第37話 マザー

街の中には誰もいない、皆避難したようだ。街から出て南に移動、体力温存のために飛べる獣人達に運んでもらっている。帝国が作った飛空船を使っている、交代しながら飛べるからなかなか便利な代物だ。


「来たぞ!」


敵機を発見、カトナに乗り飛び立つ。獣人達は撤退。見たことある敵だ。編隊を組みこちらに飛んできている。動きも一緒、地上部隊もいるな。エマに乗り換え撃ち込み倒していく。雑魚魔獣が出る場所、タイミングが完全にやったことがあるSTGと同じ。何度も遊んだゲーム、頭が、体が覚えている。難易度が高めだが点数稼ぎをしなければクリアは問題なくできる。思い出しながら戦闘。赤雑魚編隊攻撃後は前方へ移動、画面下から現れる青雑魚編隊をシーズで倒す。中ボス魔獣が現れる。左右の腕から発射される魔法弾をかわしながら本体に攻撃。


「左右の砲台から潰さないんだ、楽になりそうだけど」

「それは罠でね、潰すと避けるのが難しい高速弾が発射されるんだ」

「へぇ」


隙間がほぼない魔法弾の雨。激しい攻撃だがパターンを構築済み、俺の敵ではない。


「強気なシン、初めて会ってツリーと戦ったときのことを思い出すな」

「何? 馴れ初め話?」


本体を倒し地上に落ちていく魔獣。距離を離し腕の爆発弾をかわす。またしても大きめの古代魔獣が出現。コイツは正面にいるとレーザーを放ってくる。後ろにまわり雑魚編隊を倒した後シーズで撃破。次に来る雑魚は触らずスルー。撃ち込み倒すと撃ち返し弾を撃ってくる。倒さないほうがいい敵もたまにいる。また中ボスタイプが現れる。コイツは超接近すると玉を吐いてこない。張り付いて弾を打ち倒す。攻略情報が役に立つ。懐かしい、現代に戻ったような気がした。


「見えてきた、マザーだ」


タコのような魔獣が現れる。攻撃法は眼からレーザー、雑魚ラッシュ等多岐にわたる。だが攻略法は心得ている。少し戦闘して相手の動きを把握、戦ったことのある相手だ、勝ちを確信した。目のレーザーの隙間に入りかわしたり、たまに出来る安置を利用しながら優勢に戦いを進める。倒せると思ったがここへ来て急に敵の弾速があがる。


「通常のマザーではなくなった!?」


急激に攻撃が激しくなる。パターンが変わった。戦闘中に強くなる動きは経験したことがない。


「勝てそう?」

「問題ない」


強くはなったが五周目程度の強さ。いつもはない行動に一瞬焦ったが、問題なく倒せそうだ。周回プレイをしておいてよかった。


「付与魔法で強化したマザーでも負けそうですね。彼は化け物ですか」

「マザーを捨てて逃げよう、やつには勝てん」

「自動操縦にして逃げましょう、捕まると面倒ですからね」

「わかった(奴らなら倒せるか)」


戦闘は長期戦に、だが現在のメンバーなら勝てない相手ではない。攻撃を続けているとマザーの眼が爆発、動きを止める。こうして古代魔獣マザーを討伐、戦闘は終了。街が一つ潰れたくらいの被害で済んだ。だがまたしてもギリィを逃してしまう。これではいたちごっこ、早くやつを捕まえたいところだが。


「遂に古代魔獣が最後の一体になってしまった。仕方がない、強化生体部品を使おう、準備しておいてくれ」

「わかりました」

(強化生体部品はコイツでなければ制作できないもの。古代文字が読める俺と組むのは運命だったのかもな。コイツと一緒だなんて正直嫌だが)

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