第38話 決戦!
「今度は氷の国から現れた」
通算四体目。人や魔獣が住まない氷の大地に封印されていたようだ。現地の人達は避難をする。報告によると見た目は王冠のような形の奇妙な魔獣、特徴からSTGで戦闘経験があるタイラントと判明。最強最悪の攻撃、透明弾を放つ魔獣。危険な魔獣が出てきた。初見はまず対処不可能。北東の街ミハセに向かって移動中。俺達もミハセに移動。今回も上陸を待って仕掛ける。戦闘は俺達だけ。水面からタイラントの突起が見えてきた、来たな。砂浜に上陸したのを確認して出撃。
「いくぞ」
カトナに乗り古代魔獣へ。接敵、戦闘を開始する。ヤツは様々な攻撃手段を持っている。ばら撒き弾、雑魚敵ラッシュ、高速弾、これらをランダムに。やり慣れた攻撃だ、問題なく対処する。多数の雑魚魔獣が配備される。問題の透明弾を出す前の行動だ。この雑魚は撃ってはいけない、潰れたときに透明弾が発射されたことがわかる。雑魚が爆発四散、来る、定位置に移動、ダメージはなし。どうやら避けきったようだ。
「あれが透明弾? 全く見えなかったよ、よくかわしたね」
厄介なだけに研究も盛んに行われた。ボムを使った攻略が多いかな。透明弾を出す時間はある程度ずれるが、ボムの無敵時間中に発射されるから、最速のタイミングでボムを撃てば生き残れる。定位置はかなり研究が進んでから。雑魚の死に方によってばら撒き方がわかるようになり定位置を発見。こうして絶対攻略不可能とされたボスを倒してしまう。シューターって怖え。
「透明弾を処理とかもうわけがわからん。強化生体部品を使おう、準備してくれ」
「わかりました、たしかここにはめ込むんでしたね」
「そうだ。どうした、早く連れてきてくれ」
「もうここにいるじゃないですか」
「!? てめえまさか! ぐばっ!」
「必要な生体は、レベルを上限まであげた魔法使いでしたよね。強ければ強いほどいい、こんなぴったりな条件はそうそうありませんよ。私は操縦できませんからこのまま自動操縦で。世界が滅びるのをここから眺めるとしましょう」
タイラントの動きが止まる。またギリィが逃げたかと思ったその時、タイラントが変形を始める。虹色に輝きながらうねうねと形を変えていくタイラント。
「変形が止まった、あの姿は」
今までの古代魔獣全てを内包したかのような姿に変化。見たことがない形状、嫌な予感がする。様子を見ていると爆音が聞こえてくる。まさか追尾弾? テラに乗り換え音が近づいてきたタイミングでブレスを放つ、何かが爆発した音が聞こえた。まさか透明の追尾弾か。今の攻撃に戦慄する。
「さすがですね、ではこれはどうでしょう」
弾速が上がり雑魚も強化、透明弾も混ざってくる。そして遂に被弾。
「ぐっ、シ、シン」
激しい攻撃、もはやかわしきれない。苦し紛れにボムを放つ、だが焼け石に水、再び攻撃が。先程のボムで雑魚を倒してレベルが上ったようだ。しかし見ている時間がない。弾に囲まれた、こうして俺達はなすすべなく攻撃を受ける。
「勝ちましたよ! 世界は滅びるのです!」
ここはどこだろう、宇宙のような異空間に横たわった状態で俺はいる。体が動かない、そうだ俺は死んだんだ。これが死後の世界ってやつか。遊んできたSTGのエンディングを思い出す。バッドエンドがたくさんあったな。主人公が力尽きたり、世界が滅びたり。そもそも戦闘機の一騎駆けって時点でツッコミどころは満載なわけだが。今回はバッドエンディングだったわけか。シューターの俺に合っている終わり方じゃないか。いや、正確には倒せず負けたからゲームオーバーだな。苦笑いをしているとぼんやりとした光が一つまた一つと俺を取り囲むように現れる。いよいよお迎えか。実体化したその姿は先生達だった。皆さんも亡くなったのかな? 現代と異世界の時間の流れはわからないけど。
