第3話キュリー温度

「平田さん、磁石ってキュリー温度に弱いといいますよね?」

2人は距離を開けて歩いていた。

「私は理系ですが、キュリー温度は何百℃もありますよ」

「はい。それは、金属の磁石ですよね?我々は人間。だから、キュリー温度もだいぶ低いのでは?」

平田は少し考えて、

「中山さん、今からサウナどうですか?」

「……サウナ。良いアイデアですね」

2人は銭湯に向かって歩きだした。

その後ろを付ける人間がいた。


2人はサウナで汗を流し、水風呂に浸かり、また、サウナに入るを繰り返した。

そして、2人は、着替えた。


平田は中山に恐る恐る、手を近付けた。

2人はくっつかなかった。

両人共に喜び、冷えた牛乳を飲んだ。

「中山さん、あのベンチのスイッチ、壊しに行きましょうよ!」

「そうですね。ぶっ壊しましょう」


2人はホームセンターで金づちを買って、昼間の公園へ向かった。


「おいっ、テメェ、何モンだ?」

平田は、2人の後を付けていた人間に声を荒げた。

「オメェだろ?ベンチにスイッチを付けたのは?」


フードを被っていた、人間が2人に正体を見せた。

「平田さん、コイツ、ガキじゃないですか?」


謎の人間は、

「せっかく僕が発明した、人間磁石製造スイッチは不発かぁ」

「クソガキがっ!」

中山はタバコに、火をつけた。

「オジサン達、良くキュリー温度を知っていたね」

「馬鹿にすんな!こんなのぶっ壊してやる!」


バキッ!


平田はスイッチに金づちを振り下ろしていた。

ガキはナイフを持ち、中山に切りかかった。

だが、中山は極真空手の有段者。

直ぐに、ガキの腕を掴み、へし折った。


ヒィィィ〜


「わめくんじゃねぇ」

平田はガキの利き手の拳に金づちを振り下ろした。


ギャッ!


そして、腹を蹴り上げてガキは気を失った。

そのまま、警察に公衆電話から通報して、現場を去った。

もう、ガキの利き手は一生使えんだろう。

その後、ガキの自室から火薬や刃物、ボーガンが見つかり、少年院に送られた。

大人を馬鹿にした代償だ。


平田と中山は飲み会を開くたびに、磁石製造スイッチの話しをしていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

磁石人間 羽弦トリス @September-0919

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