ピックアップ(?)
昨日9/30をもちまして、自主企画「みんなでプロット・トレーニング! 『行きて帰りし物語』」は終了いたしました。
かなり制限のきついお題であったにもかかわらず、実に6名様8作品ものご参加をいただきました。いずれもお題のテンプレートを上手く活用したすばらしい作品でした。ありがとうございました!
さて、それでは参加作品からのピックアップを……
と思っていたのですが、全8作品(僕自身のを加えても9作品)ですし、これならもう全作品感想つけちゃえ!! というわけで、予定を変更いたしまして、全作品感想としゃれこもうと思います。
また便宜上、各作品に「更新順」でエントリーナンバーを振っております。
■各作品感想■
【#01】
「自由へ」
作:Rotten flower
https://kakuyomu.jp/works/16818093084770491524
企画開始直後に一番槍で参加してくださったRotten flowerさんの作品が、いきなり「プロットの構造自体を物語のネタとして使う」という応用技でした。
物語の類型や定型は、はっきりと言葉にはできなくとも、誰しもなんとなく感じ取っているものです。その共通認識を下敷きにして読者をアッと驚かせる仕掛けを施すのは、いわゆるメタフィクションの手法というやつでしょう。
しかも、プロットの構造をネタ的に使いながら、同時にちゃんとプロットの構造を守ってもいる。だからこそ読んでいてストンと腹に落ちる堅実なストーリーに仕上がっている。型を知っていればこそできる芸、という感じがして、とても好感が持てました。よかったです!
【#02】
「行きて帰りし者の物語(企画参加)」
作:根ヶ地部 皆人
https://kakuyomu.jp/works/16818093084795999875
根ヶ地部 皆人さんの作品は、なんとびっくり、短歌です!
いわゆる
物語を書いていると「どんどん無駄な文章を切り詰めいったら、いったいどこまで話を短くできるんだろうか?」と考えること、ありますよね。実際試してみた人も多いでしょう。
この観点でいくと、短歌の形式は文章量圧縮の極限に近いものです。それほどに少ない文字数でもちゃんと物語になるんだ! というのは、一種感動的な発見でした。
もう、お見事としか言いようがありません。
【#03】
「ロロンジョの実」
作:秋犬
https://kakuyomu.jp/works/16818093085370500522
「出発し、目標へと旅して、帰る」のが「行きて帰りし物語」の定型ですが、なにも当初の目標地点にちゃんとたどりつくとは限らない。
途中からだんだんおかしくなっていく雲行き。次から次へとたたみかけてくるツッコミどころ満載の超展開。そして予想だにしなかったトンチキな結末……! なんともユーモラスな作品で、ほんとうに読んでて楽しい。
王道の定型に従っているように見せかけて、あえて崩す! これまさに型破りのおもしろさ。いい意味で意表をつかれました。
それでいて、最終的に当初の目標であった「母親の病気の治療」も達成されていますから、読後感もさわやか。物語の定型をとてもうまく活用したファンタジー・コメディでした。面白かったです。
【#04】
「シーシュポスと神話」
作:筆開紙閉
https://kakuyomu.jp/works/16818093084819029387
これは挑戦的な作品ですね。ナンセンスなシチュエーションと、いまいち噛み合わない説明ばかりが連なる文章。キャラクターの言動も支離滅裂で、読んでていっそ不気味ですらある。一種の不条理劇でしょうか。
ところが、一見意味の分からないこの作品が、展開それ自体はきちんと「行きて帰りし物語」の類型に沿っている。そのため、途中もちゃんと物事が前へ進んでいるように感じますし、最後には一つのストーリーがちゃんと片付いたような印象が残る。
こうすることで前衛的な不条理劇を読者としても受け入れやすくなり、また逆に、この「きっちりさ」が作品全体の不条理感をさらに際立たせているようにも思います。
「行きて帰りし物語」には、こういう応用のしかたもあるんだなあ! と唸らされる作品でした。
【#05】
「ハッピーエンドのその先へ」
作:槙野 光
https://kakuyomu.jp/works/16818093085376683286
来ました、王道の「行きて帰りし物語」!
