ダンダラずふぁいと

「俺の股間の魔物を静めてくれよ~」


ガタイのデカい二人の男たちが、新人メイドに品の無い絡みをしている。


「ごめんなさい、わたしそんなことできないです・・・・」


メイドは今にも泣きそうである。


「いいだろ、こんな店にくる陰キャオタクより俺らの方が女を楽しませられんぞ」


「汗臭い童貞オタクどもとは違うからな」


そこに新人メイドが所属する魔界カフェの店長であるアマネがやってくる。


「アンタら、ウチのメイドに何やってんだ!」


メイドの肩を掴んでいた男たちが、ゆっくりとアマネに視線を向ける。


「うるせぇよ、ババァはどっかいってろ」


「バッ……お前ら、早くそこをどかないと警察呼ぶわよ!」


「呼んでみろよ、その前にお前をのしちまうからよ」


男の1人がにやにやと笑みを浮かべながら、アマネの方へ近づいてくる。


しかし彼女は動じず、腕を組んだままその男を睨みつけていた。


そこに息も絶え絶えのダンダラがやってきた。


「おい、お前らよくも俺のパラダイスを!!」


ダンダラはアマネと男の間に割って入り仁王立ちする。


「なんだおっさん。 死にてぇのか」


2人の男は鋭い視線でダンダラを睨みつける。


「ふん、こっちのセリフだ若造」


ダンダラは全く臆する様子はなく、むしろ余裕を見せつけている。


当然その様は男たちの癇に障ったようで、今にも殴り掛りそうに、拳を振り上げた。


――その瞬間ダンダラは地面に頭を埋めるかのような勢いで土下座をする。


「本当に申し訳ございません‼ 頼むから帰ってくれないか!?」


さっきまでの威勢が嘘のように情けない声でそう叫ぶダンダラ。


あまりにも態度が急変したので男たち、その場にいた新人メイド、そしてアマネも口をポカンと開けてダンダラを見つめるだけだった。


すると男の1人が肩を震わせて笑い始めた。


「ギャハハハハハ‼ なんだよ随分と格好よく出てきたと思ったら、命乞いか!?」


「へ、へへへ。 まぁそんな感じっス」


ダンダラは媚びを売るような高めの声でそう言った。


「それで許されると思ってんのか? キモオタ」


男はダンダラの頭を踏みつけ、地面に額を擦りつける。


グリグリと足を左右に動かされたことで、小石がダンダラの額にめり込み、皮が裂け、血が吹き出す。


「お願いしますよぉ~、見逃して下さいよぉ~」


ダンダラはそんなようなことを繰り返し言っていた。


「マジおっさんどっかいけよ」


そういうと男はダンダラの後頭部の髪の毛を掴んで引っ張り上げ、ゴミの様に地面に投げ捨てた。


もう一人の男はダンダラの体を何度も蹴りつける。


「ちょっと、あなた大丈夫!?」


アマネはたまらずダンダラの元へ駆け寄ろうとするが、男がその前に立ちはだかる。


「おぉっと、俺達と遊ぶ約束を忘れてもらっちゃあ困るぜ」




ダンダラは蹴りつける男の足に縋りつき、血まみれの微笑みを男に向ける。


「頼むよもういいだろぉ、帰ってくれよぉぉぉ」


「キモいんだよ! おまえマジで」


その様子に男は何か狂気じみたものを感じ、ダンダラを振り払う。





 「う、うわぁ!」


突然男が叫びだたので、ダンダラは腫れた目を動かし男の居る方へ視線を向けると、ちょうど男の体が宙を舞っている所だった。


身長180近くある男が地面に叩きつけられる。


――やったのはアマネだった。


「おまえ……」


ダンダラを蹴っていた男は動揺しその動きを止めた。それによってできた隙を突くように、アマネは一瞬で男の懐に踏み込むと、みぞおちに一撃を食らわせる。


「……ッ!」


男は声にならない声を上げて、地面にうずくまる。


「ごめん、強いのアタシ」


それはアマネがか弱い女の子だと思って襲い掛かってきた男たちに言ったのか、身を挺してかませ犬にの様に散ったダンダラに言ったのかダンダラには後者に思えてならなかった。


「なんだ、大丈夫だったんか」


ダンダラは安心しきったようにゆっくりと立ち上がると、アマネの元へ歩く。


「よぉねぇちゃん、ケガはないか?」


笑顔でそう問いかけるダンダラに”こっちのセリフだよ”と言いたそうにアマネは見つめる。


「すぐに救急車を呼びます!」


アマネは携帯を取り出し、番号を打ち込もうとした。


それをダンダラは慌てて止める。


「まてまて、俺は大丈夫だからお給仕を! 早くお給仕をしてくれ!!」


目を大きく見開きながらそう訴えかけるダンダラにアマネはギョッとした表情を浮かべる。


「えぇ、でも傷が・・・」


やはり、痣だらけで血まみれの男をほっておけるわけもなく。 アマネはもう一度携帯で救急車を呼ぼうとする。


(くぅ、こうなったら)


ダンダラはポケットからハンカチを取り出し、それを額の傷口にあてるとアマネに背を向ける。


アマネからは一瞬ダンダラの体が発光したように見えた気がした。


「ほら、傷なんて負ってないんだから早くお給仕をしてくれよ!」


ダンダラの言うとおり、その体からはすっかり傷が消えてしまっており、血もなくなっていた。


「――あなた、それってどういう」


アマネはそんなことあり得ないと、言葉を失っていたが、ダンダラ的にはその理由を話す気もなかった。


それ以上に彼は焦っていたのだ。


ゆーりんのグッズが販売される時間が近づいていることもあるが、それ以上にマズい理由があった。


魔法を使ってしまったのだ。


雪偽に秋葉原にいることをピートに連絡されてはたまらない。


早くこの場所を出なければならないのだ。





「このアマ‼ ぶっ殺してやる」


アマネが投げ飛ばした男が立ち上がって再び襲い掛かってきた。


しかもその手にはメリケンサックが装着されている。


ダンダラとの会話で完全に気を抜いていたアマネは反応が遅れ、大きな隙を作ってしまっている。


「――ちっ、もういいって」


そう言うとダンダラは目にもとまらぬ速さで男の右足をほんの一瞬だけ触る。


――すると


「うぎゃぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ‼‼」


男は悲鳴を上げて地面に倒れこんだ。


「足が、足がぁぁぁぁぁぁぁぁ」


男がそう言って足を抱えようとするが、もはやそれは足だったのか分からないほど、グニャグニャに折れ曲がっていた。


「無理に動かすなよ、その足の骨はもうお前の体重に耐えらえる強度持ってないから」


ダンダラは男の肩をポンと軽く叩き、軽口をたたくようにそう告げた。






【あとがき】

9月29日辺りに次話を更新出来たらと思います。…………はい。がんばります。


メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。

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同接3人のダンジョン配信者だったけど、その視聴者は女神と魔女とインフルエンサーでした。 ~大手配信者に底辺配信者ってバカにされて落ち込んだ俺を励まそうとリスナーがオフ会を開いくれるらしい~ プリントを後ろに回して!! @sannnnyyy

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