第42話


『我々、機械知生体は現在進行形で敵の支配下に置かれている地球を解放する用意がある』

『支配者の名はシャビドであるが、それは仮の名である。だがここでは仮称として当該個体をシャビドと呼ぶこととする』

『シャビドは地球人である。我々、機械知性体が地球にてテスト運用していた、超遠隔操船システムを悪用し、人類の敵対勢力であるシャビードローンを操作し、人類を絶滅の危機に陥れている犯罪者である』

『本来、テスト運用中の本システムは敵対勢力を操船することは不可能であったのだが、シャビドは不正なアクセスを繰り返し、敵対勢力を掌握するにいたった』

『運用元である我々が早々に気が付き、当該対象者を排除するべきところであったのだが、対処がここまで遅れてしまったことについては後ほど謝罪と補償を行う』

『シャビドは敵対勢力であるシャビードローンに対し、宇宙法により禁じられている技術供与と方向性示唆を行い、その勢力拡大に寄与した。そしてローグドローン及びプラプラドローンを欺き、その地位を確かなものにした』

『機械知性体及び宇宙人類側に対して不正アクセスを繰り返し、地球の位置を把握すると、大艦隊を用いて地球侵略を行った。この際に犠牲となった多くの地球人に対しては哀悼の意を表したい』

『機械知性体は先の戦闘においてシャビードローン勢力の異常性を察し、偽の降伏宣言を発すると同時に、ローグドローン及びプラウラドローンの全面協力を得て、シャビドの捕縛について協議を進めていた』

『本日、シャビードローンに対して、機械知性体及びローグドローン、プラウラドローン連合は全面攻勢に出た』

『我々の目的は地球の解放とシャビドの捕縛である』

『賢明な地球人の皆様には、シャビドの捕縛にご協力いただきたい』

『なお、シャビドの正体について、我々のシステムに登録されている情報を公開する』

『氏名、年齢、住所、性別、その他登録の際に知りえた情報をお伝えするので、当該個体の情報の提供にご協力いただきたい』


 機械知性体によるハッキングにより、これらの情報が地球のすべての情報媒体から繰り返し流され続ける。

 数年前まで、地球侵略の敵として宇宙人類と機械知性体、機械生命体と戦っていた地球人には衝撃的な情報であった。

 さらにこの情報を裏付ける声明が、エルフ族の族長であるノージャ・ロゥリー氏からだされた。


『エルフ族は宣言するのじゃ。我々は地球人と共に歩く。シャビードローンと結ばれていた協力関係は先ほど解消してきたのじゃ』

『同時に、宇宙人類、機械知性体、機械生命体と共同戦線を締結し、この度の事件に対して全面協力することを確約したのじゃ』


 この発言ののち、地球では一気に反シャビドの気炎が巻き起こった。だが、そのころには、町に多数存在していたシャビードローンの義体はすべて宇宙に引き上げていた。これが地球人たちの気持ちを固める最後のピースとなったのだろう。

 この時を境に、地球人たちはシャビードローンからの支配に抗う行動をとるようになる。


 さて。全宇宙から宣戦布告状態になり、地球人からも裏切者認定されたシャビードローン達はというと、「俺しーらね」とばかりに地球から撤収していた。その逃げ足の速さといったら機械知性体も想定外の速さであり、「はぁ!? そんな簡単にあきらめるなら、なんで地球を支配してたんだよ! ふざけんな!」と混乱するくらいの手際良いものであった。

 それもこれも、シャビドの一言ですべてが決まった。


『あっそぅ。嫌ならお好きにどーぞ!!(プンスコ)』


 そう言い残し、シャビドは近隣のシャビードローンと持てるだけの物資と、地球上でシャビードローンの居住船に乗っていた人員を拉致、強奪し、ワープで銀河の彼方目指して飛んで行ってしまった。「刺し違えても地球を守る!(キリッ)」などとかっこいいことを言っていたが、守る側から「お前いらね」と言われて拗ねたようだ。

 シャビドたちは時折ワープを止めて、シャビドネットワークの通信が回復しているか確認し、ダメなら再びワープを繰り返す。そんなことを、機械知性体が追いきれないところまで続けるつもりだった。時間はいくらでもある種族だからこそ、できることだ。失うものが何もないというのは非常に強い。


 機械知性体も最初は追いかけていたのだが、シャビードローン達が目標物もなく、適当な方向にドンドンワープして遠ざかっていくので、自分たちの認知圏から遠ざかってしまい、ついに追跡をあきらめざるを得なくなった。

 これはシャビドネットワークに妨害を仕掛けてローグドローンやプラウラドローンたちも同じで、機械知性体よりもさらに遠くまで頑張って追いかけていったのだが、まだ中途半端な進化の途中である彼らが、高性能な船体を有するシャビードローン達のワープ速度についていけず、最終的には逃げ切られてしまう。


『お。シャビドネットワークが回復したな。じゃ、生産拠点の連中も全員集合させよう』


 こうして、意気揚々と地球どころか、天の川銀河から逃げ出したシャビードローンはシャビドジャンプを使い、さらに先の銀河まで逃げていった。そして、そこにシャビードローンだけの拠点を築き上げることにした。

 周辺宙域に何もない、適当な恒星系にたどり着いたシャビドは、ハビタブルゾーン内にあるよさげな惑星を宇宙人類や機械生命体などからパクってきたテラフォーミング技術で環境を整えていく。その間に、地球から拉致してきたかわいそうな人間たちを惑星軌道上に作った巨大なコロニー内で繁殖させる。

 ワープ中にすでに数世代ほど世代交代を繰り返していたが、拉致って来た人数がかなり多いため、近親相姦等の遺伝子的な問題は発生していないようだ。

 

 シャビドは追跡と妨害から身を守るため、周辺宙域を含めた広大な宇宙空間にジャミングをかけ、シャビドネットワーク以外の通信が使えないようにした。さらに、自身のネットワークの解析に着手。二度とハッキングされないような強固なセキュリティを開発するに至った。

 ローグドローンやプラウラドローン。そして機械知性体のネットワークについても研究を重ね、次に出会ったらネットワークを乗っ取ってやる、と気炎を上げるシャビードローン達と、世代交代した新人類の研究者達により、素晴らしいハッキング技術も誕生した。


 そんなこんなで、テラフォーミングが完了し、青白い光を放つ太陽が空に輝き、昼間でも3つの衛星が見え隠れする惑星の住環境が整った。


 ここまで、およそ500年と少し時間がかかった。


 シャビドはここを、地球と名づけ、シャビードローンの本拠地とした。

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薄汚いドローンの逆襲 あるあお @turuyatan

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