あなたのお母さんにして下さい。(バブあり)
Danzig
第1話
とあるオフィス
仕事の最中に推し活をする女性
中島:(傍白)あぁーあ、経理なんて仕事、やるんじゃなかったわ
中島:(傍白)うちの重役はホント頭が固いんだから・・・
中島:(傍白)「紙の書類じゃないとダメ」だとか、「ハンコがなきゃダメ」だとか、「経理はリモートはダメ」だとか・・・
中島:(傍白)もっと他の会社を見習って、ITを活用すればいいじゃないの!
中島:(傍白)それに、社員からは、毎月、毎月、「申請の仕方が分からない」とか、「面倒だから代わりにやってくれ」とか、「申請書はエクセルじゃダメなのか」とか・・・
中島:(傍白)何度同じ説明すればいいのよ! 社会人なんだから、決められた事は、決められた通りに自分でやりなさいよ!
中島:(傍白)営業からは、経理なんて非生産部門だの、俺達がお前たちの給料を稼いで来てやってんだとか言われるし・・・
中島:(傍白)あんた達が売って来たお金は、誰が処理してると思ってるのよ。 ったく。
中島:(傍白)おまけに来客が来たらお茶出してくれとか、そりゃここは給湯室に近いけど、私は経理だっつーの
中島:(傍白)はぁ・・・ホント心身ともにくたくた・・・
中島:(傍白)でもいいの、私には推し様がいるから、大丈夫!
中島:(傍白)オフィスの机に飾ったこの写真
中島:(傍白)私の癒しにして、モチベーションの源(みなもと)
吉永:あ、いたいた
吉永:中島...ちょとこれ頼める?
中島:(傍白)あぁ、ホント癒されるわ、私の推し様
中島:(傍白)彼の声を聴くだけで、どんな辛い仕事だって我慢できる。
中島:(傍白)そう、私の最推し
中島:(傍白)舞台俳優にして、人気声優
中島:(傍白)その名は、慶永圭介(よしながけいすけ)、愛称は「よっしー」
吉永:中島?
中島:(傍白)イケメンにして美声、ダンディでいて愛らしい生き物
中島:(傍白)かわいい、なんてかわいい生き物なの!
中島:(傍白)私は推し様のおかげで生きていられる
中島:(傍白)ううん、私が生きるのは、全て推し様の為
中島:(傍白)あぁ、私のよっしー
中島:(傍白)彼の為なら、私は何だって出来る、何にだってなれるわ
吉永:ちょっと、中島
中島:何よ、吉永、邪魔しないでくれる?
吉永:仕事中に何やってんだよ
中島:何やってるって、見て分かんないの? 推し活よ、お・し・か・つ!
吉永:・・・あっそ、まぁなんでもいいや、ちょっと、これ頼める?
中島:何これ?
吉永:何って、立替払いの清算申請♪
中島:あー、今月の提出期限は過ぎてるから、来月ね
吉永:そこを何とかさ、今月中に頼むよ・・・
中島:ダメよ
吉永:今月中に清算出来ないと辛いんだよ、な、だから今回だけ・・・な、な。
中島:ったく、「何が今回だけ」よ。 先月もだったでしょ
吉永:まぁ、まぁ、俺と中島の仲じゃない
中島:どんな仲よ
吉永:俺達、同期入社♪
中島:それだけでしょ
吉永:そうだけど、それも何かの縁でしょ
吉永:ほら、よく言うだろ、同期入社も他生(たしょう)の縁って
中島:言わないわよ、そんな事
吉永:ホントに頼むよ、な、この通り、一生に一回!
中島:何?一生に一回って、それを言うなら一生に一度でしょ?
吉永:一生に一回!
中島:ふぅ、良く分からないけど、本当に一生に一回なのね。
吉永:一生に一回目のお願い。
中島:ブァカ!
中島:あんたのお願いなんて、これまでに何回も聞いてあげてるでしょ!
吉永:そこをなんとか、俺、中島の事、大好きだから!
中島:キモッ
中島:ったく・・・もう、本当に今回だけよ
吉永:ありがとう中島、恩に着るよ
中島:はいはい
中島:はぁ・・・こういう人の相手は、ホント疲れるわ
中島:今日は早く帰って「よっしー」への愛で私を満たさなきゃ
吉永:よっしーって?
