第6.5話 ネットの反応


 私の霊感の起源となる話を投稿した後、ちょっとした達成感に私は浸っていた。というのも、ホラー部門日間1位を獲得したあと、週間でも3位まで上り詰めていたことを確認したのだ。

 麻奈美のために始めた投稿が注目されている。と同時に私の体験や幽霊が視えるという不思議な力を多くの人に認めてもらっているような気がしたから。

 小説投稿サイトの更新ボタンを押すたびに通知が光り、多くの人がブックマークやコメントがつく。


【女子高生S・Mの怪談】

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@shimaenaga_daisuki77

なんだか聞いたことがある話のような……? 更新ありがとうございます!


 久々のシマエナガさんからのコメント。

「麻奈美……なのかな」

 実は、この小さい頃の話は麻奈美に話した最初の怪談である。麻奈美がやってきてくれたんじゃないかと嬉しい気持ちになって振り返ると、後ろにあった窓ガラスに私がうつっていた。

 その後ろに、あの黒いモヤもうつっていた。

「麻奈美……出てきてよ。私だよ、咲だよ」

 窓ガラスの中の黒いモヤはふわふわと揺れた。先日、洗面所で見た時よりも人型になっている気がする。やっぱり、この影は麻奈美がやってきてくれたんじゃないか。

「麻奈美っ」

 振り返ってもやっぱり影は視えなかった。もう一度窓ガラスを覗き込んでみるも消えてしまっていた。


 諦めて、学校へ行く準備を始めるのだった。



***


 麻奈美が死んでから2ヶ月近く経ち、学校での生活はほとんど元通りに戻っていた。私も、小説投稿サイトでの経験が寂しさの穴埋めになったのか、以前よりも心の調子は良いように感じていた。

 桜田莉子と坂本美月との3人で過ごすことが多くなり、笑顔で過ごすことも増えた。クラスの中に漂っていた暗い雰囲気も徐々に無くなって明るいものに変わっている。

 けれど、みんなが麻奈美のことを忘れてしまったようで私だけは少しだけ切ない気持ちにもなっている。


「神子森ちゃん、今日の放課後に美月と一緒にモック行くんだけど行かない? 新作のポテトが美味しいんだって〜」

 莉子に誘われて私は「塾までなら」と承諾する。

「そういえは、神子森ちゃんって怖い話すきなんだっけ?」

 美月がバッグに教科書を詰め込みながら言った。

「うん、怖いのは苦手なんだけど好きだっなんだよね」

「ねぇ、莉子。じゃあ、今度の計画に咲子ちゃんも呼ぼうよ」

 美月がそういうと莉子は「だね」と嬉しそうに頷いた。一体なんのことか少ない私は2人に「何の話?」と声をかけた。

「実はね、今度の連休に莉子の家の別荘に行くんだけどその近くに怖い心霊スポットがあってね。受験勉強の息抜きに行こうかな〜って言ってたの。ね、いいでしょ?」

「楽しそうだけど……親に聞いてみるね」

「あっ、じゃあ神子森ちゃんの親御さんにうちから連絡入れるよ。ほらクラスの保護者ライングループあるでしょ? えっと、神子森ちゃんのママのアカウント教えて」

「うん、わかった」


 私の学校生活も充実し始めている。

 それと同時に、どうして麻奈美があんなふうにいってしまったのかが心残りになっていた。もしも、ここに麻奈美も一緒にいたらどんなに楽しかっただろうか。幽霊になってでもいいから出てきてくれたらいいのに。私なら視えるのに。

 けれど、彼女の姿はどこにもない。


「神子森ちゃん! 行こう」

「う、うん!」

 とっくに帰る準備を始めた2人に呼ばれて私は急いで教室を出た。そのまま、私たちはファーストフード店に入り、話題になっていたポテトの新フレーバーを注文する。

 2人が買ってくるのを待っている間にスマホを見ると


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「お待たせ〜」

 2人が席にやってきて私は思わずバッとスマホを隠すようにポケットに入れた。

「どうしたの? 彼氏?」

「ちょっと〜、咲子ちゃん。隠し事はなしだぞ〜」

「なんでもない、ちょっと怖い話読んでてびっくりしただけ」

 ポテトを食べ始め、私たち学校のこととか受験のことそれからちょっと気になっている男子のこととかで盛り上がった。

「ねぇ、神子森ちゃんって怖い話が好きなの?」

「え、うん。まあ好きかも」

 莉子の質問に答えた私の方に美月が前のめりになると

「さっき、怖い話見てたんでしょ? 私も莉子も好きでさ〜。今度心霊スポット行くのもそういう理由だったり? ね、莉子」

 頷く莉子、私は2人からも怖い話が聞けるかもしれない。


「怖い話が聞くのが好きなんだ。2人は何か怖い話とかある……?」


 莉子がにっこり笑うと「あるよ」と小声で言った。


 どうやら、麻奈美と同じくこの2人も怖い話が大好きらしい。私は新しい投稿のネタが聞けるのが嬉しくて自然と笑顔になった。


「聞きたいかも、怖い話」

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