Part,25 Two organizations

Part,25



 ありえない速度で肉が消えていく。用意していた5kgの肉は光の速さでトレーから姿を消し、鍋の中に入り、いつの間にか口の中に放り込まれている。女の子とはいえ、育ち盛りかつ運動をする者はいくらでも食べられる。その中でも、光斬が暴れていた。



 「次の肉あります?」


 「まだまだあるよー」



 既に600gの肉を軽く平らげた光斬は、更に200gの肉が入ったトレーを貰う。育ち盛りの男の子は、たまにとんでもない量の食事を軽く済ませてしまうことがある。それが、今である。

 鍋には肉のアクが増えつつあり、風葉は鍋にアクが増えつつあればすぐに取り、肉に手をつける。が、肉を食べるスピードが早すぎるため、そのスパンもとても短くなる。



 (私、これ食べれてる?)



 鍋から吹き出る湯気は換気扇に吸い込まれていく。が、それでも熱気自体はリビングに留まり続ける。



 「いやー、お腹いっぱい」



 5kgの肉がなくなった。光斬は少し膨れたお腹をさすり、それを見て笑みを浮かべる。全員がちょうど腹八分になったところで、片付けを早めに終わらせる。



 「じゃ、さっきの続きと行こうか」



 さっきまでの楽しい雰囲気からは一気に変わり、真剣な雰囲気に変わる。



 「さっき出た情報の整理をします」



 すると、彩葉がその場にいる全員の端末に1つの資料を送る。



 「あくまでメモを取った程度ですけど、こんな感じね」



 書かれてあったことは「光斬君が遭遇したフェミーバーは、カラオケ殺人事件の犯人疑惑がある」「ネセントちゃんが遭遇したフェミーバーは、侵略するフェミーバーとは別勢力」「既に福岡内にフェミーバーが浸透している可能性あり」ということ。



 「この内容から、光斬君の遭遇したフェミーバーと、ネセントちゃんが遭遇したフェミーバーが同一組織に所属しているのか、もしくは侵略派と浸透派に分かれているのかという疑問が生まれます」


 「もし同一組織だったら、他にもフェミーバーがいる可能性があるよね」



 夏芽が彩葉の方を向いて考察を言うと、続いて風葉がもうひとつの可能性を示す。



 「そして違う組織であるなら、組織同士の衝突が発生する可能性があるのね……」


 「その場合、どうするんすか」


 「うーん……。どっちにしろまあ、私達が奔走するしかないよね」



 フェミーバーがいる限り、神の代行者に休みはない。例えフェミーバー同士が殺し合っていたとしても。それを体現するかのように、風葉は光斬に話す。



 「こっちはとっくのとうに侵略されて、滅亡寸前にまで追い込まれてる。じゃあ、今更フェミーバーに情けをかける必要はない。敵対する者は皆、蹴散らして進むだけなの」


 「蹴散らして……」


 「そう。人間を舐められちゃ困るからね」



 そんな中、ネセントはあることに気づく。



 「待ってください。ちょっと気づいたことあるんですけど……」


 「どしたの?」


 「私たちの行ったカラオケを経営している会社と、私が乗り込んだ倉庫の会社が一致してます。そして、その会社の従業員を襲ったということは……」


 「別の組織だってこと……?」


 「そう考えるのが妥当かと……」



 カラオケを襲ったフェミーバーの組織と、そのカラオケを経営している会社の組織のフェミーバーが存在しており、光斬が倒した方のフェミーバーが気づかずネセントの殺したフェミーバーの組織の者を殺したということになる。同じ組織に所属している可能性も捨て難いが、戦争の最前線で内戦を起こすとは考えづらい。とネセントは考えた。信憑性はありそうだが、2つ落とし穴はある。まず、もしその通りだとしても、2つの組織の目的が共通した瞬間に一瞬で数的不利となる。そして、自作自演で神の代行者側を騙そうとしているということ。



 「それってさ、俺らにとっちゃ両方敵なんすよね?」


 「まあ、今の所そうだね」


 「じゃあ、害のあるフェミーバーがいたらすぐに討伐する、今の体勢で全然いいと思いますけどね。無理に調査しても、人数少ないんだから防衛に穴が空いてそこを侵略される可能性があるし」



 ネセントが唖然とした表情で光斬を見る。



 「……どした? おかしなことでも?」


 「いや、今まで見たことないくらいに真面目に頭使ってるから」


 「そりゃ使うだろ。俺だって両親フェミーバーあいつらに殺されてんだよ」


 「それはそうだろうけど……」



 すると、彩葉が光斬の考えに対して返答する。



 「その方針でも、確かに現状維持であれば問題ありません。ですけど光斬君、私達が目指すところはフェミーバーから地球を取り戻すことです。ということは、ここで足踏みをしていても意味はないんです」


 「フェミーバーの勢力が増大していく状況から、どうにかして打破する必要があるんです。そのためにはどうすればいいのかということを、ここで話してるんです」


 「……じゃあ、敵はひとつに絞っておいた方がいいっすよね」



 光斬は全員に話し始める。



 「だって、サッカーでも1対2になる盤面だったらどうにかして1対1を作ろうとするでしょ? それと一緒っすよ」


 「まあ、それはそうだけど……」


 「光斬君の見立てではうまくいくの?」


 「いや、わかんないっす。けど、ネセントが殺したフェミーバーの組織は、大陸から襲ってくるフェミーバーの量よりかは明らかに少ない」


 「何せ、あそこの従業員は人間だった。じゃあ、その組織は人間とフェミーバーが共存しているってことになるっすよね」



 光斬の言おうとしていることがわかった夏芽は、他3人の目を見る。すると、他3人も同じように目を見合わせる。



 「じゃあ、九州の警備は松風隊に一旦任せて、私達はネセントちゃんが見つけたフェミーバーの組織を壊滅する流れで行く」


 「了解」



 対フェミーバー組織の案が決定した。時間を見ると、既に9時を過ぎていた。



 「あ、良い子はねんねする時間か」


 「じゃあ、私たち全員良い子じゃないじゃん」



 風葉は立ち上がり、ラックにかけてある籠に入っていたお菓子を取り出す。



 「じゃ、ちゃんとした話したし、みんなでちょっと落ち着こうか」


 「お、賛成」


 「いいっすね。そのお菓子セレクトセンスあるっす」


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美しい月と、残酷な世界。 ひょうすい @Hyosui1123

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