中島:え? 私の推し様ですが、何か?
吉永:俺も「よっしー」なんだよ、吉永だから「よっしー」って昔から言われてた
中島:あんたなんかと一緒にするんじゃないわよ、同じ「よしなが」でも、漢字が違うでしょ。
中島;あんたの「よし」は、不吉とか末吉とかおみくじの「きち」で、
中島:よっしーの「よし」は、慶応大学の「けい」、武蔵坊弁慶の「けい」、慶長大判の「けい」なの、
中島:あんたとは格が違うのよ、格が。
吉永:そう? あんまり変わんないと思うけどな
中島:全然違うのよ
吉永:ふーん・・・・で、この写真が、その「よっしー」って人?
中島:そうよ、イケメン俳優にして美声の声優、慶永圭介様よ
中島:あんまり汚い手で触らないでよ
吉永:なんだ、オヤジじゃん
中島:失礼なこと言わないで頂戴、よっしーはまだ44歳なのよ
中島:それくらいの年齢にならないと、出せない色気やダンディズムがあるのよ
中島:そう・・・・若い子には決して出す事の出来ない、落ち着きと艶っぽさ・・・
中島:あぁ、よっしー・・・
吉永:そんな事言っても、オヤジはオヤジだしなぁ
中島:あんたもしつこいわね、何よ、さっきから、人の推し様をオヤジ、オヤジって
吉永:いや、だから、オヤジなんだって
中島:何よ? どういう事?
吉永:だ・か・ら、この人、俺のオヤジ、おれ、この人の子ども
中島:それ以上ふざけると怒るわよ
吉永:ふざけてないって、名前だって同じ「よしなが」だろ?
中島:漢字が違うじゃない
吉永:たぶんオヤジは芸名だよ、本名でやってるって言ってたけど、漢字を変えてるとは思わなかったわ
中島:そんな・・・だって・・・
中島:ね、年齢だって、合わないじゃないの
中島:よっしーはまだ44歳なのよ、あんたみたいな大きな子どもがいる訳ないじゃない
吉永:俺は、オヤジが二十歳の時の子だからなぁ
吉永:今俺が24だから、オヤジが44
中島:そんなの嘘よ、だって、よっしーは奥さんいないって言ってたもん
吉永:俺の母さんは、俺が小さい時に死んじゃったんだよ
吉永:だから、オヤジに奥さんがいないってのは、間違いじゃない
中島:・・・・・ほ・・・本当なの?
吉永:こんな事で嘘を言ったって、直ぐバレるし、意味ないだろ
中島:じゃぁ、どうして今まで黙ってたのよ!
吉永:ホントに知らなかったんだって
吉永:オヤジはちっともテレビに出ないからさ、てっきり売れない役者だと思ってたんだよ
中島:よっしーは舞台俳優だし、声優だから、テレビに顔は出ないのよ
吉永:そっか、ははは、オヤジも意外とモテるんだな
中島:バッカじゃないの! よっしーのファンが世の中にどれだけいると思ってるのよ
吉永:へー、そんなに人気があったんだ
吉永:オヤジ、家ではあんまり仕事の話、しないからなぁ
中島:・・・それじゃ今、あんたは、よっしーと二人暮らしなの?
吉永:あぁ、そうだよ
吉永:今というか、子どもの頃からずっと二人で暮らしてたよ
吉永:よっしーとよっしーの二人暮らし、ははは
中島:バカな事いうと、刺すわよ
吉永:厳しいな・・・
中島:食事とか洗濯とかはどうしてるの?
吉永:俺が大学生になるまでは、ほとんどオヤジがやってたよ
吉永:うちはビンボーだったからさ、毎日オヤジが飯作ってたよ、外食なんて殆どした事なかったな
中島:(傍白)確かに、よっしーはプライベートを殆ど公開していないミステリアスな御方(おかた)
中島:(傍白)そして、そこも魅力なのよねぇ・・・
中島:(傍白)あぁ・・・それにしても流石はよっしー。
中島:(傍白)私生活も真面目だって聞いてたけど、誠実で責任感があって、しかも健気(けなげ)
中島:(傍白)あなたの可愛らしさは、そういうところから来ていたのね
中島:(傍白)あぁ、よっしー、私はあなたを推していて、本当に良かった、やっぱり貴方は私の誇り
吉永:そういえば最近、俺に手が掛からなくなったから、婚活でもしようかなぁって言ってたなぁ
中島:こ、婚活!!
