最終話:みんなしあわせ

「庵は私のえっちぃ動画を隠し撮りしてたんだ……庵はイケナイ子だ」八坂庵は山元桜に胸の頂きを撫でられ身体が粟立つような震えを覚えた。


 寮の空き部屋に桜たちはいた。


「桜先輩……」想い人に愛されるなんて思いも寄らないことだった。


 自分のやったことを思えば、絶交されても不思議では無かったのに。


 桜の手が胸と秘所をまさぐる。庵は思わず自らの感じる所にそれに当てようと身体を動かした。腰を浮かせて桜の指が当たるよう突き出す。


 その様子を澄川静香と七瀬真理愛、そして斎藤梓が見ている。梓は頼まれて庵をスマホで撮っていた。


 真理愛は恋人が後輩を攻めている姿に頬を赤らめていた。下半身がもじもじと動き、切なそうな瞳で二人をじっと見つめている。


 静香も食い入るように二人を凝視している。その手はさりげなく真理愛の肩に乗せられていた。


「先輩っ! 先輩ッ! 先輩ッ!!」庵が快感のままに桜を求める。


「ンむッ――」桜は庵の口を塞いだ。口内に差し込まれた指を庵は必死にしゃぶる。息が苦しくなって、余計に快感が増した。頭がチカチカする。真っ白な光に満たされる。


 全身で桜を感じようと両腕を首元に回し、脚を腰に絡めて、あらんばかりの力を込めて彼女を抱き締める。二つ分けの長い三つ編みが淫らに揺れていた。


 二人は下着姿だった。桜が庵のショーツに手を掛ける。庵はそれでも絡めた脚を外そうとはしなかった。強引に引っ張られたショーツが膝元に引っかかる。露わになった秘所が空気に触れてひんやりする。女性の蜜が零れた。桜は指を外すと改めて庵に口付けする。


 下の唇を桜の人差し指と中指が挟んだ。庵は快感に叫ぶがその悲鳴は桜の口内に消えた。


 落下するような感覚――逆に高みに上り詰めるような感覚にも思えた――が身体全体を襲う。


「あぉ――あぁ」庵は呻き喘ぐ。どんどん切羽詰まっていく。滅茶苦茶にして――そう叫ぶが桜の口に塞がれて喘ぎと消えるだけだった。


 桜の手がもどかしそうに庵の上を動く。時折感極まった様に動きを止め、庵は彼女も性感を味わっているのを知る。その事が庵をこの上ない喜びで満たす。自分の興奮が彼女に伝わり、それが彼女を興奮させ、その事に更に自分も興奮する。庵は快感の循環増幅にすっかり飲み込まれていた。


「んっ――あっ――ひうっ――んんッ! ンッ――!」終末は唐突に訪れた。庵は全身を貫く快楽に思い切り恋人を抱き締めた。桜も庵に全身を委ねる。これ以上無いという幸福感に二人は絶頂した。


 桜は庵に覆い被さるように崩れ落ちる。


 二人はお互いを見つめ合うともう一度深い口付けを交わした。


「桜! 庵ちゃん!」その様子を見ていた真理愛はついに我慢しきれなくなって桜を襲ってしまう。


「梓さん。もう動画は撮らなくても良いわ。私たちも、楽しみましょう」静香が梓からスマホを取り上げると桜たちが映る位置にスマホを置く。


 梓の肩を抱くと、静香はその唇に口付けた。優しく肩を押すと、布団に押し倒す。その間にも真理愛は桜の下着を取ろうともどかしく手を動かす。


「真理愛……」桜は真理愛の求愛に応える。


「庵ちゃんも、桜さんを導いてあげなさい」静香が快感にたゆたっていた庵を励ます。


「ン……」快楽に呑まれていた庵は夢遊病者のように桜にしがみついた。赤ん坊がそうするかのように桜の胸にしゃぶりつく。桜は悦びの声を上げる。


「庵、ズルい」梓も庵とは反対側から桜の胸に吸い付く。

静香は三人が桜を攻め始めたのを見て、その後ろに回り桜を抱き上げる。すっかり生まれたままの姿になった彼女の背中に舌を這わせた。途端に桜は甲高く啼く。


 桜は四人がかりで攻められる。背中から静香、左から庵、右から梓、そして正面から真理愛。


 桜と庵以外は下着姿だ。三人は気もそぞろに下着を脱ぎ始めた。その間も桜を嬲ることは忘れない。桜もすっかり興奮して求めに応じる。


 梓はショーツを足首に纏わりつかせたまま、桜の手を取ってねだる。


「ねえ桜、お願い――挿れて――」桜の右手を自分の女の部分に押し付ける。梓の顔は羞恥と期待と恐れで真っ赤だった、


 桜は流石にためらった。


「大丈夫、指一本くらいなら。もし処女を無くしたとしてもそれは良いの――桜なら」梓は想い人の中指をしゃぶる。唾液でしっかり湿らせると自分の股間に導いた。


「っむ――」桜も未知の感触に興奮する。指がするすると飲み込まれていく。何かを突き破るような感触は無かった――梓の処女は奪われなかったらしい。桜は安堵と残念感を同時に覚えた。


