終幕

「オウエエエエ!」

吐く。何度も吐く。


地べたにはサブリーダーやほかの下っぱ連中の死体が大量にあったのだ。

この場所にいた自分以外の仲間が死に絶えているわけだ。


「な、なんで…?悪霊にやられたのか?そ、そういや組長も来てたはず…」

「「少し離れたとこ」」

「えっ」


目線を奥にまわすと、老人とヤクザみたいな姿の男達の死体があった。


「嘘だろ…組長達も殺されたのか…?」

「「誰によ」」

「お、お前にだよおおおおお!?」


腰が上がらないため、地面を擦りながら距離をとろうともがくリーダー


「「イヤだな…殺しは」」

「じゃ、じゃあなんで死んでんだぁよおおおおおおお!!」

「「死体、よーく見て」」


素直にまずヤクザの死体を見る。


…頭部に銃弾の後が見えたはず。


「え?じ、銃で死んだのか?」


次に仲間を見る。


「な、なんか刺された……後?」

「「で、キミか持ってるものは?」」


リーダーは自分の右手を見る。

真っ赤に染まったドスがある……


「……え?」

「わかった?……全員キミが殺したんだ」

「ざ、さけんな……おれはなにもしてねえ。やったのは悪霊…」

「「ボクちゃん以外、霊なんていないんだよなあ」」

「そ、そんなバカな!あれは間違いなく…」


銃弾…刺された後…

それは間違いなくリーダーが悪霊と思ったあいてに放った行動。

今目の前にいる悪霊と違い、に対して行った事。


「「全部、キミが殺ったのさ!ボクちゃんと勘違いしてね!?」」

「う、嘘だああああ!!」


いかにでかい態度とっていても、これだけの人数を殺したのだ。頭がどうにかなってもおかしくないさ。ショックでね。


それに今回は間違いなく、さっきの下っぱと違い、リーダー本人が殺ったこと言い逃れは不可能。

組長を殺したのだし、ここに来てない子分達に狙われるのは間違いないね。


いや、そんなこと関係ないか。


だって、どうせオナジミチヲタドルノダシ。


「「ボクちゃんの呪いなんだよ。相手の視界をコントロールしてさ、キミの目には人の顔がボクちゃんの顔にしか見えなくしたんだ。臓器とかはただのカモフラージュさ。パニックにするために」」

「あ、あ、」

「「これで分かったよね?つまりボクちゃんと勘違いして仲間やヤクザ、殺しちゃったんだよ。力も与えたからあっさり殺せたでしょ?」」


実体の、あった悪霊はそう見えてただけの人さ。


え?殺された者達の話してた言語がおかしかった?うん。言葉通じたらまずいからねえ。そこも変えていたんだよね。


でもしゃべってた言語さ、逆から読んでみてよ。普通の日本語だからさ。


「嫌だあえあああああ!!」


あら、逃げるようだ。腰も上がらないのによくやるよ。


「逃げないでよ。まだまだ人殺してもらうからさ!その後はどうなるか知らないけど!」

「嫌だ嫌だ嫌だあえあああああ!!」


殺人鬼にはなりたくなかったんだねえ悲しいなあ。





で、最初の時系列に戻るわけ。


恐怖に歪み、便を漏らし、情けなく足を引きずりながら逃げているリーダー。

それでも階段あがって3階まで来たのはすごい。


「く、くるなくるな!」

「ちなみに、最初におかしくなった下っぱ、彼もまたコントロールしてたんだよ。だから急に暴れたんだよ。え?所在?キミが殺したじゃん」


口元を大きくあげて笑ってみせたよ。

怖いかイ?


「さ、さっきから!何ぶつぶつい、いってんだ!?誰かいるのかよ!?」


いないよ。


「じゃあなんなんだ!?」


語り手だよお。面白くない?趣味なんだあ。


「何が語り手だ!?少し前の事ペラペラ喋りながら…」


そう!数時間前のことは悪霊ことボクちゃんが語り手として話してたんだよ。いやぁ面白かったなあ。


……ところで話は変わるけど、悪霊がここにいるってこと、何で噂程度だったと思う?


「し、知るかよ!」


答えは簡単だよ。だってボクちゃんの手で殺した人なんていないもん。


「あ、あああ…」


間接的にボクちゃんに操られ、勝手に人殺しまくった殺人鬼がいただけだよ?

世間や警察はただ、猟奇殺人鬼がここで暴れてたってことしかわからないんだ。

殺人しまくった奴がさ、悪霊に操られたんだ!…なーんて言って誰が信じる?


═══════


「アホらしい。死にたくねえから出任せ言って、死刑の恐怖でおかしくなって自殺しただけだろ?」


═══════


リーダーの君もそう言ってたじゃん。

だーれも信じない。

だから君もイカれた殺人鬼として処される運命……

ボクちゃんが飽きるまで遊ぼう…


「うわああ!!」


あ、窓から飛び降りる気?

3階だよここ。おまけに廃墟だし、落ちた先は瓦礫まみれだ。ただじゃ…


聞く耳もたずリーダーは窓から飛び降りた。


「いぎゃあえあああああ!!」


ゴギッ!!



……あーあ。

瓦礫に頭打って、首の骨へし折れたよ。


…死んじゃった。つまんないな。







【昨夜未明、都内○○区○○付近で、多くの死体が発見されました。犯人は大量殺戮の後、飛び降り自殺を計り死亡。動機などは……】



「警部。ここ前にもこんな事件ありませんでしたか?」

「確かにな…こんな猟奇的な殺人そうそうあってたまるかと思うのに、同じ場所でなんてな」 

「その、前の事件の犯人獄中死する前に悪霊がどうとか言ってたとか」

「非現実的な話だが……また続くようなら、警戒したほうがいいのかもな」



このように、感のいい人もいるよねえ。

いつかはバレちゃうかねえ。

それまで楽しむか、場所変えるかな。

とはいえ場所変えた先にボクちゃん消せる人でもいたらやっかいだしね。



ねえ。どうすればいいと思う?



══終わり。




あとがき。

ホラーはほぼ見ないのに書いて見ました。

出来はよくないかもしれませんが、楽しんでもらえたなら幸いです。


バットエンドは嫌いなのですが、するなら被害者は悪人にするかと思いました。


だが悪霊野放しはよくないです。

いつか新しい作品を書く予定なのですが、そこでこの悪霊は退治するつもりです。

※闇夜の少年挽歌という作品の、人知れずの妖魔編で退治します。


ここまで読んでくれた方はありがとうございます。よければ他の作品も読んでもらえれば嬉しいです。


ではまた。

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