ダンダラの災難のはじまり

 「お前よ、そんな速度でよく今まで生きてこれたな!?」


雷華はセナの攻撃を余裕綽々で避ける。


「くっ」


セナは身体能力を向上させる魔法を自身に限界までかける。


それでもまるでセナの動きを予知しているかのような動きをしている。


「なんで!? かなりスピードを上げているのに・・・」


ついそんな言葉がセナの口をつく。


「――おまえよ、まさかだけど」


雷華はまさに神速の速さでセナの真横に移動しその耳元で囁いた。


「お前敵の体内魔力を感じ取らないで戦ってるのか?」


「体内魔力?」


セナは今までそんな言葉を聞いたことがなかった。


「おいおい、そんな基本の事すら知らないのかよ」


雷華は呆れはてた声色でそう言って頭を抱えていた。


「萎えた。 そんな基礎も知らないで戦うなんて、話にならない」





 「そんな甲冑、我の魔法の前では紙切れ同然にすぎぬぞ、侍よ」


オーラは自信満々に両手に強大な魔力を集めている。


「・・・・・・」


戯螺は正座をしたまま動かず、そのオーラの話を聞き流していた。


「恐れて声もでぬか? ― 焼け死ね」


オーラは強大な炎の球を作ると戯螺に向かって放出した。


辺りの空間を焼き付くすような熱を放ちながら戯螺にむかって進んでいく。


甲冑を着た武者は今だ動かず、座したままだ。


――が一瞬白銀の光が火球を縦に走ったかと思うと、そのまま火球が真っ二つに割れて戯螺にはかすりもせず消え去ったのだった。


「――貴様まさか、魔法を斬ったのか!?」


流石のオーラも予想外の出来事に冷静さを欠いた声を上げてしまった。


「左様」


戯螺はいつの間にか振り上げていた刀を、淀みのない洗練された動作で鞘に収める。


「……フン、なるほどな」


オーラはニヤリと笑い、嘲笑する。


「貴様、侍然とした格好しているが持っているのは魔剣か。 それに我の魔法に物理干渉できるほどの力を持った魔剣となると、相当いいものだろう。 侍と言えどしょせん物に頼り切った強さということか」


オーラは物理干渉が不可能な、オリジナルの魔法を作り出す。


「この魔法は避ける以外に避けられぬぞ、侍よ。 逃げまどうがいい!!」


今度は真っ黒な闇の魔力で出来上がった無数の剣が、戯螺に向かって放たれた。


――がしかし、それも火球同様、斬り捨てられたのだった。


「き、貴様! なんだその魔剣は!?」


「浅学である故に、魔法やら魔剣やらは分からぬが、 拙者の武には唯、気合あるのみ」


「は? 気合だと」





 ダンジョン奥の部屋でピートはセナとオーラの様子を魔法の水晶で鑑賞していた。


「お前のやりたいことは何となくわかるけどよ、もっと素直に言ってやればいいのに」


ピートに呼び出されたダンダラは、後頭部を掻きながらピートの前の椅子に座る。


「彼女たちは自身の強さに慢心している。 だからこそまずはその伸びきった鼻を折ってあげなくてはならないわ」


「怖いな相変わらず。 まぁでも最弱種のスライムのお前がそういうのはなんか説得力ある気がするわ」


そういってほんの少しの沈黙のあと、ダンダラは椅子に座りなおす。


「んで、俺は何をさせられるんだ」


「――あなたにはこの人間に接触してもらおうと思って」


ピートはホログラムの様に空中に一人の人間の写真とそのステータスを映し出す。


「んん? 誰だこれ?」


「彼女は朝比奈 三久という人間で、スーパーミリちゃんという名前でネット活動をしているわ」


「は、はぁ?」


ダンダラは眉間にシワを寄せる。


「あなたは彼女の師匠にでもなってもらおうと思ってるの」


「なにいってんだ?」


「あなたならダンジョン外でも人間にバレないのだから、彼女と接触して仲間に引き入れて頂戴」


あまりの予想外の命令にダンダラの口は空いたまま塞がらなかった。


「俺が人間のしかも、若い女と関われってのか!? お前俺のこと知ってていってんのか?」


ダンダラのその言葉にピートは微笑みを返すだけだった。







【あとがき】

8月28日辺りに23話目を更新出来たらと思います。

遅くなりすぎて申し訳ありません。メインで書いてる方が捗ってしまって・・・。

まだ投稿はできないのですが、、、


メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。

それでも続きが気になると思ってくださいましたら是非フォローをお願いします!


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