冥府への旅、物語世界への旅、過去への旅、己の精神世界への旅。ホメロスの時代から連綿と受け継がれてきた伝統的なストーリーを、てらいなく直球で描ききったすばらしい「行きて帰りし物語」だったと思います。
さらに、「冒頭から主人公の精神的な欠落が提示され、この旅によって一段成長した主人公が欠落を充足させる」という「
【#06-1】
「プロット作りの練習 ① 宇宙防衛隊 ~ダイダイ編~」
作:クロノヒョウ
https://kakuyomu.jp/works/16818093085558995065/episodes/16818093085559015633
クロノヒョウさんは、1作品中に2作を収録しておられましたので、感想は個別に述べてまいります。
まずは「宇宙防衛隊」。
隊員の一人が行方不明になる、という緊迫した出だしから、スカッとハズして呑気で平和な結末へと向かっていく。「緊張と緩和」は笑いを産むメカニズムの最たるもの。「行きて帰りし物語」の型によって緊張感を演出し、その型を緩めてハズすことで笑いをもたらす。とてもすてきな作品でした。
【#06-2】
「プロット作りの練習 ② 恋に気づいた日 (青春BL)」
https://kakuyomu.jp/works/16818093085558995065/episodes/16818093085562793490
「どこか」へ行って帰ってくるのが「行きて帰りし物語」ですが、その「どこか」は、なにも場所に限られるわけではありません。要は日常の世界から離れた「非日常」であればよいわけで、立場、役職、イベント、トラブルなんかは「どこか」として利用できます。
そしてもちろん、憧れの人への「片想い」なんてのも、すごく魅力的な行き先になりますよね。
この性質を利用して「行きて帰りし物語」を恋愛ストーリーに応用した作品でした。しっかりした着地点のおかげで、「めでたしめでたし!」と心から祝福できる、とっても甘い恋物語に仕上がっておりました。いいですね!
【#07】
「リリル・リ・ルルリ」
作:外清内ダク
https://kakuyomu.jp/works/16818093085511994495
僕の作品です。
主催者としては、やはりここは直球ど真ん中ストレートの「行きて帰りし物語」でいこう! と心に決めまして、そんな感じで書いてみました。
結論から言いますと、うーん、もう一歩だな……という忸怩たる感があります。特に文章がいまいちドライブしきらず、勢いとリズムと味わいが不足している。単語選択のツメも甘く、「もっと詩的に描けただろうが!」と悔しく思っています。
キャラクターやシチュエーションに関してはわりと気に入っていて、特に山羊のルキウスは大のお気に入り。いわゆる「溺愛系彼氏」をイメージし、中身はウィットに富んだイケメンなのに見た目が山羊なのでなんかカワイイ、というギャップのバランスを目指して書いてみました。ご婦人方のお気に召しましたら幸いです。
【#08】
「やみにまつろう」
作:根ヶ地部 皆人
https://kakuyomu.jp/works/16818093085887171699
根ヶ地部 皆人さんの2本目。ありがとうございます!
「行きて帰りし」は、行き先にある目標物を目指して旅することが多いですが、この作品は、そこに手を加えたアレンジバージョン。不可解な超常現象によって強制的に引きずり込まれた異世界から脱出し帰ってくる、その帰還自体が目標になっているパターンです。これもまた、「行きて帰りし」の形のひとつと言えましょう。
異世界で次々に迫ってくる謎めいた誘惑が、ホラーの不気味な空気感を見事に演出しております。最終的にどうにか帰還を果たした安心感もまた、怖さを際立たせている。「行きて帰りし」の形式が、ホラーというジャンルと上手く相互作用していて面白かったです!
以上、全作品の感想でした。
王道あり、アレンジあり、応用あり、あえて型を崩す変化球あり、とバラエティ豊かで、読んでいてとても楽しめました!
この企画が、みなさまの作品作りのお役に立ちましたなら幸いです。
好評なようであれば、いずれまた同様の自主企画を(テーマを変えて)やってみたいと思っております。
「また企画を立てるなら参加したい!」という方は、ぜひとも応援コメントなどでその旨おしらせくださいませ。また、「レギュレーションをこんな風にしてほしい」などの要望もお待ちしております。
作品を書いてくださった皆様、読んでくださった皆様、まことにありがとうござました! また次の企画でお会いいたしましょう!
自主企画の講評・ピックアップ置き場 外清内ダク @darkcrowshin
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