ダンダラ幸福のひと時
「ったくよ、こんなおっさんに何を期待してんだって・・・」
ダンダラはピートからの依頼を受けて朝比奈 三久という人物に接触しようといていた。 ――今は電車に乗っている。
「俺の事よりもダンジョンで修業してるやつらの方をフーチャーした方が、読者需要を満たせそうなもんだけどな」
電車に揺られながら、彼は車内をぐるりと見まわす。
「制服のスカートって意外と長いんだなぁ」
ダンダラは電車に乗り合わせた女子高生の制服を横目にそんなことを呟いた。
「ゆーりんはもっと萌える制服だったのに」
彼はジャケットの下に着ているTシャツに思いをはせる。
魔法少女 ユーリこと神楽坂ユウリは日曜日の朝に放送されている女児向けのアニメである。
ダンダラはそのアニメの熱烈なファンであり、毎週欠かさず録画してみている。
そんなとりとめのないことを考えているうちのダンダラの目的地である駅へとたどり着いた。
「さて、じゃあいきますか――――秋葉原!」
ダンダラもとよりピートの命令など聞く気がなかったのである。
「おいおいおい! 天国かよここはよぉ!」
右を見ても左を見ても興味をそそる文言しか目に入らないその光景にダンダラは思わず歓喜の声を上げる。
肩で息をしながらどの店に入ろうかと物色していると突然女性に話かけられた。
「お兄さん、ウチのお店いらっしゃいませんか?」
メイドの服を着たその女性はお店の看板を持って、微笑んでいる。
「本物のメイドさんですか!!」
ダンダラの声は上ずっていた。
「はぁーいそうです! 私は魔界に住む悪魔のリリアでぇーす! 私たちは魔王さまを探してここでお店を開いてるんですぅ!」
「えぇ、じゃあおじさんがその魔界の魔王様になっちゃおうかな??」
ダンダラは促されるまま、店に入った。
「お待ちしておりました魔王様!!」
角と羽をはやした美少女達が一列に並んでダンダラを出迎えた。
「こんな空気の澄んだ魔界があったなんて」
知っている魔界とは180度違う光景にダンダラは涙が出そうになっていた。
「――お待たせしました! ドラゴンエッグのオムライスでぇーす」
その明らかに普通のオムライスであってもダンダラには空間の力で高級食材に見えていた。
「では、おいしくなる魔法を掛けさせていただきまぁーす」
(あぁ、楽しい。こんな魔界があったなんて思いもしなかった)
そんな時だった。
「やめてください!!」
窓の外から女性の叫び声が聞こえる。
その声に驚いてメイドたちは接客を中断し静まり帰ってしまった。
「あ、あれ。 魔法は・・・?」
ダンダラは女の叫び声など飽きるほど聞いてきたため、その声に全くといって関心がなかった。
「て、店長! ウチの子が!」
たまたま窓際にいたメイドが、窓から外の光景を見てそう言った。
すると、奥から他のメイドとは違う大人っぽい雰囲気の女性が現れ、窓の外を見る。
「――チッ、あいつら最近キャストにちょっかいかけまくってる奴らか」
店長と呼ばれていたその女性は、そうボヤく。
「ちょっと行ってくるから、アンタたちはいつでも通報できるようにしといて」
店長に言われてすぐに、メイドたちは各々が行動に移る。
「魔王様、申し訳ありません。ウチの悪魔ちゃんが魔物たちに攻撃されてしまったので、しばらくお待ちいただけますか? お忙しいようであれば今回のお代は結構ですので、お帰り頂いても・・・」
「――それはもういつまでも待ち……」
他のメイドにそう言われてもちろん待とうと思ったダンダラであったが、その刹那に大事な用事を思い出す。
(そ、そういえば今日はあと30分後に近くの書店でゆーりんの限定グッズ販売が始まるんじゃないか!?)
「でも、この機会を逃したら二度とメイドさんの接客を受けられないかもしれない」
ダンダラは拳を握り締める。
ピートによる厳重な監視の元ではそう簡単にダンジョン外には行けないのだ。
「お客さま……?」
可愛いメイドたちが不安げにこちらを見つめている。
(くぅぅぅぅぅぅ可愛すぎる! もっと接客を受けたい! なんでこんな葛藤をしなきゃならんのだ――そうだ、そもそも)
ダンダラは店の窓に視線を向ける。
「あの魔物どもが悪いんだよなぁ」
「お、お客さま!? どうなされたんですか!」
突然席を立つダンダラを困惑の表情で見つめるメイドたち。
「ちょっとね、お給仕ってやつ?」
【あとがき】
結局遅れました申し訳ありません。
でも、書くのは楽しいです。
9月13日辺りに次話を更新出来たらと思います。
メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。
それでも続きが気になると思ってくださいましたら是非フォローをお願いします!
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