 梓が吐息と共にゆらゆらと腰を動かす。残りの四人はその淫らな美しさに息を呑んだ。梓は想い人に挿れられたというだけで頂点に達してしまう。指をうねりのように締める感覚に桜も軽く絶頂した。これぐらいにしておかないと本当に梓の処女を奪いかねない――そう思った桜はゆっくり中指を引いた。


「あん」指を抜かれると梓は不満気に軽く呻く。


 四人は再び桜を攻め始めた。


 桜もそれを必死に受け止める。


 真理愛の舌と指が秘所を、庵が左胸と秘所を、梓が右胸と秘所を、静香は後ろから腹部と秘所を優しく撫でまわす。


 桜は庵と梓を抱き抱え、下半身を真理愛に押し付け、首を精一杯後ろに回して静香の口付けを受けた。頭の中はもっと快楽を味わいたい、四人を食べてしまいたい、そんな思いで一杯だった。


 桜は必死に四人をまさぐろうとする。もどかしさと焦りで手が空を切り、焦る。そんな桜の気持ちに応えてか、四人は桜の性感を探り当ててきた。桜はその事に歓喜と恐怖のないまぜになった感情を覚えた。


 最初の頂きは庵から与えられた。桜は叫ぶ――快感が収まらない内に更に梓に昇り詰めさせられる。静香が押してくる腹部から子供を宿す部屋が激しく収縮する様な感覚が起きた。これ以上は無いという位の深い快感が襲う――それと同時に真理愛の舌が捉えていた花芯から全身を揺さぶられた。


「~~ッ!」桜は快楽のあまり言葉が出なかった。開いた口から空気が零れる。全身が突っ張り、視界が滲む。


 快感はすぐには収まってくれなかった。四人は桜が絶頂したのを見ても、攻めを休めなかった。少しも落ち着かない内に身体を弄ばれ快感はさらに加速した。桜は更なる快感に打ち上げられる。あまりに激しい快楽に桜の意識は飛んだ――。


 *   *   *


「うちが盗撮してた事――ホントに怒らないんすか?」人心地ついた庵はベッドに横たわりながら皆に聞いた。


 身体を襲った波は去り、熾火のようにくすぶる欲望が身体の中心に灯るのを除けば、穏やかな昼下がりだった。


 残りの四人は庵の質問に顔を見合わせる。


「そういう見方もできるけど、庵さんの動画が有ったから桜さんと真理愛を救えたのよ。ねえ、桜さん」静香が庵の額をつつく。


 話を振られた桜は庵の目を見る。庵は気恥ずかしさと気まずさで目を外した。

「ちゃんと見なさい、庵。――最初は怒ったけど、私を退学から救ってくれたのよ。もう怒ってないわ」桜は庵の額にキスする。


 ベッドは大きいとは言え、五人が同時に横になると流石に狭かった。


 しばらく幸せに満ちた無言の時が続く。


「そういえば――真理愛の下着、桜さんが独占するの?」静香が余計な事を思い出す。


 言わなければ私のモノだったのに――桜はせっかく見直した学院の君の心内評価を最低辺に下げた。


「本音を言えば私に返して欲しいですけど――桜は嫌なんでしょ?」真理愛がしょうがないという顔で桜を見た。


「ず~る~い~。私にも貸してよ。良いでしょ? 桜さん」静香が駄々をこねた。真理愛が溜め息をつく。


「静香先輩にもあげます。汚しちゃった下着は他にもあるから」呆れ果てたといった顔だった。


「本当?」静香の顔が傍目にも嬉しそうなそれになる。


「先輩も桜にも何言っても無駄ですから。それは良く分かりました」


 桜はそれを聞いて複雑な表情になった。


「ゴメンね、真理愛――」


「それ以上下着の話をしたら絶交するわよ桜、静香先輩も」真理愛は怒った表情を作ってみせる。二人は貝のように口をつぐんだ。


「――お風呂に行かない?」少しの沈黙の後、梓が空気を読んだのかそうでないのか分からない発言をした。

「良いわね」

「そうしましょう」

「私も」

「もう、梓は――」


 五人は笑い出した。


 日曜の昼過ぎ、私立澄川女学院は今日も平和だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様なんて大嫌いと少女たちは叫ぶ ~山元桜の愛と友情その2と2分の1~ ダイ大佐 / 人類解放救済戦線創立者 @Colonel_INOUE

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