吉永:あぁ、よく知らないけど、若い後輩にマッチングアプリを薦められたって言ってたわ
吉永:これでお前より先に嫁さん見つけようかなぁ・・・だってさ
中島:(傍白)よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活・・・
吉永:まぁ、オヤジは意外とそういうのを面倒臭がるから、どうせアプリなんかやらないだろうけどな
中島:(傍白)よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活、よっしーが婚活・・・・
吉永:おい、聞いてるか?
中島:(傍白)よっしーが婚活なんてショックだわ・・・でも、彼の年齢的にはそうよねぇ・・・
中島:(傍白)今までずっと一人で子どもを育てて来たんだもん、そろそろいい人を見つけたくもなるわよね・・・
吉永:中島?
中島:(傍白)でも、よりにもよってマッチングアプリって・・・
中島:(傍白)いくら、人から進められたからって、マッチングアプリって・・・
中島:(傍白)私達ファンは、ずっとよっしーを見て来たのよ、よっしーの魅力を誰よりも知っているのよ
中島:(傍白)それをどこの馬の骨とも分からないような、よっしーの魅力のかけらも知らないような、一般人とだなんて・・・
吉永:おい、聞いてんのか、中島
中島:(傍白)でも、だからといって、女優や声優となら許せるの? 他のファンとだったら許せるの?
中島:(傍白)それはそれで嫌よね、そんなんだったら、いっその事、カタギの一般人の方が・・・・
吉永:おーい・・・・中島ぁ・・・聞いてねぇな。
吉永:まぁいいや、じゃぁその清算頼んだよ
中島:(傍白)いや、待って待って・・・私がマッチングアプリで偶然を装って、よっしーと知り合うってのはありよね?
中島:(傍白)そうよね? ありよね?
中島:(傍白)よっしーがマッチングアプリをするなら、絶対、彼だと気づかれないハンドル名にするはず
中島:(傍白)そのハンドルネームを息子のあいつから聞き出せば、私が他の人よりも一歩も二歩もリード出来る!
中島:(傍白)いやいや、それ以上に、よっしーがマッチングアプリをする事なんて、ファンは誰も知らない筈。
中島:(傍白)だからそれを知っている私は、みんなよりも百歩も二百歩もリード出来るじゃない! クククク
中島:吉永、それで、そのマッチングアプリってどんな名前・・・・って、あれ? 吉永? どこ行ったの?
中島:ったく急にいなくなるなんて、失礼な奴ね
中島:(傍白)でも、よっしーがマッチングアプリやるなら、私は何(なん)アカ作るべきか・・・
中島:(傍白)スマホも買わなきゃね・・・とりあえず10台くらい買っておけばいいかな・・・いや、15台は要るか・・・
中島:(傍白)いやいや、でもスタートダッシュが肝心だから、少ないアカウントで確実にいくか・・うーん、迷うところよね。
中島:あれ? いや、待って待って、マッチングアプリで近づかなくたって、私は、よっしーの息子が同期にいるのよ。
中島:そうよ、これ以上のアドバンテージは無いじゃない!
中島:昔から「何とかが欲しけりゃ、まず馬を射よ」って言うわよね・・・まずは外堀から埋めて行いけば、いずれはよっしーに
中島:ククク、我ながら完璧だわ
中島:よし、まずは吉永を・・・
中島:あ、でも、私が「よっしー狙い」って事はバレないようにしなきゃね・・・
(吉永のデスクに来た中島)
中島:吉永君♪
吉永:ん? どうした中島
中島:さっきのあなたの仮払い申請、やっておいたわよ
吉永:おお!ありがとう、助かるよ。 今月ホントに厳しかったんだ
中島:提出期限が過ぎてたから、ねじ込むのは大変だったのよ
吉永:そっか、無理言ってゴメンな
中島:何言ってるのよ、水臭いわね。 私と吉永君の仲じゃない
吉永:そうか・・ありがとう
中島:私達、同期入社だもんね
吉永:そ・・・そうだな
中島:吉永君、他に何か困っている事とかない?
吉永:困ってる事・・・・
吉永:課長の愚痴が面倒くさいとか
中島:そういう事じゃなくて
吉永:どういう事?
