっちは一晩中、赤ちゃんプレイさせられたんだぞ


中島:え? ホント?


吉永:あぁ、スゲー恥ずかしかったんだぞ!


中島:なんか・・ゴメン・・・


吉永:ま、まぁ、意外と楽しかった事は確かだけど・・・

吉永:でも、中島にあんな趣味があるとは思わなかったよ


中島:へ? いや、ちがうの、それはちがうのよ、これは全部よっしーの為で・・・


吉永:俺の為? いやいや、お前が言い出したんだろ

吉永:でも、確かに、ずっと、よっしーよっしーって俺の名前を呼んでたな

吉永:まぁ、俺の為っていうなら、これからもそういう関係で行くのも・・・


中島:ちがうのよ、そうじゃないのよ


吉永:何が違うんだよ


中島:嫌われちゃうよぉ・・・・


吉永:大丈夫だよ、お前の趣味の事は誰にも言わないから


中島:そうじゃないおよぉ

中島:あーん、もう、やらかしちゃったぁ!

中島:よっしーごめんなさい!


吉永:だから、俺は大丈夫だって


中島:あーん、だから、違うのよぉ!

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