「ルフェルド・スウェイン」

@Ichiroe

第1話

とある気品溢れる装飾をされた書房の中で、ルビーのような真紅の両目を持ち、艶のある長い金色の髪を蓄えている、肌が眞白な少女と何やら気難しい顔をしている男のふたりが、それぞれソファの上で向かい合って座りながら、茶化すのが許されない雰囲気の中で真剣に会話している。




沈黙が続いていた。




最初に口を開き直した少女は淡々と、無関心な表情をして冷たくした語気を加え、それなりに丁寧に説明をする。




「それは磨滅症という北大陸・ノルサリアンの伝承に記載されたある種の不治の病である。患った者の体内では、原因不明の魔力衝突が生じ続け、それがやがて、臓器を破裂させるのだ……」




だが男はさらに顔を強張らせて少女を見詰めるが、どうやらその真摯な目線に耐えきれず、少女は思うわず目を逸らし、「やり辛いな……」と小声で呟いた。




だが男は引き続いて詰問する。




「それなら、破損した臓器を定期的に治療すれせば、娘の命の危険を避けることはできるのでしょうか?ルフェルド教授」




そう聞かれて。ルフェルドと呼ばれた少女は眉をひそめて、対応するのに疲れたような様相をする。


密かにため息をした後、こう短く答える。




「延命ぐらいにしか……」




男は取り乱して、焦った顔で聞き返す。




「じゃあ一体どうすれば?!」




場の空気は一気に重くなった。




にも関わらず、ルフェルドは依然とした無関心な表情で話を続ける。




「さっきの言った通り、魔力衝突——言い換えれば生命力が衝突して消耗し続けるんだぞ?臓器の損害だけなら、確かに魔力という超効率のエネルギーで治療すれば十分間に合える。だが逆に、その超効率のエネルギーである魔力が無制限に消耗し続けた穴を補欠出来る程のエネルギーはこの世のどこにある?臓器が破れようか、生命力が尽きようか、どのみち死ぬだけだ……」





「そんな……!そんな……!」





電池切れのロボットのように横倒れかけた男は両手で頭を抱え、そう呟き続ける。





それを機に徹底的なショックを与えようとするルフェルドは口を開こうとしたその時に、誰かがこの書房の扉を開けた。





「お父様?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「ルフェルド・スウェイン」 @Ichiroe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る