「負けたか」
「勝てませんでした。やつは強い、諦めました」
「らしくないな、いつもならゲーセンが閉店してもやろうとするくらいなのに」
「一度しかない人生で失敗したんです。流石に無理ですよ」
「何を言っている? お前のステータス画面を見てみろ」
言われるがままステータス画面を見る。NEW GAMEの文字が。レベルが上がりその時に追加された能力か。この能力、まさか。
「そうだシン、負けたのならまた戦えばいい。勝つまでやれ!」
「勝つまで!」
NEW GAMEを選ぶ。薄暗い空間、ここから放出されると見たことがある人達出会う。転生できた。これならやつを倒せるかもしれない! シューターの本領はここから。どんな達人でも一度のプレイで極めることはない。それこそ気の遠くなるほどの試行錯誤の中から攻略やハイスコア狙いのプレイが生まれる。しかし想像以上にタイラントは強敵だった。俺は何度もヤツの前に敗れ去る。その度に先生達の声が聞こえた気がした。
「もっと仲間を増やせ!」
獣王サキア、ザデフ、マフア、アスラ、ウィザレスを仲間に。だが負けた。
「レベルだ! 限界まで上げろ!」
レベル上げを決行。世界の魔獣を倒し尽くしたが限界まで上げきれなかった。そして負ける。
「稼げ! 魔獣は経験値だ!」
魔獣を効率的に、如何に経験値を増やすかを考え戦う。まるでスコアラーだ。そしてレベルが上がる。強化されたがまだ勝てない。
「パターンを構築しろ!」
何度か試す。今の動き、もしかして。今回も負けたが攻略の糸口が見えてきた。
「数をこなせ!」
「集中しろ!」
「後ろに立っている人がいたら譲れ!」
「連コインはするな! ちょっと時間あけろよ!」
「コーヒー飲む? おごってやるぜ」
「執念だ!」
全てのパターンを把握。既に透明弾は怖いものではなくなった。トドメだ、アブソリュート・ゼロを放つ。
「ありえません、究極まで強化されたタイラントが!」
「シューターの執念を舐めるなよ!」
あれから一年。今は竜人王と語り部のお婆さんの二人と話をしている。古代魔獣が現れる様子はない。ギリィはタイラントの爆発に巻き込まれたのだろうか。彼がどうやって古代魔獣を復活させていたのかなど謎が残ったが彼が死んでしまったのではもうわからない。
「本来なら奴は古代魔獣を操り出現した古代魔獣を破壊する役割だったのかもしれんのぉ。神の推量よりも欲が勝った、憶測じゃがな」
正史ではギリィが起動したのではなく、なにかの拍子に動いたのかも。帝国がマザーを見つけたらなんとしてでも動かそうとしそうだ、ありそうだな。古代魔獣対古代魔獣か、ちょっと見てみたかったかも。世界に変化が起こる。不思議なことに魔獣の発生量が一気に減る。古代魔獣と関連しているのかな?
「神が作り出していたのでは」
俺の強化のため神が用意していたのではとお婆さん。確かに魔獣がいないと強くはなれないが結局のところこれも推測の域を出ない。わざわざそんな事をせず直接始末してほしかったのぉと笑いながら話すお婆さん。その意見はごもっともだ。時が過ぎ、俺とテラの結婚式。
「時間がかかったな」
「ふふ、本当に」
白い衣装を身にまといテラの横に並び立つ。馬子にも衣装、意外とイケてるんじゃないかな。
「愛している」
「私も」
テラと口づけを交わす。仲間達が、集まった人々が祝福してくれた。こうして俺の異世界冒険記は終わる。いやある意味これからかな?
やりこみシューター、STGのように変身した仲間の獣人達を乗りこなし異世界で無双する 保戸火喰 @hotkaku
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