中島:私に出来る事よ
吉永:中島に?
中島:そう、何かあるでしょ?
吉永:飲み会の領収書を落として欲しい
中島:そういうのは落ちません。
吉永:残念・・・・
中島:ねぇ、何かあるでしょ
中島:毎日の食事とか洗濯とか大変じゃない?
吉永:まぁ、男所帯だから、そういうのがあると言えばあるな
吉永:でも、母親が居ないからって、そういうのを他の人に頼むって訳にはいかないだろ
中島:(傍白)そうか・・・よっしーと一緒になるって事は、吉永の母親になるって事か・・・
中島:・・・・吉永君
吉永:ん?
中島:なんならさぁ・・・・
中島:私があなたのお母さんになってあげてもいいのよ
吉永:は?
中島:私さぁ、案外いい母親になれると思うんだよね
吉永:何の話してるの?
中島:だから、あなたのお母さんになってあげるって言ってんのよ
吉永:まぁお前の事だから、それは何かのネタなんだろうけど、ごめんちょっと分からない。
中島:ネタとか、そうじゃないのよ
吉永:そうなの?
中島:そうよ・・・もう、さっさとあんたのお母さんにさせなさいよ
吉永:それは今流行りのママ活ってやつか?
中島:違うに決まってるでしょ!
吉永:どうしたんだよ、さっきから
中島:・・・・・それは・・
吉永:何かあったのか?
中島:・・・吉永君、私をあなたのお母さんにさせてください!
吉永:はははは、何だよそれ、何かの罰ゲームでもさせられてるのか?
中島:何よ、笑いたければ、笑えばいいじゃない
中島:私は真剣なのよ
吉永:中島・・・
中島:私はね、あんたが思っているより、ずっと真剣なんだら
中島:ずっと、ずっと真剣なんだから
中島:あんたなんかには、私の気持ちなんて分かんないわよ
吉永:ご、ごめん・・・
吉永:よく分からないけど、なんか傷つけちゃったなら謝るよ
中島:・・・
吉永:そんなに俺の「家族」になりたいのか?
中島:そうよ、悪い?
吉永:いや、お前がそんなに真剣だったとは思わなかったんだ・・・悪かったよ
中島:じゃぁ、私がお母さんになるの、考えてくれる?
吉永:でも、どうして「母親」なんだ?
中島:あんたの母親じゃなきゃ、私には意味がないのよ
吉永:どうしても?
中島:どうしても!
吉永:そうか・・・わかった、じゃぁ考えてみるよ
中島:ホント!
吉永:あぁ、
中島:(傍白)あぁ、よっしー、待っていて! もうすぐよ。
吉永:でも、こういうのって、突然ってのはやっぱり抵抗があるからさ
吉永:順序といか、段階を踏んでから、考えて決めたいんだ
中島:ま、まぁそうよね
中島:(傍白)確かに、いきなり結婚って訳にも行かないし、
中島:(傍白)やっぱり段階を踏んでいかないと、よっしーもビックリしちゃうわよね
吉永:俺もこういう事って初めてだからさ
吉永:これからそういう関係になるなら、なおさら・・・
中島:確かに、普通に暮らしていれば、あんまりある事じゃないわよね
吉永:でも、あくまでも、今は、考えるって段階だからな
吉永:俺達の将来の話だから、焦ってもあれだろ
中島:まぁ、それは仕方がないわね
中島:(傍白)よっしーと結婚したら、吉永とも長い付き合いになるしね
吉永:うーん、でも何から始めればいいんだろう・・・・
吉永:やっぱり、まずは食事からかな
中島:食事?
吉永:そう、お互い酒でものんで、いろいろ話してさ、分かり合わなきゃ。
中島:確かにそうね・・・じゃぁそうしましょうか
(二人で仕事帰りに居酒屋へ)
(店の前)
吉永:とりあえず、居酒屋でいいか
中島:まぁいいんじゃない
吉永:なるべく端の席にしようか
中島:どうしてよ
吉永:こういう事って、あんまり他人に聞かれたくないだろ?
中島:まぁ・・・確かに・・・
中島:(傍白)どこでよっしーのファンに聞かれるか分からないからね
中島:(傍白)それなら居酒屋でなくてもいいじゃない・・・
(席について、注文後にビールが来る)
吉永:ふぅ・・・じゃぁ、まぁビールも来たし、とりあえず飲もうか
吉永:話はそれからでもいいだろ
中島:まぁ、そうね・・
吉永:じゃぁ、おつかれ
中島:ええ、お疲れ様
(乾杯をして飲み始める二人)
(酒を飲んで、お互い酔っぱらう)
中島:吉永ぁ、あんた、もっと飲みなさいよ
吉永:お前、大分酔ってるな
中島:酔ってない!
吉永:いや、もう十分酔ってるって・・・もうそろそろ
中島:酔ってないって言ってるでしょ
吉永:でも、もう遅いし
中島:何言ってんのよ、まだまだこれからじゃない
中島:それに、私は酔ってなんかいないんだからね
吉永:あぁ・・そう・・
中島:あぁ・・・よっしー
吉永:ん?なに?
中島:よっしー
吉永:だから、なんだよ
中島:・・・どうして・・・
吉永:え?
中島:どうして、私じゃダメなのよ
吉永:何が?
中島:何がじゃないわよ
中島:どうして、私があなたの母親じゃダメなのかって事よ
吉永:ってか、そんな直ぐに答えなんて出せないって
吉永:それに、なんで俺の母親なんだよ
中島:別に母親じゃなきゃいけないって訳じゃないのよ
吉永:じゃぁ、なんなんだよ
中島:あんたの家族になりたいのよ
吉永:じゃぁ、何で母親なんだよ
中島:そこしかポジションが空いてないじゃない
吉永:いや、他にもあるだろ、俺の姉さんとか妹とか
中島:嫌よ、そんなの
吉永:じゃぁ、俺の嫁さんとか
吉永:それなら、まぁ、俺としてもだな・・・
中島:ありえない
吉永:即答かよ! しかも、全力否定かよ!
吉永:別にもう嫁さんでいいじゃねぇか!
中島:それじゃダメなのよ
吉永:だから、何が!
中島:だからとか、そうじゃないのよ
中島:もう、どうして分からないかな
吉永:分かんねぇよ、そんなの
中島:もう
中島:兎に角! 私をあんたのお母さんにさせなさいよ
吉永:うーん・・・そんな事言われてもなぁ
中島:ほら、お母さんって呼んでご覧
吉永:そんな急に呼べるかよ
中島:ママって言ってもいいわよ
吉永:え? マ・・ママ?
中島:そう、ママよ
中島:男の子ってそういうの好きなんでしょ?
中島:同級生が義理の母親になって同居するってラノベ、見た事あるわよ
吉永:いや、そういうのって、好き好きだし。人によるかな
中島:人はどうでもいいのよ
中島:あんたはどうなのよ、あんたは
吉永:俺は別に嫌いではないけど・・・
中島:だったら、私をママって呼びなさい
吉永:そんな・・・
中島:ほら、何恥ずかしがってるのよ
吉永:だって、ほら、ここ居酒屋だし
中島:そんな事気にしてどうするのよ
中島:居酒屋って言ったのはあんたでしょ
吉永:いや・・・まぁ・・・そうだけど・・
中島:だったら、もう、ごちゃごちゃ言わない!
中島:男らしくないぞ
吉永:そんな・・・
中島:ほら、おいで!
吉永:え?
中島:来なさい!
吉永:・・・・マ・・・ママ・・
中島:ママの前で、何を恥ずかしがってるのよ
吉永:いや、他のお客さんもいるし・・
中島:他の人がどうしたっていうの、あんたは気にし過ぎなのよ
吉永:お前は平気なのかよ
中島:人の目を気にしてたら、オタクなんて出来ないわよ
中島:オタク舐めんな
吉永:まぁ、そうか・・・
吉永:もう、こうなったら、もうやるしかないな・・・・
吉永:ママ!
中島:ほら、甘えなさい
中島:寂しかったんでしょ
吉永:え?
中島:ほら!
吉永:そういうプレイなの?・・・まぁいいか・・・
吉永:ママ、僕寂しかった(普通トーン)
中島:ダメ!
吉永:どうこが?
中島:あんた、改めて聞くと、案外いい声してるわね。
吉永:そう?
中島:ええ、イケボよ
吉永:ホント? ありがとう・・・
吉永:じゃぁ何がダメなんだよ。
中島:「バブみ」が足らない!
吉永:バ、バブみ?
