人知れずの怪奇
メガゴールド
怪異が起こる前
「い、嫌だ……うぎゃああああああ!!来るな来るな来るな!あああああ!」
耳障りにキーキーなる悲鳴と叫び。
金髪リーゼントに特攻服。ありきたりなヤンキーな彼が、汗だくで、青ざめて、尻もちついたまま恐怖に支配された顔で、逃げようと、もがいている。
立ち上がる事もできない恐怖に怯えているんだね。
「もう!もういやだああああああ!!」
彼がこうも追い詰められたキッカケ……それについてお話しようか。
恐怖に怯えるこの時間から……数時間前の話から。
♢
ーー先程の時系列から四時間前。
都内某所。
寂れた、団地の跡地。あまり人の寄り付かない辺鄙な場所。
辺りはスプレーでの落書きだらけでゴミもそこら中に落ちてる。
そこにはヤンキー連中が溜まり場としてたむろしていた。
数は十人くらい。全員髪を染めた典型的な見た目のヤンキー共。
バカ笑いして騒がしいったらありゃしない。
「でよームカついたからシバイたまでよ!財布の中身は大したことなかったぜ、まったくよ」
「金持ってる奴いねえよな、ほんとよ。あー金ねえから好きなもんも買えねえぜ」
「万引き常習犯がなにほざいてんだよ!」
会話の内容からろくでもない連中とわかる。
「オイ、てめえら」
リーダー格と思える、イカツイ風貌の金髪リーゼントで、背丈の大きな男だ。
「上納金用意できたのか?そろそろバカの組連中くんぞ」
「え、あ~いや、わりいリーダーまだ…」
「あ?舐めてんのかてめえ」
リーダー格の男はヤンキーの胸ぐらをつかむ。
「ここらいったい島としてる組の連中に、このおれが口聞いてやってるから、てめえらクズ共がのさばってられんだろうがよ」
「り、リーダーいてえ…」
「なんにせよ金だ。金が全て解決すんだよ。奴らも上納金払ってるから、おれらを黙認してんだ。わかるか?」
「わ、わかってるって…」
そのままリーダーはヤンキーを投げ飛ばす。
背中を壁に殴打し、気絶した。
「使えねえカスだな。散々犯罪まがいな事して、金も用意できねえとはな」
「しかしようリーダー」
別のヤンキー、黒髪短髪リーゼントの男が話し掛けてくる。この男はサブリーダーだ。
「よくもまあ金払ってるとはいえ、ヤクザがおれら見てえな半グレ見逃してくれてるよな」
こいつらは未成年も紛れてる半グレ連中。ヤンキーもどきから、少年院送りになったろくでもない奴など様々。
そんな集団で、この街で犯罪行為を数多くしてる。
だがこの街はあるヤクザの島。つまりヤクザがしきってる土地。
そこで下手なことすれば返し…要するに半殺しにあうのが関の山。
警察のやっかいになる方がマシといえるくらい、酷い目にあわされるだろう。
それなのに金一つで事が収まってるのは違和感がある。
「おれさまは組長に気に入られてるからな」
「え、ヤクザの組長!?」
「ああ、おれさまの度胸なり、腕っぷしなり評価されててな」
「すげえな。キッカケはなんだよ?まさか組の奴叩きのめしたとか…」
「ビンゴ」
まさかの当たり。ヤクザを恐れぬ度胸、組員を倒す腕っぷし…それらを評価されたようだ。
「組員しばいた事、それとおれらの悪事を多めに見ることに目をつむるから、金寄越せって話だ。他の奴らじゃ金って条件だされる前に消されてるだろうがな」
「なんかすでにヤクザ見てえだよな。組長に上納金挙げてるわけだからよ」
「話はついてんだ。おれはいずれ直系組員として組にいれてもらえる」
「え、マジでヤクザなのか?」
「いずれだがな。で、見所ありそうな奴はおれの下の組員としてここの連中引っ張る。お前も入れてやるよ」
自分は評価されてるとみて、サブリーダーはニヤリとする。
「まあ規定の上納金を集め終えたらの話だがな」
「そういやここんとこ、そうやって金を他の連中から巻き上げてっけど、これ以上は無理だろ。カツアゲとかヤベーバイトで賄えない」
ヤベーバイト。それもまた黙認してる組の連中からもらったもの。
内容は明らかにヤバい。細かい説明はされてないが、薬の密輸なり、運び屋などだろう。
この男はやってないから憶測なのだが。
「ついには強盗なんてさせてよ…パクられちまったんだぜ仲間が」
パクられる。つまり逮捕されたって事だ。そりゃそんな大事やらかせば当然そうなる。
「そうでもしなきゃ用意できねえ。それにおれがやるわけじゃねえんだからノーリスクだ」
クズオブクズと言っていい。
悪事を無理やりやらせて、自分は安全圏とは…最低の男だ。
こんな奴は殺処分したほうがいいだろう。
……この何も恐れず生きてきて度胸もあるリーダー。
これが冒頭で恐れおののいて無様な姿を露呈していた者だ。
この男に一体何が起きたのであろうか?
次のpartへ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます