人知れずの怪奇

メガゴールド

怪異が起こる前

「い、嫌だ……うぎゃああああああ!!来るな来るな来るな!あああああ!」


耳障りにキーキーなる悲鳴と叫び。

金髪リーゼントに特攻服。ありきたりなヤンキーな彼が、汗だくで、青ざめて、尻もちついたまま恐怖に支配された顔で、逃げようと、もがいている。


立ち上がる事もできない恐怖に怯えているんだね。


「もう!もういやだああああああ!!」


彼がこうも追い詰められたキッカケ……それについてお話しようか。


恐怖に怯えるこの時間から……数時間前の話から。





ーー先程の時系列から四時間前。


都内某所。

寂れた、団地の跡地。あまり人の寄り付かない辺鄙な場所。

辺りはスプレーでの落書きだらけでゴミもそこら中に落ちてる。


そこにはヤンキー連中が溜まり場としてたむろしていた。


数は十人くらい。全員髪を染めた典型的な見た目のヤンキー共。

バカ笑いして騒がしいったらありゃしない。


「でよームカついたからシバイたまでよ!財布の中身は大したことなかったぜ、まったくよ」

「金持ってる奴いねえよな、ほんとよ。あー金ねえから好きなもんも買えねえぜ」

「万引き常習犯がなにほざいてんだよ!」


会話の内容からろくでもない連中とわかる。


「オイ、てめえら」


リーダー格と思える、イカツイ風貌の金髪リーゼントで、背丈の大きな男だ。


「上納金用意できたのか?そろそろバカの組連中くんぞ」

「え、あ~いや、わりいリーダーまだ…」

「あ?舐めてんのかてめえ」


リーダー格の男はヤンキーの胸ぐらをつかむ。


「ここらいったい島としてる組の連中に、このおれが口聞いてやってるから、てめえらクズ共がのさばってられんだろうがよ」

「り、リーダーいてえ…」

「なんにせよ金だ。金が全て解決すんだよ。奴らも上納金払ってるから、おれらを黙認してんだ。わかるか?」

「わ、わかってるって…」


そのままリーダーはヤンキーを投げ飛ばす。

背中を壁に殴打し、気絶した。


「使えねえカスだな。散々犯罪まがいな事して、金も用意できねえとはな」

「しかしようリーダー」


別のヤンキー、黒髪短髪リーゼントの男が話し掛けてくる。この男はサブリーダーだ。


「よくもまあ金払ってるとはいえ、ヤクザがおれら見てえな半グレ見逃してくれてるよな」


こいつらは未成年も紛れてる半グレ連中。ヤンキーもどきから、少年院送りになったろくでもない奴など様々。


そんな集団で、この街で犯罪行為を数多くしてる。

だがこの街はあるヤクザの島。つまりヤクザがしきってる土地。


そこで下手なことすれば返し…要するに半殺しにあうのが関の山。

警察のやっかいになる方がマシといえるくらい、酷い目にあわされるだろう。


それなのに金一つで事が収まってるのは違和感がある。


「おれさまは組長に気に入られてるからな」

「え、ヤクザの組長!?」

「ああ、おれさまの度胸なり、腕っぷしなり評価されててな」

「すげえな。キッカケはなんだよ?まさか組の奴叩きのめしたとか…」

「ビンゴ」


まさかの当たり。ヤクザを恐れぬ度胸、組員を倒す腕っぷし…それらを評価されたようだ。


「組員しばいた事、それとおれらの悪事を多めに見ることに目をつむるから、金寄越せって話だ。他の奴らじゃ金って条件だされる前に消されてるだろうがな」

「なんかすでにヤクザ見てえだよな。組長に上納金挙げてるわけだからよ」

「話はついてんだ。おれはいずれ直系組員として組にいれてもらえる」

「え、マジでヤクザなのか?」

「いずれだがな。で、見所ありそうな奴はおれの下の組員としてここの連中引っ張る。お前も入れてやるよ」


自分は評価されてるとみて、サブリーダーはニヤリとする。


「まあ規定の上納金を集め終えたらの話だがな」

「そういやここんとこ、そうやって金を他の連中から巻き上げてっけど、これ以上は無理だろ。カツアゲとかヤベーバイトで賄えない」


ヤベーバイト。それもまた黙認してる組の連中からもらったもの。


内容は明らかにヤバい。細かい説明はされてないが、薬の密輸なり、運び屋などだろう。

この男はやってないから憶測なのだが。


「ついには強盗なんてさせてよ…パクられちまったんだぜ仲間が」


パクられる。つまり逮捕されたって事だ。そりゃそんな大事やらかせば当然そうなる。


「そうでもしなきゃ用意できねえ。それにおれがやるわけじゃねえんだからノーリスクだ」


クズオブクズと言っていい。

悪事を無理やりやらせて、自分は安全圏とは…最低の男だ。


こんな奴は殺処分したほうがいいだろう。


……この何も恐れず生きてきて度胸もあるリーダー。

これが冒頭で恐れおののいて無様な姿を露呈していた者だ。


この男に一体何が起きたのであろうか?



次のpartへ。




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