中島:そう、ママに甘えるんだから、もっとバブバブしなさい
吉永:えー、バブバブって・・そんな
中島:分かってないわね。
中島:バブ味ってのは萌え要素なのよ
吉永:も、萌え要素?、
中島:そう!
中島:あんたは、イケボなんだから、イケボがバブってご覧、それがギャップ萌えなのよ。
中島:萌え要素で救える命があるの。
中島:あんたに、これが分かる?
吉永:いや、分かるような、分からないような・・・
中島:よっしーなら普通に出来るわよ
吉永:出来るかな?
中島:出来るに決まってるじゃない、舐めてんの?
吉永:いや、そういう訳じゃんないんだけど・・・ホントに俺に出来るかなぁ・・・
中島:もう、つべこべ言わずに続けるわよ、やってりゃそのうち分かるわよ。
中島:さぁ、おいで!
吉永:は、はい・・・
中島:ほら、甘えて!
吉永:ママぁ・・・僕、寂しかったでちゅ
中島:少しは良くなって来たけど、恥ずかしがって、どうするのよ?
吉永:いや、だってさ・・・いざとなると
中島:こういう事は、恥ずかしがると、恥ずかしくなるわよ
中島:それに、なり切る事がキャラへの礼儀なのよ
吉永:キャラって・・・何のキャラだよ
中島:何でもあるでしょ、タラちゃんでも、イクラちゃんでも
吉永:サザエさん限定かよ
中島:もう、とにかくもっとバブバブしなさい!
吉永:・・・・仕方ないか・・・
吉永:バブゥバブゥ・・ママぁ! 僕、僕、寂しかったでちゅ
(演者さんの都合でアドリブを続ける)
中島:もう、仕方ない子ね♪
中島:ママが一杯甘えさせてあげるわよ。
(次の日)
中島:ん・・ううう・・(目が覚める)
中島:あぁ・・頭痛い・・・昨日は飲み過ぎたかな
中島:昨日って・・・あれ? 私何してたっけ
吉永:おはよ
中島:あぁ・・おはよ・・・・
中島:って、何であんたがいるのよ
吉永:何でって・・いや、だって昨日・・・
中島:それに、何?、私、裸じゃない
中島:このベッドも、ここはどこなの?
吉永:どこってホテルだよ
中島:ホテル・・って
中島:どうして、私とあんたがホテルに居るのよ
吉永:どうしてって、昨日の事、ホントに覚えてないのか?
中島:覚えてるような、覚えてないような・・・
中島:確か居酒屋に行ったところまでは記憶にあるんだけど・・・・あっ!
中島:・・・・・あぁ・・あちゃぁ・・・
吉永:思い出したか
中島:あんた、私に変な事しなかったでしょうね
吉永:したに決まってるだろ
中島:なんでそんな事したのよ
吉永:何でって、お前が誘ったんじゃねぇか!
中島:そ・・・そりゃ、私が誘ったかもしれないけど
中島:だからって、手を出す事は無いじゃない、ちゃんと断ってよ
吉永:断れるか!
吉永:あの雰囲気で断れる男はおらんわ!
吉永:それに、こっちは一晩中、赤ちゃんプレイさせられたんだぞ
中島:え? ホント?
吉永:あぁ、スゲー恥ずかしかったんだぞ!
中島:なんか・・ゴメン・・・
吉永:ま、まぁ、意外と楽しかった事は確かだけど・・・
吉永:でも、中島にあんな趣味があるとは思わなかったよ
中島:へ? いや、ちがうの、それはちがうのよ、これは全部よっしーの為で・・・
吉永:俺の為? いやいや、お前が言い出したんだろ
吉永:でも、確かに、ずっと、よっしーよっしーって俺の名前を呼んでたな
吉永:まぁ、俺の為っていうなら、これからもそういう関係で行くのも・・・
中島:ちがうのよ、そうじゃないのよ
吉永:何が違うんだよ
中島:嫌われちゃうよぉ・・・・
吉永:大丈夫だよ、お前の趣味の事は誰にも言わないから
中島:そうじゃないおよぉ
中島:あーん、もう、やらかしちゃったぁ!
中島:よっしーごめんなさい!
吉永:だから、俺は大丈夫だって
中島:あーん、だから、違うのよぉ!
あなたのお母さんにして下さい。(バブあり) Danzig @Danzig999
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