第4話 リベンジ牛丼

「大井さん! 大井さん! 牛丼食べに行きましょうよ!」


「うわっ! ちょ、ちょっと授業が終わるなりいきなり話しかけてこないでよ! びっくりするから!」


 放課後、今日は委員長から大井に声をかけた。


「ご、ごめんなさい」


「まあいいけどさ。でも牛丼かぁ。昨日食べたばかりだし、私今日はいいかな」


「そ、そんなぁ! 今日1日牛丼を食べるのをずっと楽しみにしていたんですよ!」


 昨日牛丼屋に行った2人だったが、なんだかんだ有って委員長は人生初の牛丼を食べ損ねていた。今日こそ牛丼を食わんと委員長は張り切っている。


「てかさ。昨日『おこづかい全部使った』って言ってなかった?」


「はい。でもちゃんとお金は用意してきました」


「へぇ、どうやって?」


「父の肩をたたいたら1000円くれました」


「委員長のパパ娘に甘すぎるだろ!」


「いやいや、大変だったんですよ。肩を100回たたいたら10円のおこづかいなので……」


「10000回も肩をたたいたの!? 肩外れるだろそんなにたたいたら!」


「というわけでお金は用意したんです。どうか牛丼屋に付き合ってください!」


 深く頭を下げる委員長。

「仕方ない。実の父親をシバいてまでお金を用意したその心意気を買うよ」


「ありがとうございます! では早速行きましょう!」


「わかったから手を引っ張らないでよ!」




 そして、二人がたどり着いたのは、赤い看板が目印の日本最大の牛丼チェーン「牛丼ライク」の駅前店。昨日行ったばかりの店である。


「さすがに私も2日続けて牛丼屋に来たことはないな」


「さあ! 入りましょう! 牛丼が私たちを呼んでいます!」


 2人は入店し、カウンター席に座った。


「私はもちろん牛丼です! もう間違えて『ライト牛丼』なんて注文しませんよ!」


 昨日、牛丼と間違えてコメの代わりに野菜と豆腐の入った『ライト牛丼』を注文してしまった委員長。今回は間違えないよう注意深くタブレット端末を操作する。


「私今日は牛丼はやめとくか。じゃあこのカレーライスにしようかな?」


「か、カレー?」


 大井の声に反応し、手を止める委員長。


「い、今カレーライスって言いました?」


「言ったけど? カレーを注文しようかなって思って」


「いやいや大井さん、ここ牛丼屋じゃ……」


「カレーもやってるよ。ほら、メニューにもあるでしょ?」


「ほ、本当です! カレーがあります!」


「じゃあ私はこのカレーライス並にするわ。委員長も牛丼早く頼んだら?」


「あ、はい……」


 委員長はしばらく思案してから、タブレットを操作。


 そして数分後。


「お待たせいたしました。こちらカレーライス並です」


「おー来た来た。何気にここでカレー食べるの初めてなんだよ。いただきまーす! うんおいしい!」


 運ばれてきたカレーをおいしそうに食べる大井。続いて委員長の注文も届く。


「お待たせいたしました。こちら牛カレーライス並です」


「……はい」


「な!?」


 委員長が注文したのはカレーライスに牛丼の肉がトッピングされた牛カレーライス。正真正銘のカレーライスであった。


「……委員長」


「……はい」


「別に何を頼もうが委員長の勝手だけどさ……なんでカレー?」


「い、いやこれはその……」


「あれだけ牛丼牛丼言っておいてさ。なんか私裏切られた気分だよ……」


「ごめんなさい! でも仕方ないじゃないですか! カレーがあったんですから!」


 委員長はやけくそ気味に牛カレーを掻き込む。


「うぅ! まぁ! すぅ! ぎぃ! るぅぅぅぅ!」


 委員長の絶叫が店内に響き渡る。


「土壇場でカレーに寝返った私めをぉぉ!! どうかお許しくださいぃぃぃ!!」


「いや、まあ別にいいんだけどさ……」


 委員長、リベンジならず。人生初牛丼は次回へ持ち越しとなった。

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放課後!ウマすぎ委員長 ドン・ブレイザー @dbg102

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