水溜まり

涼風雫

第1話

 私は歩いている。風のない雨上がりの蒸し暑い道だ。おもわずシャツのボタンを外す。


 ふと、視線の先の少女に目がとまる。彼女は、どうやら泣いているようだ。彼女の前の油の浮いた水溜まりに、私は腰をおろす。そして、私は彼女を見つめる。


「虹が見えるよ」


 すると、少女は水溜まりを覗き込む。彼女の涙がこぼれ落ちて波紋が広がる。


「虹はお空にあるんだよ」


 私が意図した事とは違う言葉が返ってきた。彼女は、うつむいたまま空を指差す。私は手をかざし空を見上げる。


「本当だね」


「だから言ったでしょ?!」


と彼女は声を弾ませ言った。

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水溜まり 涼風雫 @suzukazeseifu

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