第36話 合流

「いいわね! 私が貴方達の御主人様よ。言うことは絶対! 意地悪なんてもっての他だからね!」


「ミゲ!」

「ミゲ! ミゲ!」

「ミゲ―ル!」


 崇徳童子、サネル、シルフィードが街道を歩きながら砦へ向かう。当初こそ項垂れていたシルフィードであったがすぐに持ち前のどうでもなる精神で開き直り、今は意志疎通が取れないすねこすり達に命令している。


「羽虫! お前は主人ではない。すねこすりの扱いに疑問を感じたら一瞬で消し炭にするからな」


「け、消し炭ですって!?」


 白目を剥いて空を飛びながら気絶するシルフィード。そんなやり取りをみていたサネルが溜め息をつきながらふよふよと地面に落ちそうになるシルフィードを自分の肩の上へと乗せる。


「すねこすり達も悪い奴らではなさそうだ。一蓮托生というならこいつらもお前の為に何かしてくれるだろう。親身になってくれる家族ができたと思えば悪い話ではないんじゃないか?」


 シルフィードが頭だけで頷くとサネルと崇徳童子の視線が交わる。崇徳童子の視線は鋭く厳しい視線だ。それに対してサネルの表情は怯えているように見える。


(分かってるだろうなって顔ですね。大丈夫あの天幕での聞いたことは誰にも言いません)


 崇徳童子が視線を逸らすとサネルが安心したのかため息を付く。


「さぁ二人とも早く砦に向かいましょう! 俺も早く仲間に会いたい!」


 三人と数十の獣たちはそれぞれの想いを胸に秘めながら砦へとむかうのであった。


 ※※※


「崇徳童子殿の帰りもそろそろではないか?」


 左右を刈り上げ、頭の中心に集めた髷が印象の大男が地面でへばる三人に声を掛ける。


「はぁはぁ。そういえばそんな時期でしたね。毎日のトレーニングがきつ過ぎてすっかり忘れてましたよ」


 茶色いイガグリの丈二は地面に大の字になりながら息を切らしている。


「馬鹿妖精と崇徳童子さんで出かけると言い始めた時は心の底から心配しましたけどよく考えてみたら崇徳童子さんを襲える奴なんていないんですよね」


 赤髪についた汗を拭いながら鋭い目つきの一平がアオガラに答える。


「ガハハッ! その通りだな。拙者はむしろ崇徳童子殿が怒りに任せて街を破壊してないかが気になるな」


「そ、そんなことを崇徳童子さんはしませんよ! 本当は優しい人なんですから!」


 頬を膨らませながらアオガラに抗議する三太。そんな三太を見て一平と丈二はニヤニヤとしている。


「そ、そんなことよりコランダさんはどこに行ったんですか? ひょっとしてどこかで油を売ってるんじゃないでしょうね!?」


「ガッハッハッ! それはないコランダは希望者を冒険者ギルドに連れて行っているはずだ。残りの者達もそろそろこちらに向かってきている頃だろう」


 すると、森の中から木の実と兎を獲った数人の女性がこちらに歩いて来る。


「アオガラさん。今日は野兎を二匹。クダコパの実が取れましたよ。昼食が終えた後は肥料を蒔いた畑を見に行ってきます」


「おぉ! よく働くな! もう少しでサネルとやらもこちらに戻ってくるだろう。その時はここでのできごとを話してやると良い」


「ふふふっ。そうします。本当にアオガラさんとコランダさんには感謝してしています。身寄りのない、しかも、迷惑をかけた私たちにこんなに良くしてくださるなんて」


「それは崇徳童子殿に伝えるのだな。拙者らは崇徳童子殿の意向にそったに過ぎん」


 女たちは笑顔をを浮かべながら頷くと砦の中へと駆けてゆく。これから昼食の用意をするのだろう。


 アオガラが三人にもう一稽古つけようとすると。今度は砦正面から声が聞こえてくる。


「おぉぉぉぉい!」


「んっ?」


 三太が目を細めて声のする方向に視線を向けるとその先からは見知らぬ男と一緒にこちらに向かう崇徳童子と数十の獣たちが目に入った。


「崇徳童子さん!」


 先ほどまで立つのがやっとだった三太が勢いよく跳ね上がるとこちらに手を上げる崇徳童子に向かい一直線に駆けだした。


 ※※※


 ここで書き溜めが終わりました。カクヨム内でイベントがありましたので加筆しましたが、このお話はとりあえずここまでとなります。10月1日に【邪神の教え布教します ~人族、魔族、亜人、いかなる種族でも構いません。狂信、暴力、強欲、加虐性淫乱 etc、条件付きですが何者も受け入れます~】を再開しますので。もし、この続きを書くならその後でしょうか……。もし、お暇があるようでしたら10月からまたお付き合いして頂ければ嬉しいです。

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偉大なるMに捧げる〜異世界妖怪活劇〜 陽乃唯正 @noel1215

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